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第5話 ご都合アイテム、キターッ!

 僕は乾パンと干し肉の簡単な朝食を済ませて、イリスを廃屋にお留守番させてから、王都の裏通りへ出た。この異世界に来てから約一年間。なんとなくだが、「物語の都合」で色々と上手くいってきた。だから、この(作者の)ご都合主義に賭けよう。


 僕がイリスを街中で歩かせるために、今必要なのは「認識阻害」のマジックアイテムだ。ダークエルフであることが一時的にわからなくしてしまえば、大きな騒ぎも起きずに街で生活できるはず。


 僕は王都のマジックアイテムを取り扱う道具屋界隈や、怪しい露天商を見て回った。目を皿のようにして、そんなアイテムはないかと必死で探し回る。だが、なかなか「これだ!」という物がない。


 そもそも、そんなアイテムの使い道があまりにも限定的すぎるのだ。


 冒険者向けに完全に気配や姿を消す類のアイテムは確かにある。でも、彼女の姿は分かるが、「ダークエルフという見た目だけを隠す」という、中途半端な認識阻害アイテムなんて、伊達や酔狂で作る輩はいなかった。血の涙を流しながら、僕は思った。


(ちくしょう! 作者めぇー! ここは定石通り、都合のいいアイテムをサラッと出しやがれ!)


* * *


 そんな落ち込む僕に、おかしな露天商が声をかけてきた。


「あんた、変わったアイテムを探してるみたいだな。よかったらうちの商品を見て行けよ」


 コミュ障気味の僕は「ま、間に合ってます」と立ち去ろうとしたが、ふと、露天に置かれたあるアイテムに目が留まる。それは、よく奴隷商で見かける黒い首輪だった。首輪の前面には、俗にいうところの奴隷紋――絶対服従の紋章が、金色に刻まれている。


 僕は思わず食いついた。


「おっちゃん! これってもしかして、対象の相手を絶対服従させる呪いのアイテム……だよね?」


 商人は、口元に手を当てて「くっくっくっ」と笑う。


「なかなかお目が高い。いかにもその通り……と言いたいところだが……残念ながら、この首輪は『伊達だて』だ」


「ががーん! な、何だって!?」


 僕はショックを受けた。何でそんな意味のないアイテムが売られているんだ?


「いやー、そういうプレイをしたいカップルがな、雰囲気を楽しむために作られたモノらしい。所有者が『強制きょうせい』というワードを言うと、この『なんちゃって奴隷紋』が付与された魔法でピカァーと光るという代物でな」


「しょ、しょうも無さすぎる……! どんな奴が作ったんだよ、これ?」


「んー、なんでも異世界から来た転生者らしいぜ。まあ、あいつらの感覚は俺たちと違うからなー」


(ピコーン!)


 僕は内心思った。この手の「なんちゃって玩具」か! 確かに、地球じゃ当たり前だが……これだ!僕の脳内で、天才的な(ご都合主義的な)アイデアが閃いた。


「おっちゃん! この首輪、いくらだ!? 是非買わせてくれ!」


 商人は驚きつつも、「おおぅ……嬉しいけど、ガチで効果は無いぜ? いいのか?」と念を押してきたが、僕は即金で買い取った。


* * *


 僕は首輪を購入して、イリスの待つスラムの廃屋に急いで帰った。そして、イリスに首輪を見せながら、興奮気味に説明する。


「イリス! この『なんちゃって首輪』で芝居をしよう!」


「ええぇー? どうなさるのですか?」


 彼女は不安そうに赤い瞳を瞬かせた。


「要は、みんなイリスが『未知の危険分子』だから恐れるんだ。だが、この首輪で『魔法で強制的に僕の支配下にある』という姿を見せたら、とりあえずみんな頭ごなしに逃げたり避けたりはしないんじゃないだろうか?」


 イリスは少し考えてから、瞳を輝かせた。


「ご主人様……それってナイスアイディアーかもですぅー!?」


「だろ!? なんせこの世界の奴らの魔法に対する絶対的な信頼度は半端ないからな!」


(ちなみにイリスには本物の奴隷紋は効かない。彼女の異常な魔法抵抗は大概の身体異常魔法を無効にするらしいのだ)


 二人で話し合い、翌日に冒険者ギルドで芝居を試すことに決まった。


「よーし、特訓だ! イリス!」


「ご主人様、この首輪で『強制』が発動したときは、どんなお芝居をすればよろしいでしょうか?」


 イリスは、真面目な顔で、しかしどこか嬉しそうに答えた。


「それは・・まあ・・僕が地球的な素晴らしい演出を指導するよ!」


「はいっ! ご主人様、誰が見ても納得いく『絶対支配』を見せつけてやりましょう!」


 こうして僕とイリスは、明日、冒険者ギルドに乗り込むために「イリスが僕に魔法で服従しているフリ」の芝居を特訓するのだった。


 うーん……僕は転生の女神に選ばれし魔剣の勇者だったはずだが、いまや「奴隷ごっこ」の演出家である。まあ、いいか!(作者が楽しければ、それが正義だ!)

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


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