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第28話 勝利の代償は?

 僕らパーティーは、ダンジョンの最深部で強敵デュラハンと対峙していた。かつてSランク相当の強敵モンスターには三度も屠られている(屠ったのではない。僕が無残に殺されたのだ、涙)僕は、生まれたての小鹿のように足がガクブルだ。


 デュラハンの兜の奥からは、感情のない視線がこちらを射抜いているように感じられ、視線を合わせただけで喉がひくりと鳴った。ここは逃げ場のない最深部。洞窟の湿った空気と、石壁に反響する重い蹄の音が、絶望感を一層引き立てる。僕の心臓は跳ね、手のひらには汗が滲む。


 しかし、今の僕は違う。蘇るたびに再構築されパワーアップした肉体、天才魔導師アシュレイさんの重層バフ、そして僕のアイデンティティとも言える魔剣チート。これらが重なり合い、かつてない強烈な一撃を生み出せるのだ。勇気がじわじわと沸き起こり、身体が自然と動き始める。冷や汗と共に湧き上がる高揚感が、恐怖を打ち消していく。今度こそ、自分が世界を切り開く瞬間だと確信する。仲間たちの気配が、背中を押すように感じられた。退路はない。ならば、前に進むしかない。


 煌めく魔剣が、死を振り撒く幽霊馬の脚を鮮やかに薙ぎ払う。落馬したデュラハンは、転がりながらもすぐさま立ち上がると、脇に抱えていた自分の首を「カチリ」と定位置に据えた。馬上槍を捨て、すらりと剣を抜いてくる姿は、もはや恐怖を通り越して美しい。幽霊のように薄暗い洞窟に、剣の金属音と息遣いだけが響く。凍りつく静寂の中、デュラハンの冷徹な目が僕を捕らえる。空気が張り詰め、時間そのものが引き伸ばされたように錯覚する。


 ガキィーン!!


 奴の漆黒の剣と僕の魔剣がぶつかり合い、洞窟内に激しい火花が散る。火花の明滅に照らされた壁面に、僕の影とデュラハンの影が交錯する。まるで巨大な悪夢が、目の前で現実化したようだった。腕に伝わる衝撃が骨まで響き、歯を食いしばらなければ剣を取り落としそうになる。


「ご主人様! 援護したいけど、距離が近すぎて魔法が撃てませんぅー!」


「イリス! 下手に撃ったら良一郎様に当たりますわ!お気をつけあそばせ!」


 イリスたちがタイミングを計っているが、僕とデュラハンの斬り合いはあまりに熾烈で、支援の隙がない。仲間の声が聞こえるたびに、みんなも無事でいてくれという祈りが胸をよぎる。


 アンデッドは生前の練度が残ると言うが、この首なし騎士は相当な達人だったのだろう。一合ごとに僕は押されていく。巧みなフェイント、硬軟緩急を織り交ぜた太刀筋。身体のあちこちを斬られ、闇のオーラが肌を焼く。身体全体が痛みに抗しながらも、内側から力が漲る感覚があった。


(耐えろ……っ! この身体は【キメラボディ改】。普通の人間ならとっくに精気を吸い尽くされて昇天してるはずだ!)


「マスター、援護します! 下がってください!」


 ノワールの光のレイピアが側面からデュラハンを刺し貫く。だが奴の甲冑は特製なのか、聖なる一撃すら決定打にはならない。僕はノワールの援護で一旦後退し、荒い息を吐いた。そこにイリスが駆け寄る。


「ご主人様! 傷を塞ぎます!」


 イリスの手から放たれたドロリとした黒いもやが僕を覆う。得体の知れない「何か」がチクチクと皮膚の下を這い回り、傷口を強引に縫い合わせていく。光の僧侶なら「キラキラ」と輝きながら癒えるのだろうが、闇の回復はビジュアルが圧倒的にグロい。まるで無数の黒い虫が肉を修復しているような……。(……治ってるけど、見た目が精神衛生上に悪いよ、イリス!)


「ありがとうイリス! ……必殺技を使う時が来たみたいだ!」


「え? ご主人様に必殺技なんてありましたっけ?」


「きゃーっ! 良一郎様、素敵ですわ! 抱いて!」


「どんな技なのかしら、ワクワクするわね!あん♡抱きたいー!」


 仲間たちの期待と歓声が、僕の肩にずしりと重く乗る。息を整え、魔剣を大上段に構える。魔力を集中させ、地味に鍛えた剣技スキルを叩き込む――今こそ、この力を解放する瞬間だ。


「行くぞおぉ! 必殺――アズマ・あたーっく!!」


 魔剣に僕の全魔力が乗り、刀身が禍々しく膨れ上がる。


 ドゴォォォーーン!!


 渾身の袈裟斬りがデュラハンを捉えた。防御も再生も許さぬ一撃により、Sランクモンスターは灰となって朽ち果てていった。


「決まった……のか?」


「ご主人様~! おめでとうございますぅー!」


 感極まったイリスが胸に飛び込んでくる。ユリシアもアシュレイもノワールも、僕の勝利を口々に讃えてくれた。

 

***


 ……しかし、その歓喜の絶頂で、恐るべき代償が表面化した。


「……? ご主人様、どうなさったのですか?」最初に異変に気づいたのはイリスだった。彼女は僕の顔を覗き込み、わなわなと震える指先で僕の頭を指差した。


「ご主人様の髪が……見る見るうちに真っ白になってますぅー!」


「えっ、ええぇー!?」


 慌ててアシュレイが出した手鏡を見ると、僕の黒髪は雪のように白濁していた。


「なんなんですの、これは!? まるで精気を全て吸い取られたような……」


「大変だわ!アズマくん、すぐにステータスウィンドウを開いてみて!」


 アシュレイさんの指示でステータスを表示する。僕の目の前の空間に転生者特典のステータス(レベルや能力値、スキル、称号など)が浮かび上がる。


『ぱらららったらー♪』


 レベルアップの小気味よい音が響く。経験値は入っている。レベルも上がっている。だが、アシュレイさんが指差した場所を見て、僕は凍りついた。


「よく見て! HP(生命力)の数字が……【不吉な赤字】になってるわ」


「HPの残量自体は満タンですよ。でも、なぜ赤く……?」


 魔法学院出身のユリシアとアシュレイが、これまでに見たこともないほど深刻な顔で僕を見つめる。


「良一郎様……落ち着いてお聞きください。この赤字は『寿命が終わりに近い』ことを示していますわ」


「……え? 寿命?」僕は意味が分からず素っ頓狂な声が漏れる。


「この感じだと……アズマくんの残りの命は、もって一か月ね」


 ガーン!……頭が真っ白になった。髪の毛よりも白くなった。


「いやだぁー! いきなり余命一か月なんて、トレンディドラマみたいな展開いやだよー!」


「ご主人様~! 死んじゃ嫌ですぅー!」泣き叫ぶ僕とイリス。


「何が原因なの? それが分かれば対処のしようも……」


「……実は前から気になっていたの。アズマくん、その『魔剣』。転生ガチャで授かったって言ってたけど、一体何なの?」


「え、女神様からは『能力値を上げる魔剣』としか聞いてないけど……」


「私の鑑定眼でも『魔剣???』としか出ない。一度、専門的に調べる必要があるわね」


 絶望に暮れる僕の横で、ノワールだけが涼しい顔で頷いた。


「まあ、大丈夫ですよマスター。寿命が尽きたら、わたくしの血でアンデッド(不死者の何か)に進化すれば万事解決です」


「いやだぁー! 恋愛も結婚もまともに経験せずに、お肌カサカサのアンデッドになりたくないよぅー!」


 ダンジョンの底に、僕の情けない悲鳴が虚しく響き渡るのだった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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