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第13話 その名は悪役令嬢!?

僕がイリスを奴隷商館で買うより少し時間を遡るころ。隣国リミュエール王国の魔法学園では大変な事態が起きていた。この国は魔法技術を国力の要とする学園国家であり、王族や貴族の子弟が当然のように集う場所だ。平民の入学は極めて稀で、それ自体が嫉妬と軋轢を生む土壌だった。


 ドカァーン! ズズーン!


 爆音とともに空気が震える。巨大な爆発が学園寮を壊滅させる。防御結界が張られていたはずの建物が、紙細工のように崩れ落ちる光景は、生徒たちの常識を一瞬で破壊した。さらに続く爆発。魔法学園の生徒会室が吹き飛ばされたのだ。それは権威の象徴であり、学園の中枢でもあった。


 それからしばらくして、王都の一角でも大爆発が起こる。連鎖するような破壊は、もはや偶発事故では説明がつかない。三年前、魔法学園に首席で入学した平民の美少女ディアリー・ブロッサム(光の聖女)の実家が粉々になった。王都を揺るがす連続爆破事件だった。


 果たしてその犯人は……あっさり特定された。それほどまでに、彼女の感情と行動は露骨だったのだ。ユリシア・フォン・グロースハイム公爵令嬢。魔法学園の三年生にして、王国第三王子の婚約者だ。金髪碧眼で白磁のような艶やかな肌、抜群のスタイルの真正美少女――ただし、その目はちょっとキツイ。見下す視線は、生まれと地位が与えた「当然の権利」であるかのようだった。


 テンプレ通りの高慢ちきな性格。差別主義者で、平民出身のディアリーを陰湿なイジメで日々嫌がらせをしていた。その行為は巧妙で、決して証拠を残さない類のものだった。しかもディアリーが婚約者の王子と次第に仲良くなるにつれ、ヤンデレを悪化させ、遂に実力行使に出た訳だ。嫉妬と独占欲が、理性を完全に焼き尽くした瞬間だった。


 ユリシアは攻撃魔法に関しては天才的な実力者だった。その辺に出てくる「形だけの」悪役令嬢とは格が違う。才能に裏打ちされた自信は、歪んだ正義感と結びつき、危険な爆発力を生んでいた。独自に開発した爆発魔法は効果も絶大。更に時限爆破も可能という恐ろしさ。高貴な身分は何をやっても許されますわーくらいの感じで、爆破テロを敢行したのだった。


 もちろん狙いはディアリーである。幸いにも犠牲者は少なかったが(おいおい)、翌日の全校集会の場で王子から断罪されるユリシア。学園中の視線が突き刺さる中、彼女は最後まで背筋を伸ばしていた。婚約破棄と逮捕。そして額に魔法の呪印で魔法行使無効の封印を施され、国外追放へ。


「どうしてですのー?私のどこがいけなかったのです?」


 王子&聖女以下、魔法学園のみんなは思った。(どう見ても全部お前が悪いだろー)こうしてユリシアは、吾妻良一郎のいるアストラリア王国へ護送され、ド田舎の尖塔へ幽閉されるのだった。


* * *


 しかし、その程度の事でへこたれるユリシアではない。生まれながらの強者。天然の鋼のメンタルを持つお嬢様は、復讐に燃えて幽閉先から脱走する。得意の攻撃魔法を封印されて弱体化しているのは間違いないが、そもそものポテンシャルが並み外れてハイスペックなのだ。


 王国から派遣されている監視役の執事をウエスタン・ラリアットで沈めると、更に監視メイド以下を延髄蹴りやアイアンクローで昏倒させ、完全武装の門番もジャーマンスープレックスで打ち破って逃走したのだった。


 最初は故郷を目指したユリシアだったが、魔法を封印されたままではさすがに復讐は無理だと悟った。額に刻まれた魔法犯罪者の証明でもある呪印を解呪するのは並大抵のことではない。やがてアストラリア王国の王都にたどり着き、闇組織や非合法ギルドを尋ねたが解呪は出来なかった。手持ちの資金も尽きて、とうとう物乞いにまで落ちぶれるユリシア。


 彼女の美貌を狙って奴隷商の手の者が襲い掛かって来る。そんな無頼の輩をフライイング・ニーアタックで撃退しながら、王都のスラム街を徘徊する日々。今日もまた襲撃者を気絶させ、懐を探るユリシア。懐から出てきた革製の財布袋を確認する。銅貨ばかりの安財布だ。


「ちっ!時化てますわね。これっぽっちしか持ってないなんて。まあこれで二、三日は食い繋げられますわ」


 奪った財布を懐に入れ、襲撃者を街の水路に叩き込む。その辺の盗賊よりよっぽど質の悪いユリシアだった。


* * *


 そんな彼女も次第に困窮を極めていった。あたりの犯罪者もバカではない。兵糧攻めとばかり、稼ぎと食料を断ったのだ。弱らせて捕獲し、奴隷として売り飛ばすつもりらしい。さすがのポジティブお嬢様も死にかけたその時だった。


 ちゃりーん……


 ユリシアの欠けたお椀に施しのお金が入れられた。それは金色に輝く金貨だ。思わず目を見張り、その贈り主を仰ぎ見る。歳末助け合い募金に毎年お小遣いを寄付してきた少年・・・吾妻良一郎だった。


「お姉さん大丈夫ですか?顔色が悪いけどちゃんと食べてます?」


「あの……あなた……こんなに沢山施すなんて……頭おかしいんじゃなくて?」


「気を悪くしたらごめんなさい。臨時収入があったからおすそ分けです」


「そ・・そういう事なら貰ってあげますわ」


 精一杯の強がり。しかし彼女は、生まれて初めて人の情けを(ちょっぴり)感じたのだった。


 イリスが僕の手を引く。「ご主人様~早く行きましょう」


 僕は彼女と手を繋ぎ歩き出す。「うん、待たせたね」


 ユリシアは目を見張る。ダークエルフ!? 噂にしか聞いたことがない邪神の下僕が街にいるなんて!?


 翌日、良一郎の施しで生き返ったユリシアは街中に出て情報収集する。彼女の情報収集方法は独特かつストレートだった。路地裏で街のチンピラを卍固めで絞めながら叫ぶ。


「答えなさい、下民。ダークエルフの噂を知ってたら吐くのがよろしくてよ。うらぁ!」

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