クラリッサの過去編「夢に落ちた騎士」 【クラリッサ:幼き日の秘密】
クラリッサの過去編「夢に落ちた騎士」
【クラリッサ:幼き日の秘密】
クラリッサはまだ見習いの騎士だったころから――
夜になると、決まって“夢”を見ていた。
その夢の中には、見たこともない風景。
そして、ひとりの少女がいた。
柔らかな黒髪、優しい瞳、くるくると変わる表情。
そして、ほんのりと大人びた雰囲気をまとった、けれどもどこか不器用な、そんな女の子。
何も知らないはずなのに、不思議なほど親しみを感じた。
クラリッサは、何度も何度もその子の夢を見た。
季節が変わっても、騎士として昇格しても――
夜になれば、彼女は夢の中に現れ、楽しげに語りかけてきた。
「今日も頑張ったね。えらい、クラリッサさん」
「そんな怖い顔しないで、もっと笑って?」
名前も知らない“彼女”の声が、クラリッサの心の奥に刻まれていった。
そしてある夜、その夢が変化する。
――『もうすぐ、そっちに行くね』
少女がそう言って、手を伸ばしてきた。
目が覚めたクラリッサは、はっきりと理解した。
「……あの子が、来る」
「この世界に――転移してくる」
それは、予知のような夢だった。
否――誰かの意志が流れ込んできた、神託のような感覚。
クラリッサはそれを信じた。
そして、夢の中でずっと見ていたあの少女に、
もう一度会える日を、胸の奥で待ち望んでいた。
【現在:運命の出会い】
夢音がこの世界に転移してきたあの日――
クラリッサは迷うことなく、彼女を探しに向かった。
そして草原で倒れていた夢音を見つけたとき――
「……やっと、会えたわね」
小さく、誰にも聞こえない声でそう呟いた。
もちろん、夢音にはそれが初対面。
でもクラリッサにとっては、何十回も会ってきた、大切な存在だった。
夢音「……あの、助けてくださってありがとうございます!」
クラリッサ「ふふ。可愛い名前ね、夢音ちゃん」
(……やっぱり、夢と同じ。可愛い)
彼女の中で積み重なっていた「恋」が、
現実となって目の前にやってきたのだった。
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