とある女性社員の恋愛事情
「ふふふ、待っててねぇ亮さぁ~ん」
私は足取りも軽く、帰路を進んでいた。
少し前までは将来のことを思うと焦れることもあった。
しかし今では何ともない、何せ輝く未来が見えているのだから。
(あぁ~、彼氏がいるっていいわぁ~……そ、そしてついに私は今日、大人への階段を……きゃぁああ、恥ずかしぃいいいっ!!)
今夜のことを想うと、顔が火照り何やら身体を動かさずにはいられない衝動が湧き上がる。
けれども道の途中で暴れたりしたら頭のおかしい人だと思われかねない、何とかこらえることにした。
(三十超えても……なのはヤバいと思ってたけど亮さんも初めてみたいだし……うふふ、きっとこうなる運命だから今まで縁がなかったのねぇ!!)
初めてできた彼氏と過ごす夜、となれば期待するなというほうが無理だ。
尤も今までも何度も彼の家に泊まっているし、そのたびに期待しては肩透かしを食らい続けている。
だけど今日という今日こそは……流石にキスぐらいしてくれるだろう。
(何だかんだであの人真面目だから、きっとキスしたらそのまま結婚まで……ううん、プロポーズが先かもっ!! ああっ!! 独身生活ともついにオサラバねぇっ!! やっほーっ!!)
初めて知り合った日から考えると、ここまでの道のりは本当に長かった。
部長の紹介で連絡を取り合った日々、色んな知識があってどんな相談をしても的確なアドバイスをくれた亮さん。
とても頼りになる人で少しずつ好意を抱いて行って、だけど直接会うまでにはかなりの時間がかかった。
(途中、自分みたいな人にあなたは相応しくないとか言われたときはフラれたかと思ったけど……本当に自己評価が低い人なんだからぁ)
だから初めて出会うときも、半ば強引に私の方から約束を取り付けてようやくだった。
その時のことは今も覚えている……第一印象はとても子供っぽい人だと思った。
一生懸命大人ぶって、紳士な態度を装うけどところどころからボロが出ていた。
(だけど当時から……とても優しい人だったっけなぁ……)
初デートの最中のことだ、泣いている子供を見つけたあの人は当たり前のように駆け寄って声をかけてあげたのだ。
正直凄いと思った……もしもあの子の親が変な人だったりしたら厄介なことになるから、私や周りの人は近づくことも躊躇してしまっていたのに。
後になってそれを聞いたら、亮さんももちろんその可能性はわかっていたという。
『だけどさぁ……俺が悪者扱いされても結果として泣いてる子供を助けられるならその方がいいかなって……』
そういうことを素で言える人だった……だからだろう、気が付いたら私はその人柄に心底惚れこんでしまっていた。
また打算的な面でも亮さんはフリーランスとして優秀らしく、時間にも経済的にも余裕がある人で……色んな意味で私には勿体ないぐらい素敵な彼氏なのだ。
だからこちらから積極的にアプローチをかけて、去年あたりからようやく家に呼んでもらえるまでの仲になれた。
(けどまさか……そこからが本番だったなんて……うぅ……)
そのころには亮さんも私に心を許してくれていて、徐々に格好つけることを止めて素の自分を見せてくれるようになっていた。
そして初めて泊まりに行ったとき、物凄くドキドキしながらお風呂から上がった私をあの人は満面の笑みで出迎えて連れ込んだのだ……ゲーム機の前に。
そこで私は初めてハクスラという単語を知った。
(うふふ、今でも覚えてるわぁ……一晩でグレーターリフト100階まで潜った日の衝撃……はぁ……)
最初は緊張を解そうとしてくれてるんだと思って、それに亮さんの趣味を知れたのがうれしくて話を合わせて一緒にやった……それがいけなかった。
あの人は本当に頼りになるし的確なアドバイスをくれる……恋愛関係以外はだ。
だからゲームにしても私が興味を持てるようとても分かりやすく指導してくれて、気が付いたらベッドに腰を掛けてプレイに興じていた。
私がしたいプレイはそれじゃないと思い出したのは、次の日の夕方になって目標を達成した後だった。
(それで初めて喧嘩……というか私が一方的に怒って帰ったのよねぇ……)
本当に悔しくて……同時に虚しくなった。
ひょっとして私は女性として意識されてないんじゃないかと……ただの友達扱いしかされてない気がしたのだ。
何せ直接出会うときも泊まりに行くときも、私からアプローチしてばかりで亮さんの方から来てくれたことがなかったのだから。
(だけどその後で、約束したわけでもないのに亮さんから電話がかかってきて……嬉しかったなぁ)
怒らせて悪いと何度も謝罪してきて、どうしても私との付き合いをこれで終わりにしたくないと……好きだから付き合ってほしいとはっきりと言ってくれたのだ。
その時の気持ちも覚えている、まるで天にも浮きそうな心地で……怒ったことが逆に申し訳なくなってこっちもたくさん謝った。
そしてまた次の連休も家に来てほしいと言われて、今度こそとウキウキドキドキしながら訪ねて行ったのだ。
そうして私はその日、初めて携帯ゲーム機で出来るハンティングアクションというジャンルを知った。
(三日でG級まで行ったのよねぇ……昇格依頼だけはソロでやって、ゴグマを倒せたときは感動すらしたわぁ……お陰で嬉しすぎて虚しすぎて涙が止まらなかったわぁ……うぅ……)
当然また喧嘩……というより私が一方的に喚いて帰宅して、次の日に電話で謝罪された。
そんなことをどれだけ繰り返しただろうか……もちろん途中でこのままじゃ不味いと思って色々と試した。
ワザとお風呂上りにバスタオルだけ巻いて出てみたり、その際に亮さんが冗談で差し出した手作りのゴスロリ風衣装に着替えて誘惑してみたりもした。
(物凄く嬉しそうだったけど……何故か写真撮影会になっちゃったし……ま、まさかこの歳であんなにコスプレする羽目になるなんて……)
時々やっぱり遊ばれてるんじゃないかって不安になる。
だけど私の写真を携帯の待ち受けにしてくれているし……何より私が本当に辛いときは夜中でも長電話に付き合ってくれたり、直接会いに来て一生懸命励ましてアドバイスをくれる。
その様子から間違いなく亮さんも私のことを好いていてくれるのだと信じている……だけどやっぱりいい加減もっと先に進みたい。
(本当にゲームも嫌いじゃないけどぉ……ベルトアクションだとかオープンワールドやらクラフトサバイバルだとかを教える前に、私の身体に愛情を教え込ませなさいよぉっ!!)
この間なんか、変な配信みたいなことまでさせられて……視聴者から無駄にゲーマー認定までされてしまった。
はっきり言って全く嬉しくない……と言ったら嘘になるが、それでも私が亮さんと望んでいる関係はプロゲーマーとしての相方ではなく人生の伴侶なのだ。
(せめてアラフォーになる前に……い、いや今日という今日こそは絶対に関係を先に進めてやるんだからっ!!)
強く決意を固めながら、私はお泊りする準備を済ませるために一人暮らししているマンションの一室へ帰宅するのだった。
「……えっ!?」
しかしそこまで来たところで、意外な人物がそこに居て心底驚いた。
大きめのバッグを背負った彼……亮さんは帰ってきた私に気づくとにこやかに笑いながら近づいてきた。
「と、亮さん……どうしてここに?」
「少しでも早く会いたくて……それに大事な話もあるんだ」
「っ!?」
(えぇっ!? だ、大事な話って……う、うそ急に何……えぇっ!?)
予想もしなかった状況に頭が混乱してくる。
夢じゃないかと思って両手で口を覆うふりをしながら頬を抓ってみるが、とても痛い……どうやら現実のようだ。
あのヘタレ……恋愛には慎重な亮さんがこんな行動に出るなんて本当にびっくりだ。
「そ、そ、それでその……だ、だ、大事な話って……?」
「……ここじゃあ言いずらいなぁ、部屋の中に入れてもらってもいいかな?」
「も、も、も、もちのろんよっ!!」
混乱しすぎて訳の分からない言葉遣いをしながら亮さんを自宅まで案内……する途中で部屋の中を思い出した。
(や、やばいっ!! 掃除とか全然してないっ!! あんな部屋を亮さんに見せたら幻滅されるぅううっ!!)
意外にも普段から家を綺麗にしている亮さんに、まさかあんな足の踏み場もない部屋を見せるわけにはいかない。
「ご、ごめんなさい亮さん……少しだけ待ってて……」
「分かってるよ、いきなり押しかけてごめんな」
「い、いや全然いいのよっ!! 本当に嬉しいし……だけど少しだけ待っててぇっ!!」
玄関先で亮さんに頭を下げながら先に家の中に入り、すぐに散らかっている衣服を拾い上げ片っ端からクローゼットに押し込んでいく。
(どうして普段から掃除しとかないのよ私ぃっ!! 亮さんを見習いなさいよぉっ!!)
自己嫌悪に陥りながらも何とか見た目だけは綺麗さを整え、ようやく亮さんを家に招き入れた。
「お邪魔します……久しぶりだなぁ、こっちに来るのは……」
「い、いつも亮さんの家に泊まってばかりだものね……」
椅子代わりにしているベッドに座ってもらい、その間に台所を覗き込んで軽く見渡す。
(今日はこっちに泊まるのかしら……ああ、食材とか買っておけばよかったぁ……)
頭の中で亮さんが泊まる場合のシミュレートをして、あれもこれも足りないものばかり浮かんで絶望する。
(こんなことでもし結婚したとして私はちゃんと主婦やれるのかしら……いや、きっと亮さんに頼り切りになりそう……はぁ……)
せっかく亮さんが来てくれたというのに、何故か私は余計な事ばかり考えて落ち込んでしまう。
本当に恋愛関係以外なら亮さんは何でもできてしまう。
だからこそ時々思う、本当に私なんかが亮さんと付き合っていい人間なのだろうかと。
(色々問題もある人だけど……どう考えても私のほうが釣り合ってないわよねぇ……はぁ……)
そう言う思いもあるからこそ、出来るだけ早く身体で結ばれたいと思ってしまうのだろう。
けれど亮さんには亮さんなりの考えもあるだろうし、そんな自分勝手な思いで強引に関係を進めるのはどうかとも思ってしまう。
だけからどれだけ頑張っても、私は最後の最後で一線を越えられないでいるのだ。
(うぅ……学生の恋愛でもあるまいし……けど仕方ないわよねぇ……これが初彼氏なんだから……)
「どうしたの、そんな顔して……また悩みでもあるの?」
そんな私の心の機微にも簡単に気づいて、亮さんはすぐに声をかけてくれる。
本当に頼りになる人だ、今までもこうして幾つも悩みを解決してもらってきた。
だけどこればかりは相談するわけにはいかないのだ。
(だって……貴方のことで悩んでます、何て本人に言えないもの……)
「い、いえ……そんなことは……それより話って何かしら?」
隣に座りながらごまかすように尋ねると、亮さんは珍しく困ったような顔で視線をそらした。
こんな様子を見せたのは、それこそ私がお風呂上りにバスタオル一枚で誘惑した時ぐらいだ。
あの時はやり過ぎて嫌われたんじゃないかと思って、だからこそその後のコスプレ大会で亮さんが笑顔になった時は心底安堵したものだ。
(けどまたこの顔……まさか本当に私って嫌われてる……というよりやっぱり女性として見られてないんじゃ……)
一度気分が落ち込みだすと、悪いほう悪いほうへと考えてしまう。
さっきまでは亮さんの話にワクワクしていたというのに、今ではひょっとしたら別れ話でも切り出されるのではとすら思ってしまい心臓が違う意味でバクバクし始める。
「あのさぁ……実は…………いやまずはこの間のこともう一度謝るよ……また怒らせて……何度もごめんね」
「そ、そんなこと……私が勝手に不機嫌になって暴れただけで亮さんは悪くない……私こそごめんなさい……」
「いや俺がゲームなんかにつき合わせたから……本当にごめん……」
「ううん、私だって楽しんでたの……だけど……ごめんなさい……」
互いに謝罪し合う私たち……そのうち自然と会話が途切れ重苦しい沈黙が満ち始めた。
(や、やっぱり別れ話なのかなぁ……そ、そんなぁ……だけど仕方ないわよね……)
毎回別れ際に私が怒って、次の日に亮さんに謝らせて……そんなことを繰り返していれば誰だって嫌になる。
結局私は亮さんに甘えすぎていたのだろう、本当に悲しくて申し訳ない気持ちになる。
だからせめて今日ぐらいは最後まで怒らないで……笑顔で別れようと覚悟を決める。
「……あのさ、俺さ……」
「う、うん……何?」
ようやく決意を固めたように、だけど視線を落としたまま重々しく口を動かす亮さんを私は何とか涙をこらえて見守り続けた。
「俺さ……君と喧嘩するたびに凄く落ち込んで……物凄く後悔して……胸が痛むんだ……」
「っ!?」
「……だからさ……いやそうじゃなくて……つまり……その、ね……」
やはり亮さんは私の考えなしの行動に傷付いていたようだ。
苦しそうに語る亮さんを見ていると、本当に馬鹿なことをしたと今更ながら後悔が湧き上がってくる。
(亮さんにこんな顔までさせて……私って本当に馬鹿だ……)
自己嫌悪で死にたくなる私の前で、不意に亮さんは私のほうを……まっすぐこちらの目を見つめてきた。
そして何度か深呼吸すると、大声で叫んだ。
「こ、こんな俺だけど君のこと本当に好きなんだっ!! 愛してるっ!!」
「えっ!?」
「何度も怒らせてごめんっ!! 本当に自分でも馬鹿だと思ってるっ!! 毎回君を怒らせるたびに自己嫌悪で死にたくなるけど……ひょっとしたらもう呆れられてるかもしれないけど……好きなんだっ!! いつでも……それこそ平日も君の顔を見て話をしたいんだっ!!」
「っ!?」
突然の告白に頭も感情もついてこない。
(わ、別れ話じゃなかったの……と、というかこれって……ま、まさかプロポーズっ!? ど、同居のお誘いっ!?)
だけど段々と亮さんの言葉がしみ込んできて、ようやく自分がどれだけ愚かな勘違いをしていたかに気づいた。
そして亮さんが、私と同じ気持ちを抱いていたことが嬉しくて……安堵したことと合わせて涙が止まらなくなってしまう。
「あっ!! ご、ごめん……泣かせる気は……や、やっぱり俺なんかにこんなこと言われても嫌……」
「嫌じゃないっ!! す、すごく嬉しいっ!! わ、私も同じ気持ちだものっ!!」
私と同じようにくだらない勘違いをした亮さんを一蹴して、その胸に飛び込んだ。
「私も好き……大好き……ずっと一緒に居たい……」
「そ、そっか……そうか……あ、あはは……よかったぁ……」
どうやら亮さんも緊張しきっていたようで、私の返事に疲れ切ったように崩れ落ちそうになり慌ててベッドに手をついて体勢を支えた。
その様子が何やら無性におかしくて、私はつい笑い声をあげてしまう。
「ふふ……」
「はは……」
恥ずかしそうにしながらも亮さんも笑い返してくれて、二人笑顔で見つめ合った。
先ほどまでの暗い気持ちはどこへやら、一転して心地の良い沈黙に包まれる私たち。
むしろこうなると、今度はこの後の期待に胸が高鳴ってくる。
(い、今物凄くいい雰囲気だし……何より亮さんは同棲まで考えてるみたいだし……こ、これはもう身体の関係も秒読みかしらっ!?)
もし今肩を抱かれて押し倒されたら、私は何も抵抗できないだろう。
そう考えるとどんどん顔が熱を帯びて火照っていくのを感じていた。
しかしそれは亮さんも同じようで、顔がだんだんと赤くなっていく。
(お、お風呂ぐらい入りたい……け、けど化粧落ちちゃうし何よりそんなクールタイムを挟んだら亮さんのことだから……い、今押し倒してもらわないとっ!!)
そう思い覚悟を決めて見つめ続けるが、結局亮さんは顔をそらして立ち上がってしまった。
本当に恋愛に関しては駄目駄目だ……だけどそんな亮さんがこんなに頑張って関係を進展させてくれようとしたのだ。
なら私もその気持ちに応えなければいけない、今まで以上に亮さんに愛情を示していこうと思った。
(出来るだけ怒らないようにして……常に笑顔で……もう少し積極的に誘惑して見たりして……えへへ……亮さん大好きっ!!)
「よ、よぉし……じゃあ早速だけど準備してしまおうか」
「じゅ、準備って……ま、まさか今日これからするつもりなのっ!?」
「少しでも早いほうがいいよ……一日でも長く一緒の時間を過ごしたいからね……嫌かな?」
(そ、そんなに早く私と同棲したいなんてっ!! ああもう、亮さん急にどうしたのよぉ……そんな積極的に来られてたら断れないわよぉ)
「い、嫌じゃないけどいきなりだから……けど分かったわ、そこまで言うなら支度を……」
「大丈夫だよ、ちゃんとこっちで用意して持ってきたから……ノートパソコンとゲーム機」
「……え?」
引っ越しの支度をしようとした私に対して、訳の分からないことを言い出した亮さん。
思わず固まってしまった私の前で、彼はバッグから言葉通りカメラ機能付きのノートパソコンとゲーム機……そしてマイク付きヘッドホンを取り出した。
(そ、それが引っ越しと何の関係が……ま、まさか平日も顔を見て話がしたいってそんな……嘘よね……そんなわけないわよね……?)
物凄く嫌な予感がする私に、亮さんはとてもいい笑顔を浮かべて自慢げに言い出すのだった。
「これでいつでも一緒に顔を見て話してゲームができるようになるからねっ!! じゃあちょっとテレビを……」
「…………ふ、ふふ……そ、そうよね……そうに決まってるわよねぇ……あ、あははははっ!!」
「えっ!? あ、あのどうしたのっ!?」
亮さんに期待した私が馬鹿だったようだ。
この人は本当に恋愛面だけはどうしようもないのだ。
(そうよねぇ、今までだってずっと私が主導で関係が進んできたんだものねぇ……)
デートの時もお宅へのお泊りに関しても私からだ……ならこれ以上先の関係に進めるのも私からしなければ駄目なようだ。
「ねぇ亮さぁん……私のこと好きって言ったわよねぇ?」
「え、あ、ああ……す、好きですよ……うん……」
「うふふ、そうよねぇ……」
にこやかに亮さんに微笑みかけてあげると、彼は怯えたように震えあがった。
何せ今日は感情のジェットコースターと言わんばかりに畳みかけられている……それだけ心中をかき乱された末に浮かべている今の私の笑顔はとても迫力のあるものに仕上がっているのだろう。
だけどもうどうしようもない……私は感情の波に翻弄されるままにしゃべり続ける。
「それでぇその好きって言うのは友情なのかしらぁ? それとも男女のそれなのかしらぁ?」
「え……あ、そ、それは……その……」
「はっきり答えるぅっ!!」
「だ、男女のそれですぅっ!!」
煮え切らない態度の亮さんに怒鳴りつけてやると、ようやくはっきりと返事をした亮さん。
早速先ほどのずっと笑顔でいるという誓いを破っているがもう知ったことか……この勢いで攻め続けてやる。
「ならゲームより先にすることがあるでしょうがぁっ!!」
「そ、それは……て、手を握るとか……」
「あんたは小学生かぁあああっ!! 大人がすることなんか一つしかないでしょうがぁあああっ!!」
「ちょ、ちょっとっ!?」
私はやけくそ気味に前に亮さんにやらされたゲームの動きを思い出し、可能な限り再現して殴りつける……ふりをした。
「避けるなぁっ!! 命は投げ捨てるものでしょぉっ!!」
「い、いやそれ違うから……うおぉっ!?」
「捕まえたぁっ!! これでKO勝ちぃいいいっ!!」
逃げ惑う亮さんが画面端……じゃなくてベッドに向かうよう誘導し、強引に押し倒してやった。
すかさず逃がさないよう馬乗りになり、そのまま顔と顔がぶつかるぐらいまで近づけた。
「ちょ、ちょっと待ってっ!!」
「待たないっ!! というか今日まで待ったっ!! もう待たないからっ!!」
「わ、わかったからっ!! 本当に分かったからっ!! だから一旦どいて……」
「そう言って逃げる気でしょうっ!?」
「ち、違うっ!! い、いつも君からだからせめてこれぐらいは俺のほうからしてあげたいんだ……頼むから最後にもう一度だけ信じてくれぇっ!!」
私の目をまっすぐ見て頼む亮さん、余りに真剣だったので私は……見惚れてしまった。
(ちぇ……ずるいわ……そんな顔して言われたら逆らえないわよ……)
渋々身体をどけると、亮さんはすぐ逃げ出す……こともなくそのまま私の両肩に手を置いた。
「そ、その……ずっと俺も……本当はしたかった……です……」
「……なら、してよ……ううん、してください」
「わ、わかった……め、目を閉じてくれるか?」
「……うん」
今度こそ私は亮さんを信じて目を閉じ、全身から力を抜きつつその時を待った。
果たして亮さんの吐息が顔に近づいてくるのを感じたかとおもうと、唇が優しく押し付けられた……おでこに。
そしてすぐに離れていく亮さん、両肩からも手が外れてしまう。
「ふ、ふぅ……あ、あはは……つ、ついにし、しちゃったね……キ、キス……」
「…………」
無言で目を開くと、耳まで真っ赤にして照れたように身をよじる亮さんの姿が映った。
(…………ああもぉおおおおおおおっ!!)
「ほ、本当はもっと盛り上げてからと思ったけど……こ、こんな形でごめ……っ!?」
「んんっ!!」
もはや何も言う気にもなれず、私は感情の赴くままに亮さんの胸ぐらをつかみ上げると力づくで顔を寄せて唇を奪ってやった。
「んぅっ!? んんっ!? んんっ!!」
必死でもがいている亮さんを無視して、ひたすらに唇を押し付け続けてファーストキスを堪能してやる。
「ん……はぁっ!! な、何を……っ!!」
「うるさいっ!! もう怒ったのぉっ!!」
「えぇっ!! そ、そんな……ちょぉっ!?」
混乱している隙に亮さんに再度飛び掛かりもう一度ベッドに押し倒すと、改めて馬乗りになって動きを封じてやる。
「最後までするからねっ!! 覚悟してよっ!!」
「さ、最後までってっ!? ちょ、ちょっと待ってぇっ!!」
「だから待たないっ!! 今日まで待ったんだから絶対にもう待たないっ!!」
「せ、せめてシャワーをっ!! 汗を流させてぇええええええっ!!」
「ああもう、うるさい……っ!!」
喧しく喚く亮さんを再度口づけで黙らせると、そのまま私は両手を使って無理やり互いの衣服を脱がせにかかるのだった。
「ま、待って待って待ってぇええっ!! ま、まだ心の準備がぁああっ!!」
「うっさいっ!! 男でしょっ!! 我慢しなさいよっ!! それとも私じゃ不満なのっ!!」
「不満どころか興奮しすぎてヤバいのっ!! 本当にもう少しだけ時間を……あぁそ、そこはらめぇえええっ!?」
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