涼季五日
一年目の涼季五日。畑もずいぶん広くなったものだ。暑季に大量収穫したトマトのお陰で所持金が潤っている。昨夕のうちに市場へ預けておいた品物も朝市で無事に売り切れたらしく、約一万ペールの入金を確認できた。
さぁ、今日ものんびり働くぞ。さっそく水をやろうとジョウロを持ったら、ほとんど残っていなかった。畑と鶏舎の間に掘ってある井戸へ小走りする。木製のジョウロがずっしりと重くなる。僕は井戸に近い区画から水やりを始めた。時折、トンボがふらふら飛んでくる。ジョウロと虫捕り網を器用に持ち替えながら、畑の世話とトンボの捕獲に熱中した。
昼が近づくにつれて、我が家の至近距離にある広場は、にぎやかな音にあふれる。種子や苗、畑の道具を売っている店に、洋食レストラン、釣り具屋と、この地域は個人商店が盛んだ。広場の掲示板には、目安箱へ投函された住民からの要望が並んでいる。僕は畑こそ持っているが、専業農家ではない。日々、要望へ応えていく、何でも屋のような活動を担っている。今朝の水やりは、一週間以内に納品予定の涼季ナスのものだった。手間賃をもらうほうが、自分で野菜を売るより儲かる仕組みになっているのだから、やめられない。多めに作っているのは、趣味の料理に使うためだ。
昼寝をして体調を整えた後、カレンダーを開く。次の料理コンテストは、三日後の涼季八日に開催される。お題は当日に判明するため、できる限りレパートリーを増やしておきたい。未所持の調理器具が数点あったことを思い出し、レストラン併設の売店へ出かけることにした。高くて後回しにしていた蒸し器やミキサーが手に入り、ほくほくだ。店主がオマケに食材とレシピをくれた。明日試してみよう。
帰りは、来た道とは反対方向へ進んでいく。広場へ出る道は複数あるのだが、今回は風車の見える小道を歩く。橙の空に、なびくススキ。途中、洗濯物を取り込んでいるモモさんを見かけた。もうじき月が昇る。




