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デートって……口下手か

「ダメに決まってるだろ!」


「ふーん。そう?」


 美那は人差し指を顎に当てて、「むーん」と小さく唸る。


「じゃあ、アンタは滝尾さんのことが好き?」


「……はぁ?」


 何がじゃあなのかわからないし、その質問に至る経緯も意味不明だ。滝尾さんとはついさっき知り合ったばかりだし、好きと言う感情より『怖い』が先にくる。


「全然好きじゃないけど」


「……ふーん」


 なにやらニマニマしだす美那。なんだよ、と思うが、訊くひまもなく美那は続ける。


「じゃあデートに誘われたら断るんだね?」


「そりゃな」


 なぜデートという単語が出てくるのかはわからないが……まてよ。僕はいったん考えるのをやめてみる。こいつは昔から適当に喋るきらいがある。だったら真面目に考えすぎるというのも時間のムダというものだ。


「そっか」

 

 美那はなぜか嬉しそうに笑う。が、すぐにジト目で俺を見てきて、


「デート、初対面の人とは本当に行かないんだよね?」


「だから行かないって。てかさっきからデートってなんなんだ? 幼馴染のデートの有無を聞くのが流行ってるのか?」


 ぎくり、と肩を振るわせる美那。だが、そのクールタイムは一瞬のことで、


「あたしより先に恋人ができたらむかつくのよ」


 と、顔をぷいっと背けて、言った。


     @


【磯峰美那視点】


 司と同じバスに乗って同じ帰路を歩き、バス停から家までの道を司と隣合って歩く。ニュータウン、というには少しばかり築年数が経ち過ぎている、とっくに建築ムーブが終わった住宅街に入り少し歩くと、司の家があってそこで美那は別れる。

 

 司が見えなくなるまで手を振り、美那は()()()()()()()()()()()()()()()()()のだった。そう、二人は家が()()()()の幼馴染なのだから、何もおかしいことはない。


 時刻は17時58分。夕ご飯は父親が帰宅する18時30分なのでリビングに行くには少し早い。これでも一応乙女な美那はシャワーに入ることにした。


 暖かいシャワーを浴びながら、美那はふと思いだした。


(学園恋仲の続き見なきゃ……)


 学園恋仲は今話題のテレビドラマで、SNSでの良い評判が主に女子高生の視聴者を呼び、毎週トレンド入りするほどの人気を誇る。


 美那もこれでも女子高生なので話題作りには気を遣っているのだが、少しばかり視聴する気が進まない事情がある。


 それは前回の内容――幼馴染ヒロインが主人公に告白したものの、「俺には好きな人がいるんだ」と見事に玉砕したものだ。


 これが自分にも当てはまってしまうのではないかと、美那はまるで他人事だとは思えなかった。


 ふぅ、とため息を吐く。


(……告白しないうちに、司のやつ取られちゃわないよね…………)


 今までの彼に女の気配なんて全くなかったし、ぶっちゃけ滝尾なつみという今時珍しいヤンキーと接触したのも女にカウントすべきではないのだろう。


 しかして、万が一ということもある


(アピール、もっと強めなきゃだよね)


 髪の毛の一本一本まで丁寧にお湯で流しながら美那はそう、軽く決意する。


 ――磯峰美那。ずっと昔から天森司が好きだが、告白するのが怖くて高校一年生十五歳になってしまった女である。


     @


 そんなこんなで滝尾さんに無理やり(?)美術室に連れられてゲームをしてから数日間経ったのだが、まったくもって彼女とは関わりのない日々が続いている。


 放課後になった。ホームルームで担任が諸注意やお知らせを言った後、椅子が床と擦れる音がいっせいに鳴り響く。


 僕もそれに倣って席を立ち上がる。今日は早く帰らなければならない。なぜなら、アプリサンダムの新イベントが始まるからだ。今回のイベントはリアル参加型で各地に散りばめられた中ボスをローカル通信で協力対戦する、いわばレイド戦だ。


 最近はまたサンダム熱が出てきている。今からやりたくてそわそわしている……。


「あだっ!」


 後頭部にまあまあ強い衝撃。なんなんだ一体。困惑しつつ、発生源と思われる後ろを振り返る。


「よお」


 ボストンバックを持った滝尾さんが立っていた。


「た、滝尾さん?」


 突然のことだったので、驚いて噛んでしまう。


「どうしたんですか?」


「……」


 なぜだか頬を赤らめて、太ももあたりをモジモジさせる滝尾さん。乙女らしい反応だが、そうされる理由が思い当たらないので、男としては全然嬉しくない。そもそもこんな反応、あのヤンキーの滝尾さんらしくないし。


 しばらく待ってみても、滝尾さんはモジモジしたままで言葉を発しない。


 次第にクラスの視線が集まる。滝尾さんはそんな視線が見えていないくらい集中しているのか、相変わらずもじもじしたままで。


 なんだこれ。奇異の視線が集まって、潜伏系陰キャにはしんどいぞ。


 ぷるぷると震え出した滝尾さんは僕の手首をバッと掴む。


「ここじゃ言えねぇ、来い!」


 痛い痛い! 強い力で引っ張られて、千鳥足みたいになりながら教室から連れ出される。


 連れてこられたのは階段の下にある謎スペース(階段が頭上にあり、結構狭い二畳ほどの場所)だ。


「えーっと。滝尾さん?」


 滝尾さんは何かを言いかけて、しかしやめて、また言い出そうとして、を繰り返す。


 どうしよう。すごく、やりづらい。


 滝尾さん怖いし、この場を切り抜けられる気がしないぞ。


「……ゆうえんち」


「あの、声小さくて聞こえない……」


 滝尾さんは目をカッと開き、僕の胸ぐらに掴み掛からんばかりの勢いでこう捲し立てた。


「アタシと遊園地行かないとぶち殺すぞコラぁ!」


「……」


 僕は驚いてしまって、声が出なかった。


逆ギレ!?


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