第8話 僕も邪教に入信することに(涙)
深夜、イリスの部屋。
「ご主人様……見てしまいましたね」
イリスの目がきらーんと赤く光った瞬間、僕は戦慄した。次の瞬間、僕がまだ何もしていないのに、ドアがバターン!と勢いよく開いた!
(ひぃぃー助けて~!)
内心そう叫んだだけで、足はガクブル一歩も動けない。絶体絶命の危機だ!イリスは、なぜか嬉しそうな目をして僕に近づくと、優しく手を取った。
「さあ、ご主人様。もう逃げられませんよ」
そして部屋に招き入れられた。すっかり見違えた部屋には、イリスの他に霊体のような女性の姿があった。イリスに似てはいるが、よりサイズアップした胸とお尻、ウエストも引き締まり、まさにダイナマイトボディ! 彼女は透けていて顔や表情はハッキリわからないが、一目見ただけでハートをわしづかみにされる美貌である雰囲気だけは感じ取れた。
イリスが、その霊体を僕に紹介する。
「ご主人様……約束を破りましたね。こちらが私の信奉する女神、ディスフィア様です」
僕は頭を下げたまま、必死に謝罪した。
「すいませんでした。つい出来心で……ええぇーこちらが邪神様なの??」
霊体が甲高い声で高笑いする。
「ギャハハハー! 引っ掛かったのう~良一郎! 愛い奴よ!」
「なんだって!? くっ……やはり罠だったのかっ!」
イリスが申し訳なさそうに眉を下げる。
「すいませんご主人様。いつもは静かに祈りと踊りを捧げるのですが、今日はディスフィア様がどうしても一緒に踊りたいと申されて」
「ほっほっほっ、そのとおりじゃ。良一郎よ、冒険者ギルドでの一件は愉快であった。褒めて遣わす!」
「いやーそれほどでも……というかずっと見てたんですか?」
「そうなんです。私は生まれたときから女神様のご加護を一身に受けてまして、大体チャネリングしてますので」
(凄いなぁーそれってめちゃ高位の神官じゃないと出来ない奇跡なんじゃ??)
「イリスはわしの子孫みたいなものじゃからな。わしの身体を似せて創造したのがダークエルフであるからな」
「そうだったんですね。それじゃあ女神様を信仰しても仕方ないですよねー」
* * *
イリスと女神は僕を正座させ、本題に踏み込んでくる。
「まずイリスを助けてくれたことは礼を言おう。それでじゃ、わしはお主(良一郎)に加護を授けようと思う」
「ご主人様! よかったですー! ダークエルフでも滅多に得られない栄誉ですよ!」
イリスは心底嬉しそうだ。だが、僕は露骨に動揺する。
「えーと、、勘弁してください」
(僕の目には見えないが)女神様が顔を引きつらせて真っ赤になっている(感じに見える)。
「良一郎よ、貴様に拒否権などないぞ。逃げたら呪い殺すでな」
「ひぃー! そんな恐ろしい事するから、世間様から邪教呼ばわりされるんですよー!」
「そうなの? じゃがなぁーわしって闇の女神だし。のうイリス?」
イリスはそれを聞いて、僕にコクコクと力強く頷いている。
「加護って……それを得るためには僕も信者にならないといけないんでしょ? うちは由緒正しい仏教徒なので、他の宗教には入信できませんようー」
「仏教徒か……語るに落ちたのうー。日本人じゃろ? 仏教徒を名乗りながら、正月には神社に参る。ゆるーい民族なのはお見通しじゃ!」
僕は驚愕した。この女神……日本人の情報をかなり正確に把握している! 顔から血の気が引いていく。
「そういうわけで、神社に参るくらいのノリでわしを信仰すればええぞ」
邪悪な女神がにやりと微笑むように見える。
「ご主人様、ディスフィア様はヤンデレなのです。かなり重度の。素直にデレられるポジションにいないとガチでヤバいです」
「くっ……致し方なし。信仰します。というか、ここまで存在感のある神様なら信じないわけにはいかないよー」
涙目で自分を納得させる僕だった。
* * *
僕の入信宣言を聞いて、邪神様は小躍りして喜んだ。
「新しい信者、ゲットだぜ!」
(僕はポケモンなのかよっ!)
「ディスフィア様~おめでとうございますー!」
「ハハハハハハ! わざわざ50年近く前の日本人転生者が伝え残した楽曲を再生して流した甲斐があったわい」
「ええぇーやっぱりあの選曲は罠だったんですか?」
「そうじゃよ」 女神は悪びれず言う。
「まあまあご主人様。ディスフィア様は自由と享楽を好む御方なのです。楽しいことが大好き。今は私たち二人の活躍がお楽しみみたいです」
「そのとおりよ。じゃからお前たちにはわしが色々とバックアップしてやるでな。楽しみにしておくがよいぞ」
邪神様のバックアップだって?絶対ろくなもんじゃない気しかしないが・・・
「あのーどんな?」
「今はひ・み・つ」
(なんなんだよーちきしょう!)
ディスフィア様が僕の心の声に素早く反応する。
「何か言った?」
「いえ、楽しみだなぁーって」
「私も楽しみしてます~」
「そうかそうか、任せておけ!」
手を腰に当てて高笑いするディスフィア様。そして、その後は再びイリスと桃色少女組の楽曲に合わせてノリノリで歌い踊るのだった。僕は体育座りしたまま睡魔と戦いながら拝見する。謎の神事?は朝まで続き、太陽の光と共に闇の女神は去って行った。
「おおぉー光の神よ。感謝します」
「ご主人様……それNGワードです。たぶん罰が当たります」
「ええぇー??」
僕はこの日、タンスの角に足の小指を盛大にぶつけて悶絶するのだった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。
もし「面白い!」と思っていただけたら、評価(☆)をぽちっと押していただけると励みになります。
星は何個でも構いません!(むしろ盛ってもらえると作者が元気になります)
そして、何らかのアクション&ひとこと感想(一行でOKです)をいただければ幸いです。
特に感想はめっちゃ元気になりますw
よろしければ、ブックマーク登録もお願いします。
更新時に通知が届くので、続きもすぐ追えます!
今後の展開にもどうぞご期待ください。




