バス停
誰もいないバス停についたのは、バスが来る10分前のことだった。
5分ほど前に、乗る予定だったバスは行ってしまっている。
携帯で時間を確認すると、バス停の標識についている時刻表を見る。
「あちゃー、出て行っちゃったあとかぁ」
後ろから、女子の聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俺が、少しだけ振り返ると、同級生の女子が息を切らせて走ってきた後の様子が見えた。
「走ってきたのか」
「え?ああ、まあね」
俺のところへとゆっくりと歩いてくると、呼吸を整えた。
「時間見たら、もう出て行ったってのがわかるだろ」
「バスだから、ちょっとは遅れるかなって」
チロッと舌を出して、笑った。
「そうかい」
そういって、俺は曲でも聞こうかとイヤホンを手に取る。
「ねえ」
手の動きを止める。
「どうした」
「クラス、楽しい?」
「まあ、楽しいけどさ…どうして」
急に聞かれたから驚いて聞き返す。
「ううん、別に何でもない」
そういう彼女は、なにかさみしそうな顔をしていた。
でも、俺は何も聞かなかった。