番外編~ここまでのあらすじ
舞台設定を整えるまでに、ずいぶんかかってしまったので、ここらで総集編を。
極端な言い方をすると、実はこの一遍を読めば物語の「序」は理解できてしまいます。
妾は龍! 空の王者である!
下賤な人間どもよ、頭を垂れてよく聞くがよい!
妾こそ、この物語の主人公である!
四枚の翼を持つ巨大な龍として、妾は下僕の不死者を従え、この世界を平和に(恐怖で)支配してきた!
じゃが、ルーダリアというケチな王国の王子と賢者が、古代魔法を遺跡より発掘し、妾を滅ぼそうと企てた!
千里眼の特技を持つ、ファルトという不死者からこの報告を受け、賢明な妾はルーダリアの王都に攻め入った!
妾の無双の活躍により、王都は陥落寸前となったが、王子と賢者の卑劣な罠にかかり、妾は今の姿にされてしまった! すなわち、このちんちくりんの人間の子供にされてしまったのじゃ!
賢者めの話では、古代魔法とやらは、敵を精神年齢そのまんまの人間の姿に変えて、能力も見た目どおりに変えてしまうとか、なんとか……
(龍は、小さすぎる自分の背丈と、あまりにも平たい胸をしばし眺め、ため息をつく)
ともかく、空も飛べず炎の息も使えなくなった妾を、邪悪なルーダリアの民は嬲り殺そうとした。しかし妾は屈服せず、何度殺されても蘇ることができた! 古代魔法で力は封印できても、不死身の命は封印できなかったというわけじゃ!
そこで賢者は小賢しくも一計を案じ、妾を「奈落」に突き落として滅ぼすことを考えた。「奈落」とは、かつて、創造神と敵対した魔王が突き落とされたという、地獄に通じる巨大な穴じゃ。
空の王者たる妾をそんな目に遭わせようとは、まったく、恐れを知らぬ所業じゃ。人でなしじゃ。
彼奴らは、妾を護送馬車に閉じ込め、精鋭の兵士を引き連れて奈落への旅を始めた。
しかし心配はいらぬ。妾には指折りの下僕たちがおる。事実、不死者の女王・パラメシアが、救援に現れた。
パラメシアは人よりも圧倒的に強く、魔法の技にも通じ、たちまち王子と賢者の一行を皆殺しに……するかと思われたが、アルゾという子供の兵士が反撃して、なんとパラメシアは撤退に追い込まれてしまったのじゃ。
このアルゾ、田舎者でやせっぱちでソバカスだらけじゃが弓が得意なことだけがとりえじゃ。パラメシアの奴め、弓矢のような原始的な武器で自分が傷つけられることを想定しておらなかったようじゃの。
とはいえ、パラメシアによって痛めつけられた王子と賢者の一行は、計画を変更する。
護送馬車を七つも用意して、そのすべてに囮の女を乗せる。そうして妾の下僕どもの目を逸らしつつ、本物の妾は、あのアルゾという子供に護送させるのじゃ。そうして街道をバラバラに進みつつ、奈落の手前で合流しようという面倒な計画じゃ。
今、妾は、件のアルゾという子供によって、馬に乗せられて連行されておる。
妾がいかにしてこの苦境を脱し、ルーダリアの民に復讐を果たすのか。
これは次回から先を読めばわかるのじゃ。