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第23話 ゴスロリJSバンパイアがゆく!

 その翌日、冒険者ギルドは朝から異様な空気に包まれていた。壁に貼られた《アズマパーティー》の求人広告を剥がし取り、待合広場の椅子に腰掛けているのは、まるで闇夜の宝石のような美少女だ。


 白と黒を基調としたフリルとレース満載のゴスロリ服。その腰には、煌びやかな装飾が施された細身のレイピアが一本吊り下げられている。外見は十二、三歳ほどだが、醸し出す雰囲気はただならぬ「強者」のそれだ。


 彼女――コードネーム「わ」こと、バンパイア少女・ノワールは、アズマ一行の登場を待ちながら、静かに魔力的なプレッシャーを放っていた。その様子を、ギルドの隅でそれとなく新聞を読んでいる「あ」や、水を飲んでいるふりをする「か」から「こ」までの王国諜報騎士団員が、緊張感をもって見守っている。


 そこへ、事情を知らない野暮な中堅冒険者が、親切心(と下心半分)で近づいてきた。


「おいおいお嬢ちゃん。悪いことは言わねぇ、ここは子供の来るところじゃないぜ。」


 ノワールは顔も上げず、座ったまま冷たく言い放った。「失せろ! 雑魚が」


 年下の少女からのあまりに冷たい言葉に、冒険者は一瞬、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になるが、すぐに怒りで顔を赤くした。


「なんだ? てめえ、舐めやがって。痛い目にあいたいのか?」


 男が乱暴にノワールの肩に掴みかかろうとした、その瞬間――ゴスロリ少女の赤い瞳が、妖しくチカッと光った。ビクッと身体を震わせる男。彼は突然、自分が何をしようとしていたのか忘れてしまったように、魂の抜けた操り人形と化す。やがて彼は、ふらふらとその場を後にした。


(催眠スキル……たった一瞥でか。この少女の姿をした秘密兵器は、やはり底が知れない)


 諜報騎士「あ」は、改めてその恐ろしさを実感し、ゴクリと喉を鳴らした。


***


 ガチャリ、とギルドの扉が開き、ついにアズマパーティが姿を現した。相変わらず呑気そうな顔の少年剣士、吾妻良一郎。服従の首輪をしたダークエルフの神官、イリス。少し目つきの悪い美少女魔術師、ユリシア。そして、見るからに美貌と色気がこぼれ出ている補助魔術師、アシュレイ。


 一行はギルドの端に席を定め、良一郎が受付に向かおうとした、その時だった。ノワールがすっと立ち塞がった。


「おはようございます。冒険者のアズマさんですね?」


 良一郎は、人見知り特有のオドオドした視線を彷彿とさせる、やたらとキョロキョロした動きで答えた。


「はい。そうですが、何か御用でしょうか?」


 ノワールは、壁から剥がした求人票を良一郎の目の前に突きつける。


「これを見ました。是非パーティーに加えていただけませんか?」


 それを聞いた良一郎は、心の底から可哀そうな人を憐れむような、低い声で囁いた。


「お嬢さん、ここだけの話だけど……うちだけは止めておいた方がいいですよ」


 その真剣すぎる忠告に、ゴスロリ美少女が大きくのけ反る。


「いやいやいや、メンバーを求人してるじゃない? いきなり断らないでよ!」


「う、うん……まあ……上からの指令で出してはいるけどね。君みたいな、幼気いたいけな女の子が来るようなパーティーじゃないんだよ」


 良一郎は必死だ。なんせ背後には邪神の聖女と、爆弾魔な悪役令嬢と、Sランクパーティーを追放されたふたなりという常識外れトリオがいる。


「ちょっと待って! 私の実力を確認してよ。強いんだから私は!」


「そういう問題じゃないんだ。優秀で前途のある人なら、なおさら関わらない方がいい」


(頼む! 後ろの怖いお姉さん達に気付かれないうちに、早く逃げてくれ!)良一郎は心の中で祈った。


「大丈夫だから。私なら絶対上手くやれるって。ね? せめて面接くらいしようよ」


 なおも食い下がるノワール。


***


 その騒ぎを聞きつけて、イリスがそそくさと近づいてくる。


「ご主人様! 何かトラブルですか?」


 その時、イリスとノワールの目が、バチッと合った。


「あぁ?」「なんだぁー!?」


 ノワールとイリスの間にバチバチを火花が飛ぶ。メンチを切る二人。


「うちのご主人様に何か御用ですかぁ?」


 イリスは良一郎を押しのけて、ゴスロリ少女にプレッシャーを掛けていく。(めちゃ怖い顔してるぅー)ノワールも怯まない。(こっちもすげー怖い顔してる)


「アズマさんのパーティーに加入希望なんですけどぉー」


「ほほぅーいい度胸してますねー」イリスはかなり上からゴスロリ少女を見下ろしている。


「やだぁー。先輩ったら怖い顔。よろしくお願いしますぅ―」(チッ! 極秘任務のためだ、ここは我慢だ)


「あらあら、加入希望なんですか・・・ふふん・・・いいんじゃない?」イリスは満面の笑みでノワールを歓迎した。


 良一郎は、この二人のやり取りを見て震えている。ノワールを監視している「あ」達――王国諜報騎士は、「よっしゃー!上手くいきそうだぞ」と、安堵するのだった。


***


 こうして、イリスの「この子はなかなか見どころがありそうですぅー」という推薦により、謎のゴスロリ美少女が仲間に加わった。早速ギルドでパーティー登録を行う。彼女はノワールと名乗り、戦士職である旨を告げた。イリスによると、属性はバリバリの闇属性らしい。


(やる気マックスなのが気になるが、このパーティーの統括者は闇の女神ディスフィア様に他ならない。彼女がオッケーなら、大丈夫なのだろう)


  良一郎は楽観的に思考を打ち切った。


その日のクエストは翌日以降に回し、歓迎の宴会を開いた。ノワールさんはかなり過激な戦士みたいでなぜか会話は弾む。やはりこの子も引き寄せられた上玉なのだろう。朝から夜にまで及んだ宴会の後、ノワールさんを連れて町外れの自宅へ帰る一行。


 家に到着しリビングに入った、その瞬間だった。それまで優雅に微笑んでいたノワールの目が赤く光り、口には鋭い犬歯が生え、美しかった黒髪が白髪へと一瞬で変わった。その姿は、まさにゴスロリJSバンパイア。彼女は、静かに、だが冷酷に言った。


「くっくっくっ、皆さん、すいません。ここで死んでもらいます」


 ノワールがすらりと腰のレイピアを引き抜く。細身の剣が、突如としてまばゆい光を放ち輝いた。それは、闇属性のノワールとは真逆の、光の女神アストリアの加護と魔力を付与された聖剣だった。


 良一郎は反射的に魔剣を構える。そこへノワールの聖剣が、鋭い突きで襲いかかってくる!


 キィーン!


 良一郎は、魔剣による咄嗟の防御反応チートにより、かろうじて受け流す。


「ちょっと待って下さい。僕らの仲間になったんじゃ!?」


 ノワールは、瞳に冷たい光を宿したまま、高らかに言い放った。


「死ね!皆殺しだ!止められるものなら止めてみるがいい!!」

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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