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9.親友がいるので

「第二王子と婚約って聞いた時はどうなるかと思ったけれど……」

「それよりも私はあの舞踏会、どうしてやろうかと思ったわ」


 心配したと顔に書いてある二人を見て申し訳なくなる。

 

「二人とも心配させてごめんね」


 謝罪を口にすると、二人とも大きく首を横に振る。


「シャーロットが無事でよかった」

「本当に。あの後はイアン殿下になにもされてないかしら?」

「えぇ、直接は何もされてないわ」

 屋敷前で頭を下げ続けているけど、そこまでは言えずあいまいに笑う。

 テーブルを囲んで座るパトリシアとサラそして私。二人とも初等学院からずっと一緒の友人である。


「ならいいけど……何かあったら相談するのよ」

「えぇ」

「絶対だからね」

 サラの笑顔の圧におされ、何度も頷く。彼女はかなり心配性だ。初等学院時代は彼女の心配性ゆえの先回りした予測、行動にかなり助けられた。


「そろそろ食べましょ? 最近街で人気のお菓子を揃えたのよ」

 

 パトリシアの言葉に私たちの意識はテーブルの色とりどりのスイーツに向く。

 サラに誘われ、彼女の住むレスター侯爵家を訪れると、いつも以上に華やかなお茶会が用意されていたのだ。

 商家の家で育ち、流行に敏感なパトリシアが全面協力のもと集められたお菓子たちはかわいらしく、目でも楽しい物ばかりだ。


「そう言えば、デイヴィット様は社交界でおしとやかにするのはやめたの?」


 パトリシアが美しいレース模様の描かれたクッキーをつまみながら聞いてきた。顔が引きつるのが分かる。


「噂になってる?」

「えぇ、菖蒲様が妹のために激怒したとか、怒った姿は凛々しい、菖蒲様の新たな一面って令嬢方に大評判」

「わぁ……」


 社交界の花々は幻滅するどころか、喜んでいたのか。頭を抱えそうになる。

 

「あの時のデイヴィット様はいい働きをしていたわ」


 サラは少し不満そうに何度か頷く。なぜか兄とサラは会うたびに衝突するほどに仲が悪い。

 何が二人を喧嘩させているのかわからないが、いつもなにかしら言い争いをする兄とサラを呆れたように見るパトリシアと困っている私、というのがラクシフォリアの屋敷で集まった時の定番になっている。


「あら、サラが認めるほどなのね」


 パトリシアが目を丸くする。彼女はあの舞踏会にはいなかったのだ。


「えぇ、今までの、社交界のことは全てお任せするみたいなふざけた態度はなかったわ」


「あら、あら」


 パトリシアの訳知り顔とサラの不満そうな表情ででる満足げな声に私は困惑する。


「今度会ったらちゃんとお話させていただくわね」


 サラはニッコリと私に笑いかけた。

 また兄と喧嘩するのか、そう思っていると、パトリシアが私の耳元でそっと『Sを守る会の会合だから大丈夫』と囁いた。


 あの2人には共通の守るべきものがあるらしい。

 

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