表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求める者。  作者: 薄桜
2/5

2.知りたい事、知りたくない事

 まったく聡太は偉いな~、航なんかを毎日迎えに来てて。文句言いながらも

見捨てないでいてくれるし、本当に良い子なんだよね~


今朝の事を思い出しながら、物思いに耽っていたらしい。

「葵、どしたのさっきからニヤニヤして、気持ち悪いよ?」

と、美晴に笑われてしまった。

・・・にやけてた?

あー恥ずかしい!

「なんかいい事でもあった? 聡太くんにでも告白されたか?」

「はぁっ???」、

・・・何故ここで、聡太の名前が出てくる!?

「まぁいいや、ところで進路・・・」

「良くないっ!!」

思わず大声で叫んでしまった。


注目を集め、赤面しながらも、疑問を晴らそうとした。

「何で聡太の名前が出てくるの?」

「あれ?気付いてない?」

ますます、頭の中が疑問符で埋まる。

「・・・えーと、聡太に告られる事は、良い事なの?」

「あーらあら、天然さん? 葵、聡太くんの話してる時楽しそうじゃん」

私は、楽しそうにしてるのか?

「その様子じゃ当然知らないだろうけど、彼の株上がってるよ~」

「へ?」

「入試の成績かなり良かったらしいし、見た目も可愛らしいしさ、冷めてるっつーか

ちょっと大人びた雰囲気あるじゃん?それで同級から年上まで、満遍なく狙ってる子

いるらしいよ~」

「・・・誰が? 聡太が???」

何それ?・・・っていうか何で動揺してるの、私。

「幼馴染って安心してると、誰かに持ってかれちゃうよ~」

黙り込んだ私の様子に、満足げに笑うと、

「で、本題なんだけどさ、進路どうすんの?」

そういっていた気がするけど、自分の思考の中に入ってしまった私には、さっぱり届かず、

授業に来た先生の声がかかるまで、ぐるぐると考えていた。



 放課後、今朝の事はとりあえず置いておき、音楽室で頑張っている吹奏楽部の友達の所に

邪魔しに行く事にした。

先生が来るまでの時間に、楽器を吹かせてもらうのが楽しくて、よく邪魔しに行く。

音が出たり出なかったり、友達とふざけあって、結構至福の時間である。


「あ、為井くんだ。」

誰かの声がした。

今年入部の1年生を中心に、空気がざわついた。

窓から校庭を見ると、確かに聡太の背中が見えた。

ついでに航と、彼女の朋ちゃんもいた。

もう帰るらしく、校門の方へ向かって歩いている。


この急に沸き立った空気に、正直驚いた。

・・・美晴が言ってた事は本当だったんだ。


「安田~練習はじめるから、部外者は出てけ~」

ポンと丸めた楽譜で、頭を小突かれた。

ゆっくり首を巡らせ、憮然とした表情で顧問の先生を睨んでやった。

「お前、毎日のように、ここ遊びに来るくらいなら、入部すれば?」

もう何度も聞いた台詞を、また先生は口にする。

「それとこれとは別なんです。」

荷物を乱暴に抱え、

じゃ、また明日~と、友人達に手を振り音楽室を後にした。


吹奏楽部は毎年、野球部の県大会予選の応援に借り出される。

今年度も、既に練習を始めていた。

階段を下りながら、

「暑いのはご免なんですよ~」

と、ぼそっと一人呟いた。


他に用事もないし…帰ろう。



下駄箱の自分の靴の下。

ちょうど隠れるくらいの封筒が1枚置いてあった。

「何だ?」

興味本位と、面倒事を厭う気持ち半分で開けてみると、折りたたんだ便箋が1枚。

・・・えーと、読めないって。

ミミズがのたくったようなとは、こういう字の事を言うのだろう。

小学生でも、もっときれいな字が書けるんじゃないの? ってほど酷い文字の羅列。

とりあえず、何が書いてあるのか分からない事には、手の打ちようもない。

テストの時、先生はどうしてるんだろう?

他人事ながら、先生達に同情しつつ、

とりあえず持って帰って、解読してみる事にした。



「ねーちゃん、何してんの?」

夜、リビングのソファで謎の怪文書とにらめっこをしていると、

風呂上りの航が、麦茶片手に声をかけてきた。

「これ。」

ピラッとその紙切れを渡した。

お手上げである。断片的に読める平仮名はあるが、ひん曲がった漢字は『字』と認めたくない。

滅びた文明の、文字の解読もこんな苦労だったんだろうな。疲労のせいか考えている事が

ひどいと、自分でも思うが、

止めない。


紙切れを眺めていた航が

「どうすんの、これ? 西山隆志って3年だったよな?」

「はぁ???」

・・・今日はよく驚く日だ。

「あんた読めるのこれ?」

「確かに汚い字だけど、・・・ねーちゃんは読めないのか?」

「まったく、ぜんぜん! 古代文字の解読ってくらい?」


航は、盛大にため息を一つつくと、読み上げはじめた。


+---------------------------------------------+

 安田 葵様


 明日の放課後、2号棟の裏で待ってます。

 来るまで待ってます。


 西山 隆志

+---------------------------------------------+


「・・・だってさ。」

「へ~あんた、特技よそれ、何でそんな字読めるのよ?」

思わず、感心してしまった私に、あきれた表情を向ける航。

「それはいいから、どうするか考えてやれよ~」

「えーっと、西山って誰だっけ?」


残っていた麦茶を一気に飲み干すと、

付き合ってられないとばかりに、自室に戻りかけた航を呼び止める。

「航! ・・・今日美晴が言ってたんだけど。・・・聡太って、モテんの?」

「はぁ? 突然何だよ?」

「いーから、質問に答えろ。」

私の気迫に負け、憮然としながらも口を開いた。

「あーんと、小5くらいから、キャーキャー騒がれるようになったかな?

 そのくらいから成績もトップになりだして、俺みたく、バカな事しなくなって

 ・・・少し雰囲気変わったんだよな、まぁ聡太は聡太だけどさ

 もちろん、今も大人気だぞ、本当腹が立つほど。」

・・・へー、そうなんだ。

弟のような彼の、そんな変化に驚いた。



その夜、夢を見た。


学校に行く仕度を済ませた頃、玄関のチャイムが鳴る。

弾む心をおさえ、急いで靴を履き、玄関から出ると、

そこに思う姿は無く・・・ただ白い世界が広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ