第10章『たとえ記憶が消えても――』
第○章『たとえ記憶が消えても――』
廃墟の神殿跡。
すべてが終わった後、そこに残されたのは静けさと……儚い余韻だった。
夢音(幼女ver.):「……やっ、た……倒した……あたし……!」
ボロボロになりながらも、夢音は笑った。
小さな拳をぎゅっと握りしめ、倒れた《記録喰らい》を見つめる。
だが――
ちっパイ:「……ねえ、夢音……クラリッサが……」
夢音:「……っ!? クラリッサ……クラリッサ!!」
クラリッサは無事だった。だが、夢音の顔を見ると――
クラリッサ:「……どなた、ですか?」
夢音:「……えっ……」
クラリッサ:「あなた……その、可愛らしいお姿の……どなたかしら。私……記憶が、曖昧で……」
──《記録喰らい》が、最後の瞬間に放った“記録断ち”。
夢音を庇って、クラリッサの「夢音に関する記憶」が、綺麗に抜け落ちていた。
ちっパイ:「……あんた……夢音のこと、大好きだったじゃない……なのに、忘れちゃうなんて……そんなの、ズルいよ……」
夢音(幼女):「……そっか……あたし、もう……クラリッサの記憶に、いないんだ……」
その瞬間――
ぽろり、と。
夢音の大きな瞳から、涙が一粒落ちた。
そして。
夢音:「……あたしは……! あたしは……クラリッサが、好きなんだよ……!!」
その小さな体がふらふらとクラリッサに近づく。
クラリッサ:「……あなたは……」
夢音:「――忘れてても、かまわない……でも、もう一度だけ……あたしの“気持ち”、伝えさせて……」
小さな唇が、そっとクラリッサの頬に触れた。
──その瞬間、世界が反転する。
【スキル《ラブ・リバースキス》発動】
「両想いだった相手との“口づけ”で、過去の記憶と想いを巻き戻す」
クラリッサ:「……あ……あなたは……夢音……?」
夢音(幼女):「クラリッサ……!」
クラリッサの目に、ぽろぽろと涙が浮かぶ。
クラリッサ:「私……あなたを……ずっと夢に見て……好きだったの……」
夢音(幼女):「……あたしも……ずっと、会いたかった……!」
──抱きしめ合う二人。
記憶も、心も、ふたたび繋がる。
ちっパイ:「……うぅぅ……なにこの尊すぎる現場……やってらんない……!」
ジイカ:「また性別変わるんじゃ……って、いや、それより今は……」
クラリッサ:「夢音……大きくなったら、またキスしても……いい?」
夢音:「……うん! でも、大人になったら……今度は、男になるけど、いい?」
クラリッサ:「どっちでも、あなたが好きよ」
──二人の絆は、記憶すら超えて、永遠を刻んだ。