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9.



「うおっ…おお!おぉ~~!!!」

「うるさっ。」

久々にプレイするアクションゲームで大騒ぎしていると、真樹に笑われながらツッコまれてしまった。やっぱり俺にゲームは向いていない。今も協力プレイをしているが、俺ばっかりが死んで、真樹との残機の差が凄いことになっていた。


「そこ敵出るよ。」

「え!?うわっ!!も~もっと早く言えよ、また死んだじゃん。」

「信ちゃんヘタクソなんだから…あんま突っ走らない方がいいって。」

「ダッシュしたくなっちゃうんだからしょうがないだろ。」

真樹とプレイすると何だかんだ言いながらもフォローしてくれるから、ヘタクソでも割と楽しい。





しばらくゲームを続けていたが、俺の腹の音で一時中断となった。ついつい食べるのを忘れて熱中してしまっていた。帰りにコンビニで買った弁当を、レンジを借りて温める。


「コーラあるから飲も。持ってきて~。」

「わかった。」

リビングから真樹がそう言うので、冷蔵庫を開けてコーラを取り出し、コップ二つと一緒にリビングまで持っていく。幼稚園から来ているからなのか、真樹は全く俺を客人扱いしない。他人の家の冷蔵庫を開けるなんて普通怒られるが、山崎家では許されている。


「俺は何食べようかな~。」

温めた弁当を取りにまたキッチンに戻ると、真樹も一緒にキッチンに入ってくる。コンビニに行った時、真樹は「どうせ家に何かしらあるから。」と何も買わなかった。キッチンを見渡し、今は炊飯器を開けて中を覗いている。


「あ、米はある。う~ん、準備面倒だし卵かけご飯でいっかな。」

真樹はそう言いながら米を茶碗によそい、卵を冷蔵庫から出す。そして、卵を割るとは思えない勢いで、卵を持った手を振り下ろした。因みに真樹は全く料理が出来ない。

グシャッ


「うわっ!!!」

真樹は平然とご飯の上に卵を落としているが、俺は横で頓狂な声を上げた。卵を割る勢いが強すぎて、叩きつけた場所に白身が結構出ちゃっている。料理が出来ないのは知っていたが、ここまでとは思わなかった。


「お前ロクに卵も割れないのかよ…。」

「え?割れてるじゃん。」

キョトンとした顔をしている真樹の横で、キッチンペーパーを取り出し真樹の零した白身を拭く。


「卵割るときはそんなに勢いとかいらないから。こんくらいでいいから。」

「あぁなるほどね。」

卵を持っているように空気を握り、割っているフリを真樹に見せる。


(卵の割り方教えるとか…何やってんだ俺。)

自分のやっていることに笑いがこみ上げてきた。「いいからもう食べよう。」と話を切り上げ、弁当を持って真樹とリビングに戻る。


「……。」

「あっ。」

食べ始めてから少しして、卵かけご飯だけでは物足りなくなったのだろう。真樹に無言でから揚げを奪われた。





ゲームを再開するために昼食はさっさと済ませ、少し落ち着いているとガチャっと音がした。


「ただいま~。」

ドアが開く音で、二人で玄関の方に顔を向ける。


「うわ…信ちゃん部屋行こ。」

「え、なんで。」

真樹がその声であからさまに嫌そうな顔をして、俺を立ち上がらせようと手を引く。


「あれ?信ちゃんだ。」

だが、俺を立ち上がらせるよりも、相手がリビングに来る方が早くて。三人がリビングに集まった。


勇樹(ゆうき)ぃ~!デカくなったな!」

「そうかなあ~。久しぶりだもんね。」

真樹の三歳下の弟である山崎勇樹が、俺の顔を見て表情を綻ばせる。真樹や美香ちゃんには時々会っていたが、勇樹に会うのは本当に久しぶりだ。相変わらず顔は真樹にそっくりなはずなのに、表情が違うせいか全然似てるように見えない。


「信ちゃん、制服似合うねぇ。俺も今日が入学式だったよ。」

そう言って「ほら。」と両手を広げて、自分の中学の制服である学ランを見せてくれる。

そっくりな顔なのに真樹には無いこのほんわかさ、多分勇樹の周りからはマイナスイオンが出ている。


「信ちゃん、俺の部屋行こって。」

和気あいあいと話していると、勇樹と比べて表情筋が死んでいる男、真樹が不服そうに俺の肩を揺らす。


「俺も信ちゃんと話したいよ~。」

「嫌だよ、お前居るとうるさいんだもん。」

「えぇ~…。」

真樹がそう一刀両断すると、勇樹が明らかにシュンとしてしまう。あまりに残念そうな顔をするものだから、なんか罪悪感が沸いてくる。


「勇樹も俺とゲームやろうよ。」

「!うん、やる!!荷物置いてくるね!」

しぼんでいる勇樹に見かねてそう声を掛ける。するとすぐに表情を明るくして、小走りで自分の部屋に向かって行った。俺は弟妹が居ないから、弟みたいな存在の勇樹を可愛がらずにはいられない。だが、真樹は不満そうだ。


「ちょっと信ちゃーん…。」

ため息交じりに真樹が文句を言ってこようとする。


「まぁいいじゃん。勇樹一人にするの可哀想だろ?」

せっかく同じ家に居るのに、仲間外れにするのは忍びない。俺はそう思ったのだが、


「いや全然。あいつ信ちゃんにベッタリで邪魔なんだもん。」

兄の方は鬼だった。




閲覧ありがとうございます!


卵を割る件は友人との実話です。あんな勢いで卵を割る人は後にも先にも友人しかいないと思ってます。

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