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妹が狙われているので Side:David

「レイ。どう思う」


 早馬からの連絡を受け、すぐに帰ろうとした。ルーク殿下も事前に何かあったら帰ることを承諾していたし、グレンは最初から義理を果たしたのだからいつ帰っても大丈夫だと耳打ちしてきていた。

 ただ、一つ気になることがあり、早馬には少し遅くなると伝え、馬車に乗り込んだ。

 これがなければ、早馬を奪ってでも帰りたかった。


「どう思う、と言われても。見ての通りだ。囲まれてる。予想通りだな」


 馬車が人気のない道を通るタイミングがある。その時、武装、とまではいかないが武器を持ったゴロツキのような男たちが大勢馬車を取り囲んだのだ。

 工房の中に入るとき見物人のなかに怪しい人間が複数混ざっていたのが気になっていたが、やはり当たりだったらしい。先ほど見た顔がちらほらいる。

 

「こちらは足止めが目的のようだね」


 彼らはこちらに圧をかけながら、決定的には動かない。その様子を見てそう判断する。

 いかんせん人数が多いのが問題だ。

 護衛騎士の人数を鑑みても、強行突破すれば被害は免れない。そして、彼らが去るのを待てば、ことが終わった後だろう。


「レイ、頼みがあるんだ」


 私がそう言うと、何を言われるかを察したレイは首を横に振る。


「……やめたほうがいい」

「聞いてから判断してくれ」

「聞かなくてもわかるから言っているんだ。オレにここを抜け出して先に行けって言いたいんだろ」

「……ご名答」


 おそらく、目的は私を屋敷に帰らせない事。レイなら戦闘が始まれば隙をついて逃げることが可能だろう。


「危険だと思う。だが、レイにしか頼めないんだ」

「いや、やめたほうがいい」

「私が抜け出すよりもリスクは低い。わかるだろ?」

「……やめたほうがいい」


 全く折れる気配のないレイに私はさらに言葉を重ねる。


「ここに私を足止めしていると言うことは屋敷にいるシャルが目的だ。頼む」

「わかっている。しかし……このまま強行突破したほうがいい。どうせオレが抜けるときに戦闘になるんだ」


「あぁ、最終的には強行突破だ。けれど、時間がかかる。今は、一刻も早く誰かが屋敷に行かないといけない。……シャーロットを頼む」


 レイの瞳が揺れる。考えた時間は数秒。レイはすぐに覚悟が決まったようだった。


「わかった」


 返事を聞いて、外にいた騎士たちへ指示を出す。

 数分後、馬車を無理やり動かし始めたことで戦闘が始まった。


 レイは馬車の後方から脱出する。統率のない金で雇われた統率のないゴロツキの集まりだったようで、戦闘から逃げ出すものも少なくなかった。

 うまく紛れ込んだようだ。


 走り去っていくレイの後姿を見届けて、一つ安心する。

 シャルを頼んだのだ。レイは何とかするだろう。

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