4.見つからないものと、見つけたもの
「葵ちゃ~ん、さすがにあれは酷すぎない?」
・・・何が?
「西山くん、泣いてたよ~。一緒に来た友人に慰められてる姿は、哀れだったよ、いや無様?」
「ちょっと、また見てたの?」
「あまりのショックで、受験に失敗しかねないかもね~。」
「ち、ちょっと美晴?」
「あ、そうだ。今回は聡太くんもいたのだよ?」
観察されていた事より、遥かに衝撃を受ける言葉を聞いた。
聡太? 聡太がどうして?
「何で?」
「さあ?」
含み笑いで、見つめられた。
しかし、私が考え込んで黙っていると、ふいにつまらなそうな顔になった。
「あ~、何だ本当に分からないのか・・・」
ドキッっとした。
期待した答えは、正解なのかな・・・
「本格的に受験始まるまでに片付けなよ? じゃないと、失敗するのは葵かもよ?」
「・・・縁起でもない事、言わないでよ。」
「ほぅ、そう言うからには、進路は決めたのかい?」
「・・・決めてない。」
何がしたいんだろう?
今まで。何となくきてしまった。
本気になってした事なんかあったかな?
いつも遊びに行く吹奏楽部だって、何度誘われても乗り気になれなかったし、
現在に満足してたとか、享楽的に生きてきた気もないけど、
未来も見てなかった。
向き合う時が来たって事よね・・・。
この間見た、真っ白な夢・・・
私の漠然とした不安?
先を見ていない、私の未来?
どっちにしても、碌なものじゃないな・・・
そんな事を考えながら歩いてると、段差に気がつかなかった。
当然の如く、踏み外す。
驚き過ぎて、悲鳴は上がらなかった。
「・・・っくっ、あっはははは、何処の間抜けだよ・・・私は。」
しっかりと尻餅をついた後、あまりの情けなさに、笑えてきた。
「葵姉、大丈夫?」
「っ!?」
座り込んだままで、声の主を求め振り返る。
すぐ後ろに、右手を出した不自然な体勢で固まっている、聡太がいた。
「・・・ごめん、ちょっと間に合わなかった。」
うわっ、見られた・・・恥ずかしい。
・・・って、ん?
何か違和感を覚えた。
「ねぇ、何がごめんなの?」
助けてと頼んだ覚えもないし、助けられる義理も無い。
ただ私の不注意で転んだだけだ。
「んー、運が良ければ助けられたかなって。」
「運?」
それは、どいう事なの?
「そんな感じで良いんじゃないの? 目の前で知ってる人がこけそうだったら、
思わず動いちゃうでしょ?」
うーん、そういうものかな・・・
それは、ごめんの答えになっていないような気がするけど?
「今回は、運が悪くて助けられませんでした。・・・って事の、ごめんかな?」
運が悪くて・・・誰の運なのかな?
「ところで、足大丈夫? 立てる?」
聡太の出した手につかまり、立とうとしたが、結構痛い。
「痛い? 捻挫かな?」
痛そうな顔をしたのだろう、気遣わしげな声がした。
くすぐったい気分になる。
小さい時から知っている、弟の友達。
ずっと弟と仲が良いから、もう一人の弟くらいに思ってたはずなのに、
・・・何か違う。
「とりあえず、保健室行こうか?」
そう言って、聡太は前にしゃがんだ。
「おんぶ? それ恥ずかしくない?」
「でも、歩けないんでしょ?」
「・・・うん。」
「お姫様だっこするには、僕の腕力足りないから、おんぶで我慢して。」
「ぶっ、正直だね。」
「そりゃ、15歳の小僧だよ? 鍛えてるわけでもないし、でも無理して
落っことすほどガキでもないし、分相応ってやつ?」
なんか、冷静な判断してるのね、
いつまでもバカな、弟との差を感じてまじまじと見つめてしまった。
「で、痛いんでしょ? 早く保健室行こうよ。」
「・・・あ、うん。」
おんぶされて、
・・・いや、ここで会って、話をして、
思ってた以上に大きくなっていた聡太に、かなりドキドキした。




