最終話 「風と森と剣の伝説」
最終話
「風と森と剣の伝説」
今では語り継がれている、三人の若者と三体の精霊の物語。
それは、遥か昔の世界に起きた奇跡のような日々の記憶。
風をまとう少女の名は――イリス。
夢音とクラリッサ、ふたりの運命が交わって生まれた命。
彼女はいつも空を見上げ、未来を信じていた。
共に寄り添う精霊は、想いを結ぶ風となり、イリスを守り、導いた。
森に愛された少女の名は――アリシア。
ティーパイとジイカの間に生まれた、聡明で優しい姉。
彼女の言葉には静かな強さがあり、微笑みは木々を芽吹かせた。
精霊は、そんな彼女を母のように包み、命のぬくもりと癒しを与えた。
そして、鋼の意思を宿す少年の名は――セイル。
アリシアの双子の弟。誰よりも姉を想い、友を信じ、己の誓いに忠実であろうとした。
精霊は、彼の心に宿る剣となり、幾多の困難を共に斬り拓いた。
三人はともに笑い、ともに傷つき、支え合いながら、世界を救った。
争いを鎮め、精霊と人との新たな時代の扉を開いた。
やがて時は流れ――
風がそよぐ草原に立つ石碑には、静かにこう刻まれている。
> 「風が吹くたび、あなたの想いは届くでしょう。
森が揺れるたび、あなたの声は息づくでしょう。
剣が掲げられるたび、あなたの勇気は甦るでしょう。
これは、イリス、アリシア、セイル――
そしてミュレナ、フィリュア、ゼオル。
六つの魂が紡いだ、
永遠の伝説。」
彼らの名を知る者は少なくなった今も、
風は森を揺らし、剣は静かに眠る。
けれど、伝説は確かにこの世界に生き続けている。
未来を信じた、あの三人と三体の精霊のように――。