表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/51

第14話 この人当たりなんですか??

 僕はイリスと共に冒険者ギルドに「パーティーメンバー募集」の張り紙を出した。ギルドの掲示板は、冒険者たちの欲望と事情が渦巻く場所だ。高難度討伐、護衛依頼、短期高額――それらの紙片の中で、僕らの募集要項はやけに現実的で、逆に浮いていた。


 『高給優遇・賞与あり・週休二日・残業手当・交通費支給』。八億円の貯金があるんだ。これくらいの出費は痛くも痒くもない。むしろ、ちゃんとヤバくない人材を雇って、僕の命が助かるなら安いものだ。条件だけ見れば、夢のような職場のはずだった。


 しかし、応募は誰も無かった。掲示板の前を通る冒険者たちは、張り紙を一瞥しては、何も言わず視線を逸らしていく。その動きが妙に統一されているのが、逆に不気味だった。大宴会で僕に「加入しようかしら?」とか言ってたお姉さんも「いや……やっぱり無理です」と言って逃げて行った。


 きっと僕の背後にいるイリスの闇のオーラ、あるいは「アズマに関わるとロクなことにならない」という冒険者界の不文律を感じ取ったのだろう。誰も来ない掲示板の前で、僕は座り込んだ。石造りの床の冷たさが、妙に現実的だった。


「仕方ないね。今日はこのくらいにして解散しようか?」と僕はイリスに尋ねた。


「そうですね。ご主人様は訓練場へ?」


 イリスは尋ね返してくる。その声音には、いつもの明るさの奥に、ほんの少し心配が混じっていた。


「うん。魔剣でステータスを上げてもらっても僕の実力じゃないからね。イリスを護れるよう、素の自分を鍛えとこうと思って」口にしてから、ようやく自分の覚悟を再確認する。


 イリスは目をうるうるさせて「ご主人様!ふぁいとです!私はもう少しここで待機してみようと思います。お帰りの際に迎えに来て下さいませ」とエールを送ってくれた。その笑顔に、少しだけ背中を押された気がした。


「うん、わかったよ」僕は冒険者ギルドの紹介で訓練所と呼ばれる「町道場」へ通い始めたのだ。コミュ障とヘタレを治すためにも、もっと強くなりたかった。


* * *


 そんな僕らを物陰から、王国諜報部、コードネーム「あ」ことミランダ・ソリスが見つめていた。


(今だ!今こそ潜入するチャンス!アズマは抜けた!ダークエルフ一人なら!)


 敬虔な光の女神を信奉するミランダは、勇気を振り絞った。上司の鬼のような催促に背中を押され、ついにイリスに話しかける。


「あの!冒険者ギルドからの推薦(王国諜報部の指令による)で来ましたミランダと申します!是非パーティーに加えてほしくて!よろしくお願いします!」


 ミランダは紹介状を渡し、平身低頭する。イリスの目が赤く光った。闇の女神ディスフィアとチャネリングしたのだ。


「残念ですが、お引き取り下さい~」イリスは冷たく言い放った。


「え?ええぇー?何でですか?仲間がいなくて困ってらっしゃるって聞きましたけど?」ミランダは絶句する。


 イリスは冷めた目でミランダを観察しながら、「うーん……ミランダさんでしたっけ?うちのカラーじゃないんですよねー。光の女神様のご加護を受けてらっしゃいます?」


「まあ……そうですけど……この国じゃ普通ですよ?」


「普通の方はお断りしておりますのでー」


 ミランダは二度目の絶句。このダークエルフ……やはり邪悪なんじゃ?精一杯の勇気をあっさりと踏みにじられた彼女は、半泣きで退散するのだった。


 イリスは心の中でディスフィア様に尋ねた。(ディスフィア様、あれでよかったのですか?)


《あれは危険な香りがプンプンしとった。それに、あの娘では面白くない。それより来るぞ、上玉が》


 イリスがにやりと笑う。(楽しみです)


* * *


 街のチンピラから情報を引き出したユリシアは、喜色満面の笑みを浮かべた。闇の勇者アズマと邪神の下僕イリス。光の加護が得られないのなら、闇に縋ればいい。犯罪者の烙印など闇の女神なら消し飛ばしてくれるはず。超ポジティブお嬢様に迷いはなかった。


 そして何より自分に金貨を施してくれたあの少年……きっと彼が闇の勇者アズマなのだろう。(なんとなく縁を感じるの)ユリシアのハートは、真の愛かもしれない恋の予感に高鳴っていた。今まで高貴な身分による結びつきしか知らなかった人生。自分の事を心から気遣ってくれた少年の笑顔が忘れられない。


 もう一度会いたい。そしてもし叶うなら、魔法の力を取り戻したい。その時はその力を闇の勇者に捧げよう。彼女の足は、アズマとダークエルフが住むという郊外の賃貸住宅へと向かっていった。夕闇がだんだんと迫って来る。


 アズマの家を探し当てたユリシアの前に、屈強な男たちが数人現れた。手に手に刺股さすまた……奴隷商の手先だろう。


「凝りませんわね?また返り討ちにあいたいみたいね?」ユリシアは挑発した。


 雑魚Aは刺股を構え、「今日こそ捕獲するぜ!かかれ!」と叫ぶ。数人の男たちが襲い掛かる。さすがに劣勢になる・・・多勢に無勢。(こんなところで……私はもう負けたくないのに……!)ユリシアは内心で焦燥した。


* * *


 その時だった。キラリ!輝く魔剣が、ユリシアを押さえつけていた刺股を両断する。彼女を取り巻く襲撃者たちの輪に果敢に飛び込んだのは、吾妻良一郎こと闇の勇者アズマだった。


「こらー!僕の家の前で乱暴狼藉なんて許さないぞ!」僕は精一杯の勇気を出して叫んだ。


 僕の声に呼応して後方からイリスも叫ぶ。「そうよそうよ。早く退散しないとやっつけちゃいますよ!」


 だが襲撃者たちはたじろがない。プロの人さらい集団だ。僕はユリシアの前に立ち魔剣を構える。


「お姉さん大丈夫ですか?ここは僕らに任せて」


「あなた?闇の勇者アズマね?」ユリシアは目を輝かせて僕を見つめた。


「ははは。自分じゃ闇のなんとかって名乗ってないんだけどなぁ」


 僕は乾いた笑いを漏らしながら、襲い掛かる襲撃者たちをズバズバ切り伏せていく。彼らは、僕が最強の【魔剣】を握っていることを知らない。剣が触れるだけで、彼らの装備は簡単に両断され、身体に切り傷が入る。


「うぉーおおーこいつ見かけによらず強い!」雑魚Bが呻いた。


「ぐはぁー駄目だ!退散するぞ!逃げろ!」雑魚Cの叫びと共に、彼らは逃げ出した。


 逃げて行った方向で、イリスの闇の呪いが襲う。逃げた先に現れた闇の底なし沼にハマって沈んでいく彼ら。「あああー沈む!動けない!助けてくれー!」ずぶずぶと闇に消えていく光景を見て、僕は背筋を震わせた。


「たははは。イリスの闇魔法は相変わらずエグイなぁ。これどうなるの?」


「うーん……ずばり言うとディスフィア様への供物です」イリスはにっこり笑った。


(くっ!可愛い……けど怖いよイリス)


 ユリシアが僕に近づき、上目遣いで言った。「あの……助けてくれてありがとう……ですわ」


「お姉さん……この前の?元気出たみたいでよかったです」僕が言うと、ユリシアは(きゅん)と心をときめかせた。


「わたくし……お二人にお願いがあって参上しました。名前を、ユリシア・フォン・グロースハイムと申します」


(なんか来た。この人がもしかして大当たり!?)

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


もし「面白い!」と思っていただけたら、評価(☆)をぽちっと押していただけると励みになります。

星は何個でも構いません!(むしろ盛ってもらえると作者が元気になります)


そして、何らかのアクション&ひとこと感想(一行でOKです)をいただければ幸いです。

特に感想はめっちゃ元気になりますw 


よろしければ、ブックマーク登録もお願いします。

更新時に通知が届くので、続きもすぐ追えます!


今後の展開にもどうぞご期待ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ