1.人見知りの少女
7話目「人見知りの少女」
二番目にミィに会ったのは僕だよ。始めて会ったときは、どうしようかと思ったよ。
「おお、久しぶりだなロイ」
「ああ、ヒロさん。お久しぶりです。……いつの間にか結婚してたんですか? おめでとうございます」
「喧嘩売ってんのか? あァん?」
西の山で行き倒れてたなんて、俄かには信じられなかったよ。え、僕が誰かって? この国じゃ、結構有名人なんだけど、知らない? 『双弓のロイ』ことローリー・ウィールだよ。覚えておいてね。あぁ、やっぱり名前くらいは知ってるでしょ?
僕がミィと会ったのは、僕が十二のときだったから、ミィは七つかな。
「えっと、ミイアちゃん? はじめまして」
十分くらいお互いに無言が続いたのは、ちょっとどころか緊張したなぁ。僕って、怖い顔じゃないと思ってたんだけど、自信失くしかけちゃったよ。あはは……。ヒロさんにすごい人見知りだって教えてもらってやっと納得できたよ。ただ、最初はヒロさんにもそんなに懐いてるようには見えなかったけどね。
何度か顔を合わせるようになって、ヒロさんの後ろに隠れてそーっと覗き込んできたり、一言だけボソっと言ってすぐに行っちゃったりね。なかなかお話できなかったんだ。
「……ろーりー、さん?」
「ロイでいいよ」
「えっと、……ろい、さん」
ミィとの始めての会話らしい会話さ。始めて会ってから二ヶ月くらいかな。ホント、嫌われてるのかと思ってたからあのときは安心したよ。まあ、そのあと何か言いたげに口をパクパクさせて、結局部屋に引っ込んじゃったんだけど。
その頃のミィはどこに行くにもヒロさんと一緒で、誰かが来るとヒロさんの後ろに隠れるなんてことを繰り返してた。いつまでもこれじゃあダメだよね、ってことで、ヒロさんとの作戦会議の末、ヒロさんがトイレに立ったときに、僕が説得するという方法。
「ほらミィちゃん。ヒロさんもトイレ行きたいんだから、我が侭言っちゃだめだよ?」
泣きそうな顔で睨まれたときは、ちょっと怖かったなぁ。この頃は、『ショート・ダブル』って呼ばれ始めたくらいで、僕もその実力の一端を見たことがあったからね。殴られでもしたら、痛いどころじゃ済まないかなぁ、なんて。結果はというと、これは成功で、ヒロさんが戻ってくるまで結構お話したんだ。まあ、今ほど一杯とはいかないけど、この子、こんなにお話できるんだなぁって思った。無口な子だと思ってたからね。え、もー、そんなに拗ねなくていいじゃないか。
で、今度はヒロさんが戻ってきたら、僕の後ろに隠れてね。笑っちゃったよ。