プロローグ
さぁ、学園の様子を、少しご覧にいれましょう。
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「ごきげんよう」
「いよいよ今日ですね」
「早くお会いしたいわ」
入学式 当日の朝
理事長代行として祝辞を述べる紫子は祝辞の見直しに余念がない。
「なぁ紫子さん、今年の新入生も可愛いお嬢さん、多いやろか?」
蒼衣が紫子の前に珈琲を置きながら声をかける。
「蒼衣さん、私がブラック珈琲を飲まないこと、ご存知でしょう?それに新入生、端から保健室にお呼び出しなんてなさらないでちょうだいね。」
「ほら、お可愛い紫子さんにはミルクいれたげるわ。」
ため息をつきながら答えると、言い終わる前に笑いながら蒼衣が珈琲にミルクを注ぐ。
(また子供扱い……)
在学中は同室だった蒼衣はいつもそうやってからかうのだ。
わかっているくせに彼女の城である保健室に来る紫子も悪いのだが、居心地がいいのだから仕方ない。
今年の新入生は、どんな学園生活を送ってくれるのだろうか。
どのお嬢さんと、姉妹になるのだろうか・・・
ミルクの入った珈琲を飲みながら少し考えて、また祝辞の見直しをしはじめた。
<<入学式>>
「ごきげんよう、新入生の皆様。聖クレール女学院へようこそおいでくださいました。
―――最後になりましたが、これまで皆さんを育ててくださった保護者の方々と、お忙しい中ご臨席を賜りましたご来賓の皆様とともに、本日の喜びをわかちあい、式辞とさせていただきます。」
理事長代行の紫子より祝辞が述べられると、
式は順調に進行していき、新入生代表挨拶になると会場からは思わずため息がもれた。
「今年の新入生代表は満点だったそうよ。」
「ずいぶん綺麗な方ね。どちらのご令嬢なの?」
囁かれる声を振り切って佳代子はしっかりとした声で代表挨拶を始める。
「やわらかな風が吹き、太陽の光が満ちあふれ、生命が生き生きと活動を始める春、今日、私たち新入生は聖クレール女学院の入学式を迎え、本校の学生の仲間入りをすることになりました。
――今から、慣れないことだらけですが、新入生一同精一杯頑張りますので、諸先生方、上級生のお姉様方。どうぞよろしくお願いします。」
紫子は代表挨拶を受け取りながら小さく「頑張ってね」と呟くと
緊張していた佳代子が静かに微笑んだ。