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王太子妃(仮)でしたが、聞いたこともない予言のせいで追放されました。ですから、今さら呼び戻されても困ります。  作者: 實藤圭
序章:断罪の儀

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第2話 王太子妃(仮)

 朝の陽射しが、王宮の壁を祝福の色に染め上げ、窓に差し込む。

 クラリスはベッドから身体を起こすと、大きく「うーん」と背伸びをした。

 窓からの光はクラリスの全身を煌々と照らし、笑顔を一層まぶしいものにする。


 少しして、うつむきがちにおずおずと、クラリス付きの侍女であるリュシアが部屋に入ってきた。

 そんなリュシアの様子を見て、クラリスは軽くたしなめる。


「おはようリュシア! どうしたの? こんな素敵な朝にそんな暗い顔をして」


 リュシアはクラリスの明るい声に、少し背筋がしゃんとなった。


「おはようございます、クラリス様。大変申し訳ございません……実は朝食の支度なのですが、私がミルクをこぼしてしまったせいで遅れてしまっていて……」


「……リュシア? 昨晩は、朝食用のモーラ豆を、台所の床一面に全部まき散らしたって、聞いたけど……?」


 クラリスは悪戯っぽく言った。


「も、申し訳ありません!」

「ふふ、冗談よ。リュシア。私からも皆に『リュシアも反省しているから、許してあげてね』と言っておいてあげるから」

「あ、ありがとうございますぅ……」


 そんなリュシアの様子に、クラリスはくすりと笑うと、窓の方を見ながら言った。


「今までありがとうね、リュシア」

「な……何をおっしゃいます、クラリス様」

「だって、本当の事よ。あなたがいなければ、私王太子妃になんか、きっとなれなかったわ」

「ひぇぇ……わ、私なんかには、もったいないお言葉です……」


 クラリスの言葉にリュシアは身体をきゅっとしてうつむく。


「リュシア」

「は、はい!」


 クラリスの呼び声に、リュシアは返事をする。

 顔をあげると、クラリスは、ちょうどこちらに振り返るところだった。

 ブロンドの少しカールした髪が光に揺れ、やがてそれはクラリスを包む。その姿はまるで、神がくれたベールを身にまとっているかのようだった。



「もちろん、これからも、よろしくね」



 クラリスの姿にただ茫然と見惚れていたリュシアは、突然の呼びかけに、裏返ったような変な声で「はい」と答え、またクラリスに笑われてしまった。

 リュシアは「申し訳ございません」と、しばらく繰り返していたが、喉の調子を整えると、深々とお辞儀をした。





「クラリス様。この度、婚礼の儀が執り行われること、正式な王太子妃として認められることが決まりましたこと、本当に、おめでとうございます!」





 クラリスは、しばらくの間、何も言わずに小さく折りたたまれた背中を見つめていたが、やがてリュシアの両手を取った。

 そして静かに、



「ありがとう」



 と、言った。


 クラリスが、リュシアの体を起こすと、リュシアは泣いていた。

 「本当に良かったです」と、ずっと繰り返しながら。


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