第10話 さらば異世界よ(まだ退場させませんから)
アースドラゴンの鋭い爪が僕に迫る!
ドガーン!
僕の魔剣が辛うじてドラゴンの鉤爪攻撃を受け流したが、振り下ろされた場所の地面が砂地のように抉り取られる。凄まじい威力だ。
僕は一撃を受け流しただけで、一発で両腕の力を持って行かれた。その衝撃の凄さに魔剣を握る力も抜けていく。
「イリス!こいつ普通じゃないぞ、逃げよう!僕が食い止める間に部屋を出るんだ!」
「私は大丈夫です!ご主人様こそ早くお逃げください!闇の呪いでドラゴンの視界を奪います!」
「すまない!闇魔法頼んだ!」
イリスの闇の呪いが発動し、ドラゴンの顔を黒い霧が包む。それを見て後退しかけた僕達に、パニックになったアースドラゴンが振り回した前足が迫る! イリスが危ない!僕はとっさに彼女を庇うように飛び出した。
ぷちっ! すぽーん!!
ドラゴンの一撃で僕の首は胴から離れ飛んでいく。僕が最後に見た光景は、ぐるぐる回る景色だった。首が地面に転がるころには既に意識はない。僕の胴体からは派手に血しぶきが吹きあがっている。
「いやぁー!!ご主人様~!!!」
思わず膝からが崩れ落ち四つん這いになるイリス。両目から大粒の涙が溢れ出す。目の前のショッキングな出来事に心が折れそうだった。
しかし、彼女は諦めない。
「ご主人様……遺体を冒険者ギルドまで持ち帰れば蘇生してもらえますから……ん? もしかして……私ひとりじゃご主人様を蘇生どころか……制御を失った邪悪なダークエルフとして処分されちゃう? これ……詰んでるかも」
* * *
闇魔法の影響でアースドラゴンが転げまわり、イリスが僕の首を拾って泣き叫んでいる時だった。イリスの赤い瞳が妖しく光る! 闇の女神ディスフィアがイリスにチャネリングしてくる。
「何やっとるんじゃー!?せっかくわしがサポートしたのに・・・まあよい。イリスよ、落ち着くのじゃ。良一郎の蘇生を行う。ここで蘇生すればオールオッケーじゃろ?」
「グスッ……わかりました。ですが、ディスフィア様……ここでは失った血肉の補充が出来ません。どういたしましょう?」
そう、蘇生魔法には高度な神聖魔法が必要だ。失われた身体の再生は、新鮮な生肉や生き血(通常は家畜とか輸血用血液を使います)を使って補充するのが定石。この補充があるとないとでは、成功率が天と地ほど違う。
「ふむ……そうじゃな……こいつを使うか。イリスよ、アースドラゴンの血肉を使うぞ。すぐにぶっ殺してしまえ」
「ナイスアイディアーでございますー!」
そう言うとイリスは立ち上がり、拳を構える。涙はもう止まっている。
「ご主人様の仇……邪神ぱーんち!」
イリスの可愛い掛け声とは裏腹に、どエグイパンチがアースドラゴンの頭に炸裂!
ドゴォンッ!!
一撃でドラゴンの頭部は首から離れてぶっ飛んで行った。強靭な肉体と複数の補助頭脳神経を持つアースドラゴンも、頭をつぶされては生きてはいない。やがて自らの血の海に沈んでいった。
イリスは直ちに闇の女神ディスフィアの力を具現化していく。
「ご主人様! 蘇生して差し上げます! えい!やあ!とうー!」
イリスは女神ディスフィアの印を組み、高らかに復活の神聖黒魔法を詠唱する。良一郎の身体とドラゴンの身体、良一郎の血とドラゴンの血が混ざりあい、彼の身体を蘇生・回復させていく。
* * *
はっ! 僕は目覚めた。気が付くとイリスの胸に抱かれて、彼女に優しく頭を撫でられていた。
「イリス~! 怖い夢を見たんだ。初級ダンジョンにSランクのドラゴンが出て、僕はあっさり殺されちゃうんだ」
「ご主人様……目覚められましたか。よかったですぅー! 本当によかったー」
イリスは大粒の涙をこぼしながら僕をぎゅっと抱きしめる。
「イリス……もしかして……夢じゃなかった? 僕は死んだのか?」
「はいっ! 私を庇ってくれて……カッコよかったですぅー!」
「はぁーカッコよくなんかないさ。あっさり殺されるなんて……あの~生きてるってことはイリスが蘇生魔法をかけてくれたの?」
「おっしゃるとおりです。緊急でしたのでアースドラゴンの血肉を使い、即席で蘇生しましたが、うまくいったみたいで何よりです」
「アースドラゴン……え? やっつけたの?」
「はいっ! ご主人様の仇だったので」
「ははは……イリスって強すぎない? レベル幾つなんだろう?」
「ご主人様の転生者特典で私のステータスってわかりませんか?」
「確か同じパーティーなら見れたような……」
僕はイリスのステータスを開いてみた。……レベル150だと!?各能力・スキル・称号……すべてが僕をはるかに上回っていた。
「イリスはレベル150みたいだ」
「それって強いのですか?」
「ああ……僕より遥かに(血涙)」
しばらくして立ち直った僕らは稀少鉱物の採取と、アースドラゴンの魔石・素材を回収して冒険者ギルドに帰還した。受付のお姉さんは仕留めたドラゴンの魔石を見て、目を回してひっくり返った。
こうして、僕とイリスの初陣は「ドラゴンを仕留める」という伝説を生んだのだった。というか……僕って死んでただけなんだが。ギルドから支払われた莫大な報酬に小躍りするイリスを見て、彼女の為にも本当に強くならなきゃと心に誓うのだった。
どこからともなく効果音が鳴る。(ぴこーん!)あ! ちょっぴりレベルアップしてる。
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