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5.



真樹は相当目立つタイプの人間だ。近くに居過ぎて忘れていたが、その中でもアイツはヤンキー属性だ。二人で遊びに行った時にたまたま真樹の友達と遭遇したこともあったが、今思い返すと全員もれなくヤンチャそうな見た目だった。




「すごい目立ってんな~、今入ってきたやつ。」

「あ、うん…そうだな。」

後ろの青山が俺に耳打ちしてくるが、気の抜けた返事しかできない。目立っているということより、真樹が同じクラスにいることの方が衝撃だった。自分の名前しか確認していなかったから、クラス分けのプリントの時点で真樹がいることに気が付かなかったんだ…。アイツ初日から悪目立ちし過ぎじゃないか?思わず呆れたため息が出てしまう。大方夜中までゲームしてたか漫画でも読んでたんだろう。今も真樹は眠そうに顔をしかめながら、椅子の背もたれに寄りかかっていた。眉間にしわが寄っているせいで不機嫌に見えて、顔面の威圧感が凄い。


「おぉ~山崎、このクラスで一番デカいんじゃないか?俺バスケ部の顧問なんだ、よかったら…」

「結構です。」

岩谷は真樹の威圧を気にする様子もなく、俺にしたように勧誘をするが食い気味で断られてしまっていた。岩谷は「お前もダメか~!」と豪快に笑いながら頭を掻いている。


「身長あるし絶対向いてるのになぁ。なぁ?青木。」

「えっ?はぁ…そうっすね…。」

急に話を俺に振るな。バスケ部勧誘を断った者繋がりなのか、突然岩谷が俺の方を向いて話しかけてくる。確かに真樹は運動神経も悪くない。それなりに活躍しそうだが、本人が入りたくないなら仕方がないだろう。


「えっっ!!!!」

後ろで驚いた声とガタンっと椅子が動く音がする。振り返ると、勢い良く真樹が立ち上がっていた。さっきまで不機嫌そうな顔をしていた男が急に大声を出して立ち上がるものだから、周りの生徒もポカンと口を開けてしまっている。どうやら真樹も俺と同じクラスだと知らなかったようだ。ポカンと俺を見つめて固まっていた。



「山崎~元気になったのはいいが、これから俺が喋るからな~。」

真樹をそう窘めて、岩谷はこれから行われる入学式の説明を始めだす。真樹も周りの視線を感じて渋々席に座るが、さっきの圧のかかった表情とは違い、今度はニヤけていた。



入学式はお決まりの校長の長話、学校の説明、部活の説明とか眠くなってしまうものばかりだった。教室に戻ってきた時点でもうほとんど内容は覚えていない。教室に戻ってきてからは軽く学校生活の話を岩谷からされ、初日なこともありもう帰宅だった。


「信ちゃん!!同じクラスだったの!?凄い偶然ってかもう運命じゃん!」

帰宅の号令を掛けられてすぐ、真樹が俺の席まで駆け寄ってくる。俺がまだ配付されたプリントを片付けていたから、真樹はそれを待つようにその場にしゃがんで俺の顔を見上げる。


「お前もプリント見てなかったのかよ…俺の名前G組の最初に書いてあったろ。」

「俺遅刻したから貰ってない!職員室行って教室聞いてきたんだ。」

「あぁ…なるほど。」

そんな話をしていると、トントンと背中に何かが触れた。その違和感に振り返ると、青山が俺と真樹を興味深そうに見つめていた。


「青木と山崎って知り合い?」

「あ、うん。幼馴染なんだ。」

正面を向いていた体を九十度回し、青木と話しやすい体制にする。


「同じクラスなんて凄いな!」

「それなぁ…、クラスは流石に別れると思ってた。」

青木は弾ける笑顔を向ける。そのあまりの爽やかさに、後光が差している錯覚すら見えてしまう。


「……信ちゃ~ん、誰?」

俺の机に頬杖を付いて、真樹が笑顔で話しかけてくる。笑顔だが、何か目が笑ってない。話に置いてけぼりだったのが嫌だったのか。


「青山翔平!よろしくな。」

「あ、うん。よろしく。」

俺の代わりに青山が喋り出す。真樹の奴、聞いた割に全然興味が無さそうなのは何なんだ…。真樹は「そうなんだー、へー。」と間の抜けた返事しかしないが、青山はそんな様子なんてお構いなしにガツガツ話しかけている。この二人、結構相性は良いのかもしれない。


イケメン同士で喋っているとどうしても目立つらしい。青山と真樹と話したいであろう女子達がチラチラと二人の様子を窺っているのが見えた。多分女子たちの眼中に俺は入っていない。


「あのさぁ、よかったら連絡先交換しない?」

「あっ私も!」

女子がついに俺ら三人の会話に入り込んでくる。話しかけられている相手は俺以外の二人で、俺は蚊帳の外状態だ。真樹と青山と俺のレベルが違い過ぎて悲しくもならない。


「じゃあ俺はそろそろ帰るわ。」

女子に気を利かせて帰ろうとカバンを持って立ち上がり、そう声を掛ける。


「青木君も…」

気を利かせて立ったつもりが逆に気を使わせてしまったようだ。女子たちが、俺にもスマホを手に持って話しかけてくれた。


「え、俺も?うn」

「ごめん俺らもう帰るからー。また今度ね。」

断るのも悪いと思い「うん」と言おうとするも、真樹に遮られてしまった。そのまま真樹は俺の肩に腕を回して、ズカズカと無理やり俺ごと歩かせる。歩きながら振り返ると、真樹の腕越しで青山に女子が群がっているのが見えた。


お久しぶりです~!読んでくださってありがとうございます。

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