告白編「夢じゃない、あなたへ」
告白編「夢じゃない、あなたへ」
森の中――夜の任務帰り。
星が静かに瞬く空の下。
夢音とクラリッサはふたりきりだった。
クラリッサのいつも通りの凛とした姿。
けれど、どこかぎこちない沈黙が流れていた。
夢音「クラリッサさん、さっきから静かですね。……怒ってます?」
クラリッサ「……怒ってないわ」
夢音「うそ。ちょっと拗ねてますよね」
クラリッサ「……拗ねてなどいないわ」
夢音(うん、完全に拗ねてる)
任務中、ちっパイとジイカがまた乱入し、散々振り回された。
当然クラリッサは“ふたりきりの時間”を邪魔され、不機嫌気味。
夢音は苦笑しつつ、ぽつりと言った。
夢音「……でも、私、嬉しかったんですよ?
クラリッサさんが隣にいてくれて。すごく、安心しました」
その一言で――クラリッサの肩が、ピクリと揺れた。
そして、ゆっくりとこちらに向き直る。
クラリッサ「……夢音ちゃん」
少し、震えた声だった。
珍しく感情をうまく抑えきれていないようだった。
クラリッサ「あなたに、話さなければならないことがあるの」
夢音「え?」
クラリッサ「私は……あなたに会う前から、ずっと……あなたを知っていたの」
夢音「……?」
クラリッサ「夢に出てきたの。何度も、何度も。
あなたがこの世界に来る前から……あなたのことを、夢で見ていた」
夢音「……まさか」
クラリッサ「最初は偶然かと思った。でも、違った。
あなたの言葉も、笑顔も、泣きそうな顔も、私は全部――夢の中で見ていたのよ」
夢音は絶句した。
それは自分自身も知らなかった“誰かの夢の中の自分”。
クラリッサは続ける。
クラリッサ「あなたがこの世界に来るとわかったとき……怖かったの。
夢で見ていたあなたと、違っていたらどうしようって」
「でも……あなたは、夢のままだった」
――優しくて、ちょっと天然で、でも真っ直ぐで。
“夢に出てきた”あの人と、同じ笑顔で笑ってくれた。
クラリッサ「好きよ、夢音ちゃん」
「最初からずっと、あなたのことが好きだった」
星の下で、静かに想いが告げられた。
夢音「……私、夢の中の私に……そんな風に思ってもらってたんですね」
「ありがとう、クラリッサさん。すごく、すごく嬉しいです」
夢音の頬も、ほんのり赤く染まっていた。
ふたりの距離が、ふと近づいた。
手が触れそうなほど。
クラリッサ「……もう一つ、お願いがあるの」
夢音「……なんですか?」
クラリッサ「夢じゃなくて、現実のあなたに……」
「キス、してもいいかしら?」