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第41話 急襲 謎の武装集団

 僕らの旅は順調に進んだ。街道は整備され、道中の村々も平和そのもの。護衛の仕事としては、拍子抜けするほど静かだった。だが、順調すぎる旅ほど、裏がある。


 もうすぐイーストフォークに到着するという付近まで来た日の早朝、隊商を率いる貿易商が護衛のリーダーたちを緊急招集した。普段は愛想の良い男が、今朝に限っては深い隈を作り、声も硬い。


「皆さん、お疲れ様です。目的地まであと一息ですが……ここから到着までの三日間は、特に警戒を密にお願いいたします」


 “三日間”という具体的な数字が、嫌な現実味を帯びていた。アシュレイが護衛チームを代表して問いただす。


「それはどういう意味でしょうか? 我々は一時も気を緩めてはいませんが」


 商人は一瞬、周囲を見回した。まるで、この話を“聞かれてはいけない誰か”がいるかのように。


「アシュレイ殿はこの道は初めてでしたな。実はこの先の峠道は勾配が激しく、隊商の速度が著しく落ちるのです。古くから山賊の襲撃が絶えない難所でして」


 地図で見れば単なる峠道。だが、実際に足を運べば、逃げ場のない一本道だ。


「なるほど、確かに狙い所ですね。ですが、我々がいれば山賊など……」


「……実は、それだけではないのです」


 商人の貌が、一段とシリアスに歪んだ。“山賊”という言葉を、彼は口にしたがらないように見えた。


「ここ数年、屈強な戦士が集う『謎の集団』が現れるようになりまして。それが、相当に手強いのです。討伐隊も出動しましたが、アジトも特定できず、ことごとく返り討ちにあっています」


 謎の集団。山賊でも盗賊でもなく、しかし正規軍でもない存在。


「ほう……。まあ、私たちにお任せください。襲ってくるなら返り討ちにしてやりますよ」


 不敵に微笑むアシュレイ。その余裕は本物だったが、商人の不安は消えない。


「……今までもそう豪語した護衛団が、あっけなく壊滅しております。くれぐれも、油断なきよう」


 忠告は、もはや警告に近かった。だが――そんな話を聞いても、僕らアズマ一行は全く動じていなかった。たかが山賊か盗賊団。王国の闇、大貴族、諜報騎士団、地下マフィア……それらを相手取ってきた僕らにとって、街道の襲撃者など準備運動に過ぎない。……この時点では、誰もがそう思っていた。


***


 その日の夕刻。隊商は険しい峠道に差し掛かっていた。空気が変わる。風が強く、音が反響しやすい。見通しも悪い。荷馬車はギシギシと悲鳴を上げ、僕らも馬車を下りて車輪を押し、遅々として進まない。 剣を握る手に、自然と力が入る。


 ――その時だった。峠の上から、軍馬に跨った屈強な男たちの集団・十数騎が、猛然と襲い掛かってきた。統制が取れている。無駄がない。そして――山賊にしては、明らかに“重すぎる”。彼らは隊商とすれ違いざま、青龍偃月刀や蛇矛といった、この世界では珍しい武骨な獲物を振り回す。


「ぎゃあぁぁぁ!」先頭の御者が一刀両断され、馬車から転げ落ちる。一切の躊躇がない殺し。ここで、ただの略奪ではないと確信した。


「みんな! 思う存分暴れてやろう。行くよ!」


 僕は魔剣『マンイーター』を抜き放った。刃が鳴き、血の気配に喜んでいる。


 アシュレイが即座に広範囲バフを展開する。


「物理攻撃・防御力アップ! 敵を侮っちゃダメよ、油断しないで!」その判断は正しかった。


「ホーッホッホッホ! お任せくださいませ。魔法を使うまでもありませんわ!」


 ユリシアが騎馬武者に向かって跳躍し、空中回転から放たれる強烈なローリングソバット。胸を蹴られた男が派手に落馬する。


「がるるるー! 行くよー!」


 トラ子は正面から騎馬に挑み、馬蹄を掻い潜るやいなや、巨躯を活かして馬ごと背負い投げを決める。 地面が揺れ、武者が悶絶する。


 さらに、イリスの瞳が赤く輝いた。


「大いなる闇の女神ディスフィアの名において命ず……死の恐怖を!」


 視線を向けられた騎馬戦士が急に脱力し、激しく胸を掻きむしりながら、声も出せずに気絶する。敵の一人が顔面蒼白になり戦慄する。「ヒィーなんなんだこいつ!?」 


「峰打ち! 峰打ち! まとめて峰打ちだぁ~!」


 僕は足捌きで攻撃を躱しながら、すれ違いざまに峰を叩き込んでいく。峰打ちでも、魔剣は容赦なく生命力を喰らう。次々と男たちが倒れていく。 


***


 勝負はついた……そう思った瞬間だった。空気が、重くなる。リーダー格と思われる大男が、見たこともないほど巨大な軍馬に跨って姿を現した。鎧の傷。筋肉の質。明らかに、今までの連中とは“格”が違う。


「……何をやってるんだ? そんな弱そうな奴らに手こずるとは、不甲斐ない」重低音の声が、峠に響く。


「アレをやるぞ。合わせてこい!」


「「「おうっ! いってくれリーダー!!」」」


 大男が大きく口を開けた。次の瞬間――峠に響いたのは、咆哮でも魔法詠唱でもない。歌だった。


「海~~の~~男にゃよぉ~~♪」背筋が凍る。


「「「ハッ! ドッコイショ!」」」


「凍る~~波しぶきぃ~~♪」


 北の荒海を思わせる、濁って、重く、逃げ場のない歌声。歌が――殴ってくる。


「北の~~漁場はよぉ~~♪ 男のぉ~~仕事場さぁ~~!!」


 筋肉達磨たちの合唱がハモった瞬間、鼓膜だけでなく、魂そのものが揺さぶられた。


「海の歌? いけない! この歌声には、魂を揺さぶる強力な魔力が! みんな、耳を塞いで!!」


 アシュレイの警告は、半拍遅かった。


「ぐはっ……!!」


 演歌の波動。圧倒的な“男の情念”が、全身に叩きつけられる。視界が回り、力が抜け、膝をつく。横を見れば、仲間たちも同様だった。


「「「「北の漁場はよぉ~~!!(ドンドコドンドコ!)」」」」


 倒したはずの男たちが、歌いながら立ち上がる。まるで、歌が魂を引き戻しているかのように。精神汚染系物理集団・・・僕は苦悶しながら戦慄する。


(ヤバイ!このままじゃみんなやられてしまうぞ)


 敵のリーダーの情け容赦のない青龍偃月刀が、僕の頭上に振り下ろされる。 ――絶体絶命の、ピーンチ!!


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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