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約束のギンガムチェック

(……おかしいなぁ)


在校生席から入学式を見守る波留は、新入生の中に飛鳥がいないことに戸惑っていた。

合格したときもあんなに喜んでいたのに、まさか入学を辞退したなんてことはないだろう。

(名前は呼ばれていたのだから、在籍はしてるはずだし・・・保健室かな?あとで紫子さんに聞きに行こうかなぁ……教えてくれるかな)

入学式が終わると、教師たちの間を縫って必死に紫子を探した。

在校生にあれこれと指示を出しながら入学式の後かたずけをする彼女を必死に捕まえて飛鳥のことを聞く。

入学式に出られなかった生徒はいないかと。


「そうね…一人、式の前に具合が悪くなって保健室に行った新入生がいるというのは聞いたわ。ギリギリだったからお名前までは聞けなかったのだけど、その子かしら」


やはり保健室にいたらしい。式が始まる前に貧血を起こすなんて飛鳥らしい。

出会った頃を思い出しながら、波留は保健室へと向かった。




――― 一年半前、実家の犬と一緒に公園に散歩にでかけた波留は、木陰で休む飛鳥と飛鳥の犬に出会った。

すぐに仲良くなった二人は、毎日のように公園で会い、飛鳥が持ってきたサンドイッチを木陰で一緒に食べたり、波留の家で料理をした。

せっかくオムライスを作ったのに、卵がうまく乗らなくて飛鳥に笑われてしまった事が昨日のようだ。

四月から聖クレール女学院へ入学し、今までみたいに会えなくなることを伝えると、飛鳥は目に涙を溜めながら波留に答えた。


「絶対、私も聖クレール女学院に入ります。」

「でも、飛鳥ちゃんのお父様は許してくれないんじゃない?」

「これ、約束です。持っていてください」

渡されたギンガムチェックのリボンを大事に包み込んだ。


それから長期休暇の度に、実家に戻っては飛鳥と遊んだ。

最初は反対していた飛鳥の両親も、今まで我侭を言ったことのない飛鳥が熱心に頼む姿に負けてしまったみたいだ。


飛鳥の合格を電話で聞いたときは飛び上がって喜んだ。

なのに入学式から保健室とは・・・





「失礼します」

ノックして保健室にはいると、蒼衣はいつものように珈琲を飲んでいた。

飛鳥のことをたずねると蒼衣は少し驚いた顔をしてカーテンの引かれたベッドを指差した。

「飛鳥ちゃん・・・?」

控えめにカーテンの中にはいるとまだ眠っている飛鳥の髪をそっと撫でた。



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