5.魔法封じ
31話目「魔法封じ」
ミアとジークの間に子供ができたって分かったときには、街中が大騒ぎだったんだから。なんたって国一番と謳われるペアなんだから、その子供の潜在能力もトップレベルだろうってね。
でも、ミアのお腹が大きくなるにつれて、違う意味で騒ぎが大きくなったの。その潜在能力がトップレベルどころの騒ぎじゃないって。世界をみても、数十年に一人出るかというくらいの魔法力。このまま何もしなければ、家一軒、村一つというレベルでは済まない大事故が起こると、みんなが恐れた。そこで、城の術者の『魔法封じ』が施術されたのだけれど、十人がかりでも、その強すぎる魔法力に断念。ミアとジークとモールと私の四人なら、もしかしたら対抗するができるかもしれないと思ったけれど、ミア自身が躊躇ってしまってね、結局この案も棄却になったわ。
そこで活躍したのがミンク。身分を振りかざして禁術書架に押し入ると、『魔法力の暴走から村を守る』という題名の『書』を持ち出して、自室に数ヶ月間引きこもったわ。
「ツリー女士、二人の下へ連れて行ってくれ」
久しぶりに姿を見せたかと思ったら、なんとまあ、どうしてそこまでやつれたのかと。一気に十年分くらい老けたわね。で、そのときにはすでに出産も近くて、ミアの実家に帰っていたのよ。折角の、最後になるかもしれない水入らずのときなのだから邪魔をするなと言ったのだけれど、この次の一言で事情が変わったの。
「魔法封じの『結界』が完成したんだ。急げばまだ間に合うだろう!」
このことがキッカケで、私たちはミアの実家である「ルーツ村」へ向けて旅立った。最初はどこまで行けばいいのだろうかと思ったわ。まさに隠れ里というにふさわしい場所。あんな山奥のさらに奥に村があるなんて誰も思わないわよ。
『ハイドカバー――子隠!――』
魔法の短さにも驚いたけど、なにより驚いたのはその効果ね。ミアのお腹から感じていた猛烈な魔法力の気配が、ほんの少しさえも感じられなくなったの。ミンクの魔法使いとしての腕は、今でも二流や三流もいいところなんだけど、結界術士としての腕はこのころから超一流だった。これほどまでに複雑精緻な結界をこれほどの短時間でかけられる結界術士は、世界中探してもほんの一握りよ。
でも、あれだけの魔法力を押さえ込むために手加減ができずに、だいたい十七年くらいは効果が切れないだろうという結果になったの。ミイアのための『魔法の書』の製作は、ミアが出産して数日後から始まった。ミアとリアが二人で書き上げた『書』は数ヶ月で四十五冊。それと私が少しだけ協力した二冊をあわせた四十七の魔法が、今のミイアが使える魔法の全てよ。
次話より第6章。




