史郎と亜紀②
となりに住んでる亜紀ちゃんはとっても……こまった子だ。
同じ小学校に通ってるけど、亜紀ちゃんはすぐわすれものをするし……べんきょうもろくにしようとしない。
おまけに朝おきるのもにがてみたいで、ぼくはまいにち亜紀ちゃんを起こしに行く。
「亜紀ちゃんっ!! ほらおきなきゃちこくしちゃうよっ!!」
「うぅん……まだねむいよぉ……」
「だめだったらぁっ!! またせいせき表さがっちゃうよぉっ!!」
「だってぇ……お外さむいんだもん……史郎くん、おようふくあたためておいてぇ……」
頭からふとんをかぶってしまう亜紀ちゃん。
このままじゃあ本当にちこくしてしまう。
だけどむりやりふとんを取っておこしたりしたらまた一日中ふくれっつらになってしまうのだろう。
(しかたないなぁ……先に学校行くじゅんびを……うぅ……今日ていしゅつのプリントはどこだろう……)
亜紀ちゃんのへやはあちこちにおようふくがおちてて、おかしのふくろとかも落ちている。
お母さんがたまにそうじしてるみたいだけど、すぐにこうなってしまうのだ。
このなかから必要なものをさがしだすのは大変だ……だけどしてあげないと亜紀ちゃんのことだからまたわすれものをする。
(もう十回目だからなぁ……つぎやったら先生とっても怒るだろうなぁ……そしたら亜紀ちゃん泣いちゃうかも……)
それがいやだから、ぼくは一生けんめいへや中をさがして回る。
おようふくを一カ所にまとめて、ゴミをごみばこに……まんたんだから大きいふくろにまとめて入れておく。
(さいきん亜紀ちゃんのお母さんそうじする回数へってきたみたいだ……まえはもっと小まめにやってたのに……)
しかし亜紀ちゃんの教育をあきらめたかとおもえばそうでもないらしく、けっこうひんぱんに怒っているところを見かけている。
むしろ見ないのはお父さんの方だ。
ぼくはけっこう亜紀ちゃんといっしょにいるし、夜中だってまどごしに話をしているけどそんなじかんになっても帰ってきていないようなのだ。
(おかげでどんどんぼくのふたんがふえていく……まあ好きでやってるからしかたないんだけどさぁ……ああもう、どこに……っ!?)
室内をあさってたら、ちらかってるふくの中から下着がでてきた。
白い三角形をさかさにしたような形の、ぼくのブリーフにも似ているようで……ぜんぜんちがう布きれだ。
(だ、だめだ……こ、こんなエッチなの見ちゃだめだ……)
そう思い、あわててようふくを固めている所のおくにおしこんだけど……どうしても気になってそっちに目を向けてしまう。
まえはこんなこと気にならなかったのに、いつからこんなにぼくはえっちな子になってしまったんだろうか。
(ママのとか亜紀ちゃんのお母さんのとか……同じクラスの女子のだって気にならないのに……どうして亜紀ちゃんのだけこんなに気になるんだろう?)
本当にふしぎでしかたがないけれど、亜紀ちゃんのだとおもうとしんぞうがものすごくドキドキする。
おかげでスカートをはいてる亜紀ちゃんがとびはねたりすると、そっちに目がくぎ付けになってしまう。
けどだからこそ……こういう時どうすればいいのかもわかっている。
『私……史郎くんとけっこんするぅ~』
幼いころのやくそく、そしてそのとき見た亜紀ちゃんのえがおを思いうかべる。
それだけでぼくのきもちはおだやかになる……ドキドキはするけれどさっきまでのもどかしくてどこか苦しいドキドキとはちがう、心地のいいドキドキにへんかする。
「亜紀ぃっ!! 史郎君っ!! 遅刻しちゃうわよっ!!」
「あ……ま、まずいよ亜紀ちゃんっ!! ち、ちこくしちゃうよっ!!」
下から亜紀ちゃんのお母さんの声がきこえてきて、じっさいに時計をかくにんするともう今すぐおきないとたいへんなことになる。
「亜紀ちゃんっ!! ほ、ほらおきてぇっ!!」
「うぅん……わかったよぉ……ふぁぁ……」
さすがにお母さんのさけび声がきこえたからか、ようやくあきらめたように亜紀ちゃんはふとんからかおを出した。
そしてさむさにふるえながらも、ぼくと目が合うと……にっこりと本当にうれしそうに微笑むのだ。
「おはよう史郎くんっ!!」
「……おはよう、亜紀ちゃんっ!!」
小さいころからかわらない、ぼくの大好きな……世界でいちばんすてきだと思えるえがおだった。
これを見るだけでぼくは何もかもどうでもよくなってしまう。
むねの中が温かくなって、しぜんとえがおになってしまうのだ。
(あーあ、今日もギリギリだぁ……へたしたらぼくもちこく……おとうさんとおかあさんにおこられちゃうよぉ……)
それでもぼくは亜紀ちゃんをおいていくことはできなかった。
だってこのえがおをずっとそばで見ていたいのだから。
おかげで僕は亜紀ちゃんにさからえない……どんなわがままを言われても許してしまうし、ごきげんを取ってしまいたくなるのだ。
「亜紀ちゃん、これランドセル……おようふくはどれにする?」
「ええとぉ、そっちのぉ……いつもありがとう史郎くん」
「これぐらいかまなわいよ、それよりしゅくだいのプリントは……」
「亜紀っ!! 史郎君っ!! まだなのっ!?」
「わ、わわぁっ!! た、大変だぁっ!!」
またしても亜紀ちゃんのお母さんのさけび声がきこえて、ぼくたちはこれ以上話しているよゆうもなくあわてて学校へと向かうのだった。
「あっ!? し、しまったぁ……あ、あの……し、史郎くん……その……」
「なあに亜紀ちゃん?」
「ごめんねぇ、またしゅくだい忘れちゃって……いっしょに先生にあやまってほしいの」
「やっぱりかぁ……うん、わかってたよ……だいじょうぶ、ぼくが一緒についていってあげるからね」
「あ、ありがとう史郎くん……いつもありがとう」
【読者の皆様にお願いがあります】
この作品を読んでいただきありがとうございます。
少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。
ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。
作者は単純なのでとても喜びます。
評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。
よろしくお願いいたします。




