【ママ、なんか……すごい】
【ママ、なんか……すごい】
夕暮れ時、森の家の広間。
イリスは今日も本を抱え、夢音のもとへ駆け寄った。
「ママ~、さっき読んでた本のここ、意味がちょっと難しくて……えっ?」
夢音がゆったりと椅子に座って紅茶を飲んでいる姿に、イリスは目を丸くした。
「……あれ、ママ。なんか……お、お胸……」
ピクッと夢音の手が止まる。
「あ、ああ……うん、その、ちょっと前に……ギフトの副作用でね……」
「え、もしかして……私の?」
「うん……」
イリスはきょとんとした顔で、そしてすぐに顔を赤くした。
「……えっ、じゃあ……もしかして……私の“あれ”が、ママに?」
「そ、そう……なの……よ……」
夢音も顔を赤くして、視線をそらす。
イリスはしばらく夢音をまじまじと見て――ふっと吹き出した。
「……似合ってる、かも。ちょっと“お色気ママ”っぽい」
「ちょ、ちょっとー! イリス!?」
イリスはお腹を抱えて笑いながらも、少し目を潤ませて、そっと夢音の手を握った。
「……ありがとう。ママが、私のこと、そんなに想ってくれてたんだなって思って」
夢音も、握られた手を優しく握り返した。
「イリス……。あなたが悩んでたこと、気づいてあげられなかったかもしれないけど……私は、あなたがどんな姿でも、大好きよ。ずっと」
「私も、ママみたいな優しくて強い人になりたいなぁ……。え、でも、今のママ……ちょっと“凄み”もある」
「こら~!」
2人は顔を見合わせ、くすくすと笑った。
――外ではアリシアとセイルの声が響き、家族の穏やかな時間が流れていく。