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第15話 新メンバーキター

 僕とイリスはユリシアさんを我が家で招き入れた。質素だが清潔な家の中に、久しぶりに他人の気配が満ちる。ユリシアさんは玄関先で一瞬だけ立ち止まり、まるで貴族の館に足を踏み入れるかのように背筋を正した。その仕草だけで、彼女がただ者ではないことが分かる。


 簡単に僕らの自己紹介をする。ユリシアさんは、僕が異世界からの転生者と聞いて驚いていたが、すぐにその「異質な力」に納得したようだった。そしてユリシアさんが大貴族の出身であるという話を聞いた。彼女は薄汚れた服を纏っているが、にじみ出るオーラが育ちの良さを物語っていた。所作に気品があるのだ。長い放浪生活で外見は擦り切れていても、内側まで削れるほど柔ではなかったらしい。


 少し落ち着いて、イリスがユリシアにお風呂を勧めた。湯気の立つ浴室の話題が出ただけで、ユリシアの喉が小さく鳴る。無理もない。逃亡と貧困の中で、温もりは贅沢品だった。


「お疲れですよね?よかったらお風呂準備しますからどうでしょう?」イリスは微笑んだ。


「よろしいんですの?恥ずかしながら、わたくし着替えもありませんの」ユリシアは少し戸惑いを見せる。


「ふふっ、そこはお任せください」イリスは意味深に答えた。その笑顔には、どこか確信めいたものが含まれていた。


「えーと?お任せします」


 僕は女子同士の話に入れず、そそくさと台所へ向かった。「イリス、晩御飯の準備してるよー」この家で誰かを迎え、食事を作る。それだけのことが、少し誇らしく感じられた。イリスは嬉しそうに「ご主人様、よろしくお願いします」と返事をする。


 ユリシアはイリスに誘われて久しぶりの入浴をした。幽閉先からの逃亡生活で初めての暖かさだった。


「なんでしょう?ちょっと涙が出ますわね」ユリシアは静かに心の中でつぶやく。ユリシアがお風呂から上がると、脱衣所に着替えが用意されていた。その服は上から下まで計ったようにぴったりのサイズだ。


(まるで私がここに来るのがわかっていたかのようね)


 頭もよく勘の鋭いユリシアはなんとなく、察しがついてきた。ここに来るのは必然だったのかもしれない。誰かの差し金。ならばこれも……。額に刻まれた魔法行使封印の呪印をそっと手で撫でた。再び身体に魔法元素マナが満ち溢れる感覚が蘇るようだった。


* * *


 ユリシアがリビングへ行くと、テーブルには美味しそうな夕食が三人分用意されていた。かつて、自分が公爵令嬢だった時に比べれば、取るに足らないメニューだ。しかし、困窮生活を経た今では眩しいほど美味しそうだった。


「ユリシアさん、どうぞ。お口にあえばいいんですけど」僕が言う。


「ご主人様の料理は美味しいですよー」イリスも得意げだ。


「突然押し掛けたわたくしに、このようなおもてなし……感謝いたしますわ」


「遠慮せず召し上がってください」


「アズマ様……ありがとうございます」僕らは色々と話しながら楽しく談笑した。


 食事を終えてお茶を飲んでいると、そこへ四人目?が降臨する。闇の女神ディスフィア様だ。イリスの目が赤く光り、チャネリング状態に入った。イリスの身体を通じて闇の女神が交信する。


《フフフフ。よくぞ来たなユリシアよ》


 その声を聞いてユリシアさんはイリスの前に跪いた。


「闇の女神様。お初にお目にかかりますわ。ユリシアと申します」


《堅苦しい挨拶はよい。お主のことはずっと見ておった。どうじゃ?望みを叶える代わりに我らに協力せぬか?》


「御意のままに。わたくしにはもうディスフィア様にお助けいただくしか道はないものと思っております」


《呪印のことじゃな?見せて見よ》


イリスがユリシアさんの額の印に触れ、その術式を解読し始めた。


* * *


 僕は傍らでその光景を見ていた。額に封印の呪いかぁ。そういえば、どこかでそんな話を聞いたような……ん?


(隣国の連続爆破事件って確か犯人は十八歳の公爵令嬢で、額に魔法封印の刑を受けてたような?リュミエール王国の爆弾魔……もしかして?この人なんかーい!?)


 ヤバイじゃん。こんな人の封印を解いたら、再び隣国に爆弾テロの嵐が吹き荒れかねないぞ!僕は目一杯叫んだ!


「イリス!ディスフィア様!その封印を解いちゃダメだぁー!この人、超危険人物ですよ!」


 その叫びが終わらないうちに、効果音が響いた。「ぴろぴろりーん」イリスが呪印を何とかしていた。


《フン。この呪印は呪いの類ではない。あくまで魔法じゃな。魔法陣で発動する制御装置よ。なので、新しい術式を上書きした》


 ユリシアの額の呪印が闇のモヤによってかき消されていく。 


《これで魔法が苦も無く使えるようになったぞ》


「本当ですか?嬉しいですわ!これでリュミエール王宮も爆破してやれますわ!ホーッホッホッホ!」 勝ち誇るユリシアが高らかに笑い出した。


「ユリシアさん、落ち着いて!そんなことばかりしてたら、次は処刑されるからー」僕は必死になだめる。


 その時、ディスフィア様がちょっと暗いトーンで語り掛けてきた。


《ユリシアよ。解呪はしたが、完璧ではない》


「そうなのですか?」ユリシアは真面目な表情に戻る。


《実は言いにくいんじゃが……上書きの際に色々な相乗効果が起きてのー》


「はい……それで?」


《魔法をたくさん使えば使うほど、『エッチ』な気分になってしまうのじゃ!》


「ええぇー!?それってどうしたらよろしいのでしょう?」


《うーん……我慢して》


 ユリシアさんが真っ赤になりながら言い放つ。「我慢できる程度でしたら問題ありませんわ!」


《すまん……やっぱり我慢できないと思う》


 ユリシアさんは真っ赤な顔のまま呼吸困難になり、バタリと昏倒する。意外と初心なのか?


《その時は良一郎に何とかしてもらうしかないかのう》


 僕は、床に倒れた爆弾魔を見下ろしながら、ディスフィア様に尋ねた。


「ディスフィア様……これって罰なんですか?ご褒美なんですか?」

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