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Endless Double!  作者: 鵠っち
第一章 巨剣の大男 <the Blade Master>
2/31

1.拾われた少女

 ※トリップものではありません。


 2話目「拾われた少女」

 んあ? 嬢ちゃんと出会ったのはこん中じゃ、俺が一番だ。

 あの日は西の山ん中の村での依頼を受けた帰りだった。珍しく街道ではなく山道を歩いてたんだ。理由? そんな大したこたぁねえよ。街道の途中の村でちょいといけ好かねえ連中が依頼を受けてるって聞いたからだ。そしたらだ。山ん中に女の子がぶっ倒れてるじゃねえか。とりあえず、こんなところに転がしたまんまってのは、あとで何かあったと聞いたら目覚めが悪い。んで、ソイツをおぶって城下の宿に戻ってきたのよ。

「おいヒロシ。その女の子はどっから攫ってきたんだい」

 人聞きの悪い。攫ってきたんじゃねえよ。だいたい、なんで俺が人攫いなんかしなけりゃならないんだよ。宿代だって、向こう一月分前払いしてるじゃねえか。

「なあ女将さん。コレの面倒頼めねえか。山ん中で行き倒れてたんだ」

 女将さん、その疑うような目はなんだよ。確かに俺は独りモンだが、こんなガキなんかにゃ用はねえんだよ。未だに疑ってたのかよ、おい。

「西って、あんたの依頼は確か山間の村だったろう。村の子じゃないのかい?」

 でも見てみろよ。この子は短剣二本を腰に提げてるだけだ。怪我はねえけど異常に細い。明らかに何か事情があるだろう。そう言って渋る女将さんに子供を押し付けて、俺は報告書を書いた。もちろん、依頼に関する報告書で、城へ提出するもんだ。これをやらねえと、俺みたいな傭兵は金がいただけねえ。面倒なこった。ついでに山ん中で行き倒れてた子供のことも書いておいたさ、あぁ。

 は、城に用があるっつーから騎士かと思ったのかよ。冗談じゃねえ。あんなのと一緒にすんな。あんな訓練だなんて言いながら城に篭ってなにが面白れえんだ。そりゃ、団長となりゃあそりゃ強いが、下っ端から中堅なんて今やコイツが鍛えてるくれぇだからな。それに他の国じゃあどうなってんのか知らねえが、この国では害虫だの害獣だのの駆除から訳分かんねえ陳情の先行調査に盗賊退治だの海賊退治だの、色んな依頼が城に集まるんだ。報酬を用意できれば、個人的に依頼するやつもいるしよ。それをこなして金を貰ってんのが、この国で言う傭兵だ。まあ、傭兵ってのは日雇いだから、こっちから動かねえと金は貰えねえ。魔獣退治なんてのもあるが、自力との兼ね合いだな。死にたかぁねえし。

 まあ、そんなことで俺は金を貰って宿に戻ってきたわけだ。

「ヒロシ。あんたが連れてきたんだから、あんたが責任を持ってこの子の面倒をみな。ああそれと、宿代はこの子の分、値上げするよ」

 なんだよ。子供の面倒くらい、女将さんが見てやってくれよ。そう言いたいのはなんとか飲み込んださ。言ったら最後、自分にそのまま返ってきやがるのは目に見えてやがる。しょうがない。コイツ、折角短剣持ってんだし、剣でも仕込んで自分で稼がせるか。そうやって仕込んだガキが、今でいう『ダブル・トリック』の片割れ、ミイア・アールさ。俺より強ぇぞ。



 ――――ヒロシ・タケダの報告書(要約)


 陳情の内容に不足はなし。ただし、こちらと見解の相違がある可能性あり。村特有の考え方だと思われるので、現地での執拗な話し合いを進言する。

 帰路にて行き倒れの子供を保護。おそらく五、六歳。女。所持品は二振りの短剣のみ。現在、宿にて女主人に預ける。

 ※トリップものではありません。

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