第1話
「……ふぅ」
銀が一筋の光を描く。
「まったく、いい加減にしてくれないかな」
その銀は、1人の少女の手に持つ剣から放たれていた。
ーーーテッテレー、レベルアップ!!
どこからか、軽快な音楽がなる。
少女はうんざりした表情で、ポケットに手を入れる。
取り出したのはスマートフォンで、少女は画面に表示されたメッセージをちらりと一瞥した。
が、すぐに画面に目を戻すと、なにやら操作をし出す。
白く滑らかな指が、スマートフォンの画面を滑るように動く。
何ヶ所かいじり終わると、 少女はスマホをやや乱雑にポケットに押し込みながら、一言なにかを呟いた。
すると、少女が手に持っていた剣が光の粒子となって消えた。
「はぁ」
夜の、郊外にある河川敷。
その場にいるのは、年端も行かない少女がひとり。
「…………早く戻ろ」
ぱさりとパーカーについたフードを目深にかぶり、少女はその場を後にした。
(もう戦いなんて懲り懲りなんだけどなぁ。しかもこの時代はあのころと違って、戦いとは程遠いのに!!すくなくともこの国は!!!)
そんな少女の名前は、貴志白亜。
「終わりましたか。王よ」
そんな白亜の前に音もなく現れたのは、黒いズボンに白いシャツを来た、すらりとした細身の男性。
「終わった。けど今の私はアーサーじゃないんだから「王」なんて呼ばないで、忠哉ーーーううん、ランスロット」
「失礼しました、白亜」
言いながら、すっと男性は白亜に一礼した。
時は、3ヶ月前に遡る。
そのさらに少し前に、白亜の両親は他界した。
白亜の両親はそれなりの資産家であり、そのおかげで彼女の家は一般的に『富裕層』と呼ばれる家庭だった。
そのため、亡くなった彼女の両親の遺産を目当てに、白亜を引き取ろうとする親戚がいた。
しかし、弁護士に預けられていた遺言により、遺産の全ては白亜に相続させることが決まった途端、親戚たちは手のひらをひっくり返した。
「子供一人が大人の助けなく生きていけるわけが無い」
親戚のひとりが言ったその一言。
そのたった一言が、白亜の闘争心に火をつけた。
確かに世間からみたら20歳になったばかりの子供だけれど、法律上・社会的には大人だ。
弁護士と相談し、1人でも生きていけるよう準備をした。
そして、白亜は両親と共に住んでいた家に今はひとりで住んでおりそれ以外は何も変わらずいつも通り大学に通っていた。
そんな、とある日。
いつものように、白亜は大学から帰宅のために電車を待っていた。
瞬間、ずきっと頭が痛むのを感じ、そっと米神を抑えた。
(っつー……偏頭痛かなぁ)
思いながら、ふと顔を上げた先には、反対方向への電車のプラットホーム。
白亜の目の前には、そのプラットホームと改札口を行き来するための階段があった。
そして、その階段から1人の男性が降りてきた。
ぱちりと、目が合う。
「ーーー!」
瞬間、無理やり頭に『何か』が押し込まれた。
『ーーーーーに、不義……』
『………………であり、…………』
『王………………により、…………』
『…………どう…………!』
目まぐるしく、くるくると切り替わる場面。
知らない男性たち。
みな甲冑のようなものを着込み、手には剣を持って。
白く輝く城から、よく外をみた。
朝日に照らされた地平線
夕日に照らされた町
そして、月を映した湖
そのどれもが、美しかった。
そして、誇らしかった。
『王よ、お風邪をひかれます』
『大丈夫だ。まだーーーもう少し、この景色を見ていたいんだ』
そうして景色を見ていると、決まって1人の男がやって来た。
『まったく、あなたという人は……』
苦笑まじりに、彼は呆れたように呟いたけど。
『君もどうだい?ここから見るキャメロットはいい眺めだよ?』
『もう何度もその言葉は聞いております』
『……ねえ、 』
『はい』
『私は、民を守りたい。だから聖剣を抜き、騎士となり、仲間を募り、王となった』
『存じております』
仲間の中で、誰よりも正義と武勇に熱い者。
『だから、これからも私に力を貸してほしい』
「ラン、スロット…………?」
そう、はるか昔、中世ヨーロッパ。
あのころは、「私」はブリテンを収める王だった。
仲間を集めて、国を作り、領民を守らんと、その仲間たちと日々研鑽をつんだ。
その仲間たちは、現代では円卓の騎士と呼ばれ。
目の前の彼は、その1人に違いなかった。
...to be continued
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