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3.

真樹と二人で母さんがいる公園へと向かう。真樹の話によると、どうやら美香ちゃんもいるようだ。公園に着くまでの数分、その間真樹にはさっきと同じような質問を投げかけていた。


「結局俺と同じとこにしてんじゃんか~。」

「いや~たまたまよ?たまたま。」

「どんなたまたま?」

ヘラヘラと笑いながら真樹が話す。俺が先に秋保行くって言ってたしそれはたまたまではないのでは?


「俺の中学から秋保に行くって奴すっごい多くてさ。なかなか決まらなかったし俺もそうしたの。」

「あ~~そうなんだ。なるほどな。」

そう言えば俺に気が付くまでに何人かと喋ってたな。あれ皆真樹と同じ中学の人だったのか。


「それに秋保、俺ん家からも近いしね!」

あぁ、確かにそう言われてみるとそうだった。秋保高校は丁度俺と真樹の家の真ん中あたりに位置している。近いのは大事だよな。マジでたまたまだったらしい。


「幼稚園から初めて同じ学校だな。」

「それな!!やばいよね!信ちゃんと同じ学校とかめっちゃ楽しみなんだけど!」

興奮気味に話す真樹の気持ちも分かる。幼稚園は一緒だったが、学区が違うせいで小学校と中学校は別々だった。それが高校でまた一緒になるなんて本当に凄い偶然だ。幼稚園から学校も別だったのに関係が続いているなんて、結構俺らは仲良しなのかもしれない。



「お~~~い!!どうだった~~?」

ミラーで俺たちが歩いてくるのが見えたのだろう、車から降りて母さんがそう叫ぶ。母さん達が居る所まで、まだ五十メートルくらい離れてるのに叫ばないでくれ。目立つし恥ずかしい。一緒に車から降りた美香ちゃんなんて、母さんの隣で俺たちに向けてスマホを構えている。あれ絶対動画回してるよね?ホントに恥ずかしいからやめてくんない?これでもし落ちてたとしたら普通泣く。


「なんか母さんと美香ちゃん、俺らより盛り上がってね…?」

「ね…。中三の男二人の動画ってキツイね。」

そんな話をしながら、顔を見合わせて笑い合う。そして頭の上で手を組み、母さん達に向かって二人とも大きな丸を作った。俺と真樹の丸で合格したと知り、母さんから「二人ともおめでとー!!」とまた大声が飛んできた。嬉しいけどもうちょっと近くなってから言ってくれませんかね。



ウチの車に真樹と美香ちゃんも乗り、母さんの運転で走り出す。


「母さんは真樹が同じ高校受けるって知ってたの?」

「うん!だから今日私車出すから家まで送るよーって美香ちゃんに連絡したの。ついでにファミレスでも入ろうかって。」

「なんだよ、俺だけ知らなかったんじゃん。」

「俺が秘密にしてって言ったんだよ。驚くかなぁって。」

軽く頬を膨らませて文句を言う俺に、真樹がフォローを入れる。「まぁ、驚いたけど。」と言うと、真樹はしたり顔でこちらを見てくる。それがなんだか腹立たしくて、真樹の頭を軽めにはたいた。



ファミレスに着き、俺はガッツリ定食、真樹はデザート、母さん達はドリンクバーを注文した。ドリンクバーを頼むあたり、長居する気満々だ。


「信ちゃん、面接どうだった?俺自信なかったから受かって良かったよ~マジで。」

「俺わかりませんめっちゃ多用したよ。校風とか聞かれても分からんかった。」

「…え、すごいねそれ。俺より酷い。」

「あんたよくそれであんなに自信満々だったわね…。」

俺は人差し指を立て、指を左右に振りながら「チッチッチッ。」と言う。そう、俺は形式的な面接の対策は何もしていなかった。なんてったって、


「俺は自己アピールに全身全霊を注いだからな!!!」

拳を胸に当てそう宣言する。母さんがバカを見る目をこちらに向けているが気にしない。


「秋保高は面接の後に自己アピールする時間があるんだよ。自己アピールの配点めっちゃ大きいらしいんだ。」

母さんと美香ちゃんに向けて真樹が説明してくれる。秋保の試験は面接の後自己アピールをするのが特徴なのだ。堅苦しい面接練習は苦手だったから、俺は面接練習はせずに自己アピールをどうするか、ずっと考えていた。


「そんで自己アピールでは何言ったの?」

真樹が俺にそう促す。


「めっっっっちゃデカい声で、“御校の剣道部に入って強豪にしてみせます!!!”って言った。」

それを聞いた真樹は「んん…?」と訝しげな顔に変わる。


「あれ?信ちゃん…剣道やった事一回もないよね。」

「ない。」

「あ、だよね。信ちゃん運動できないもんね。」

「いや普通くらいにはできるから。お前よりはできないってだけ。」

中学時代美術部だった割に、運動はできるほうだと思う。そして真樹が言った通り俺は剣道をやっていた過去なんてない。何なら竹刀に触った事すらない。それでも俺が剣道の話題を自己アピールで使ったのは、それが最も“先生受け”すると分かっていたからだ。


「秋保高って運動部すげぇ強いだろ。その中で唯一弱小なのは剣道部だけだ。そこに入って頑張ります!!って言ったら心象良いだろ?俺の自己アピール聞いた面接官、体育教師っぽい見た目してたけど超頷いてた。あと体育教師ってハキハキしてるやつが好きだから、外まで聞こえるくらいデカい声で喋った。」

秋保高校は偏差値こそ低いが、それをカバーできるほどに部活動での活躍が目覚ましい。あの学校では、勉学よりも部活動を頑張ると言った方が合格率は絶対良い。


「あんた…姑息ぅ~。」

「姑息でもなんでも受かりゃいいんだよ。」

母さんにそう言われてしまうが結果が全てなんだ、受かりゃ何でもいい。母さんに反して、真樹は「頭いい!」と言ってくれた。真樹は俺のやる事なす事褒めてくれるからむず痒い。


入学したらもっと真樹と顔を合わせる機会が増えるな。当然嬉しい気持ちもあるが、そこには少し複雑な気持ちが混じっていた。


次回からやっと高校生です…!お付き合いありがとうございます!


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