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14.気味の悪い自称王城騎士がいるので

「シャーロット様。そろそろ限界のようです」


 伝達係のメイドの言葉に頷く。時間にして一時間弱、かなり持たせてくれた。

 

「わかったわ。そろそろ中へ」


 メイドにそう伝え、サラとパトリシアのほうを向く。


「サラ、ここで護衛騎士たちへの指示ををお願い。パトリシアは私と来て。弓矢は置いていってね」

「わかった。騎士と同じものに変えるわ」

「……使うことがないといいのだけれど」


「シャーロット、あなたが出るのね」

「えぇ、もちろん」


 サラの心配そうな顔を私は笑顔で返す。

 兄の留守を狙ったのだ。おそらく兄たちが帰ってこない原因も彼らが知っているのだろう。


「デイヴィット様がいなければ何とかなると思っているのかしら」

「さぁ、与しやすいとでも思っているのかもね」


 私の言葉に、部屋にいる全員がきょとんと気の抜けた顔になる。

 パトリシアが一番最初に噴き出して、サラ、メイド長と続いた。


「シャーロットを相手にするほうが何倍も厄介じゃない」

「ダメ王子を今までそれなりに見せてたのは誰だと思ってるのよ」

 

 パトリシアとサラの言葉に耐え切れなくなった執事長と騎士数名が変な声をあげた。

 この状況でこんな和やかな雰囲気になるとは、王子の無能が役に立った。まぁ、この状況を生み抱いているのも王子の無能かもしれないが。


「私の厄介さ、見せてあげるとするわ」


 ********


「お待たせいたしました」


 自称王城騎士を押し込んだのは、入り口付近の一室。護衛騎士の詰め所になってたところだ。

 それをなんとか応接室風に整えてもらった。彼らの尽力のおかげで古い調度品たちは自称王城騎士を迎えるにふさわしいものとなった。


「えぇ、雨風のなか、ずいぶん外で待たされました。これが、ラクシフォリア家の歓迎の方法ですかな?」


 随分と偉そうな恰幅のいい男が、用意したタオルで顔を拭いている。どうやら、王城騎士設定は貫くらしい。

 それならまだやりようはありそうだ。


「それは申し訳ありませんでした。温かい飲み物もご用意いたしましたのでどうぞ」


 武装を解いた自称王城騎士たちは、お茶を出すと水かなにかのように一気に飲み干した。

 確かに飲みやすいちょうどいい温度で出したが、そんなにのどが渇いていたのだろうか。お代わりを注ぐとまた数名はまた飲み干した。


「確認したい事というのは?」


 私が促すと、偉そうな男がにやにやと意地汚い笑顔を向けてきた。


「いやね? 情報があったんですよ」

「情報?」

「えぇ、ラクシフォリア伯爵がトリトニアに国家機密を流してるっていうね」

「これはスパイ行為ですよ」

「国家反逆罪に問われます」

 

 何をでっちあげているのかわからないが、とりあえず驚いた顔を作る。

 意地汚い笑顔が自称王城騎士に伝播していく。全員がにやにやと笑っているとさすがに気持ちが悪い。


「ですので、伯爵の執務室を(あらた)めさせていただきたい」

「兄の執務室、ですか」

「えぇ、追加の証拠が出てくると思います」


 おそらく、執務室にトリトニアやパラディオの機密情報でもあると思っているのだろうが、あの部屋に重要なものは何もない。

 あの部屋を見せてしまっても問題ないが、もう少し時間を稼ぎたい。


「……兄がやったと言う証拠が、もうあるのですね」

「はい、それがなにか、というのは言えませんが」


 男の顔に張り付いた笑顔がだんだん気味の悪いものに見えてくる。


「わかりました。ご案内いたしましょう」

 

 男たちは満足そうに頷いた。

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