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第20話 危ない新メンバー加入へ

 目の前で自分を助けに来た可愛い男の子が、自分の使役するマンティコアに倒される姿を見て、アシュレイは凍り付いた。ほんの一瞬前まで、救いの象徴のように見えた存在が、あまりにも呆気なく叩き潰された。その現実を、彼女の心は理解することを拒否していた。


 僕の死によってマンティコアのテイム(使役)は外れ、ラスボスモンスターは自由になる。凄まじい圧の闇の咆哮がダンジョンに響き渡る。マンティコアはその場にいる人間たちすべてを敵として戦闘を開始した。


 イリスとユリシアが僕の遺体を踏み越えてマンティコアと対峙する。そこに躊躇はない。感情より先に、身体が前へ出ていた。


「ユリシア!例によってこのモンスターを倒しますっ!」


「わかりましたわ。ですが爆発魔法で爆散させちゃだめですわよね?」


 ユリシアは僕の遺体が近くにあるため、攻撃手段に制限があることに不満そうだ。


「お任せください!」


 イリスの目が赤く光る。闇の女神ディスフィア様の力がその身に宿った。空気が重く沈み、ダンジョンそのものが彼女を恐れて息を潜めた。イリスがマンティコアへ突撃し、華麗なステップで尻尾の毒蛇や前足の爪攻撃を避ける。そして――


 邪神キーック!!!


「やぁ!」掛け声は可愛いが、エグイ威力の蹴りがマンティコアの胴体を蹴り上げる。マンティコアはその巨体をダンジョンの天井にぶつけて、次に落下してくる。質量と魔力が拮抗した結果、逃げ場は存在しなかった。


 ぐちゃあーと肉塊になるマンティコア。その光景を目の当たりにして、更に凍り付くアシュレイとモンスター軍団たち。最強だと思っていた切り札が、一瞬で“処理”されたのだ。


 イリスは鮮血を身体に浴びながら、にこりと邪悪に笑いかける。「あのー、まだ戦いますか?」


 アシュレイは涙目でぶんぶんと首を横に振る。生存本能が、答えを選ぶ余地を与えなかった。それを見てユリシアがドスの効いた声で命じるのだった。


「さっさとその後ろのモンスターを解散させなさい!」


 アシュレイはぶんぶんと首を縦に振り、率いてきたダンジョンモンスター達に「元の住処へ帰る」よう命じる。


「全員解散!解散しなさーい!!」


 テイムスキル全開でモンスター軍団に叫ぶアシュレイ。凶悪なミノタウロスやリザードマンの戦士、ボブゴブリン達……王国に放たれたら大変になるであろうモンスター達が「回れ右」をして迷宮の地下に向かって帰っていく。その背中は、敗走というより避難に近かった。


 そして、イリスの蘇生の秘術が再度行われるのだった。


「今度はどんなスキルが発現するのかしら?わくわく」


「もうーイリスったら良一郎様で遊んでるんじゃございませんこと?」


 そこへアシュレイも加わる。「あのー、君たちは私を助けに来てくれたの?この男の子……助けてあげれるの?」


「そうですよ!お任せください!!」


(蘇生シーン略)


* * *


 ――僕はアシュレイさんの腕の中で目を覚ました。最初に感じたのは、柔らかさと温もりだった。


「はっ!えーん……恐かったようー。夢を見たんだ。凶悪な魔法生物マンティコアの爪と毒牙で死んじゃうんだー」


「ご主人様。今回も無事に蘇生出来ました。よかったですぅー」イリスが優しく僕を抱きしめる。


「良一郎様~!もう我慢できません。しゅき♡」ユリシアさんが僕の顔にキスの嵐だ。


 三人の美女に抱きつかれ、僕は全然動けない。「え?やっぱり夢じゃなかったの?」


 アシュレイが僕に抱きつき泣きじゃくる。「アズマくん、生き返ってよかったの♡」


「すいません。助けに来たのにあっさり殺されちゃって」


「いえ!謝るのはこちらですから!あのマンティコア……私がテイムしてました。そして能力値も爆上げしてたんです!」


「ええっ?どうゆうことなんですか?」


 アシュレイさんは、恋人だった幼馴染リーダーに裏切られ、このダンジョンの最下層近くに置き去りにされたこと、魔物をテイムして生き延びたこと、そして元の仲間たちや地上に復讐を誓ったことを、僕らに涙ながらに語るのだった。僕はその告白を聞いて、この絶世の美女お姉さんに深く同情する。


「アシュレイさん、無事でよかったです。僕らはクエストで貴女を救出に来たんです。一緒に地上へ帰りましょう」


「いいのかしら?私みたいな追放された役立たず冒険者が生還したって……もうどうでもいいって思って……」


「バカっ!命を粗末にしちゃいけませんよ!貴女みたいな素敵な冒険者さんをクビにするなんて、そのリーダーがおかしいんです」


 僕の『ドラゴンボイス』が乗った、真っ直ぐな励ましを聞いて、アシュレイは目に涙を浮かべる。


「アズマくん……いいの?私、まだ生きて頑張って?」


 僕は彼女の手を取って大きく頷く。


「よかったら、僕のパーティーに来ますか?」


 アシュレイは涙目ではにかみながら頷く。イリスとユリシアもアシュレイの肩にそっと手を置く。


「ディスフィア様もアシュレイさんをお認めになってます!」


「ふふん、まあ補助魔法の使い手は欲しいところ。私も異存はありませんわ」


 こうして僕らはアシュレイさんを無事に保護し、王都へ帰還するのだった。


* * *


 僕らは生還不能と言われた冒険者を救出し、更に仲間にしたことで大いに名声を上げた。そして、得られた報酬と預金から金貨千枚を支払って賃貸住宅を買い上げる。


 受付のお姉さんが登記を済ませてくれた。「凄い躍進ですねアズマさん」


「ははは(乾いた笑い)それほどでも(主に死んでただけだし)」


「購入された家屋敷で何をしてもいいですけど、闇の女神信仰を派手にやると、王国諜報部が強制排除とかするかもしれません。気を付けてくださいよ」


「そうなんですか……最近は全然そんな人たち見てないけど」


「それならよかったです」


 僕らは自宅になった屋敷に帰る。ユリシアに続き、行く宛ての無くなったアシュレイさんも同居することになった。僕らは改めて自己紹介をしてパーティーの絆を強固にしていく。アシュレイさんは属性は中立なので、特にディスフィア様への嫌悪感はないみたいだ。それよりもむしろ闇の女神に何かお願い事があるらしい。僕はそれが何か知る由もなかった。


 翌朝、就寝する僕のベッドに違和感が起こる。誰かが僕のベッドに滑り込み、身体をさわさわ触ってくる。


「ん?なに?」気が付くとアシュレイさんが僕を押し倒し、キスを迫って来る。


「アズマくん、大好きよ。ちょっと大人しくしてて、痛くしないから」


 僕は叫んだ。「ああぁーれぇぇー!」


 その叫びを聞いて隣室のイリスが飛び込んでくる。


「アシュレイさん!ご主人様!何やってるんですか!?男同士で!」


「え?男同士?」(アシュレイさん……男の娘なの?)


「リーダーもだけど、いいじゃん男同士でも♡」アシュレイは悪びれる様子もない。


 僕は泣き叫ぶ。「やめてー!それが追放の理由なんじゃないですか!?」

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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