定休日③
「あー、歩くと痛いなぁー」
「……これでよろしいでしょうかお嬢様?」
下着姿の直美をお姫様抱っこして食卓に連れていく。
身体の節々が悲鳴を上げているが……我慢だ。
「ごくろぉ~……あー、椅子の上に直に座ると小股が痛いなぁ……人間の太ももぐらい柔らかい何かが間に挟まればなぁ~」
「どうぞ私の脚の上にお寛ぎくださいませ」
先に椅子に座り、直美を抱きかかえる。
「くるしゅ~ない……ああん、腰に響くから上手く箸を使えないなぁ~、誰か食べさせてくれないかなぁ~」
「ははぁ……不肖この史郎めがご協力させていただきます……あーんして」
直美の言葉に逆らうことなく従い続ける俺。
昨夜の行為が元凶である痛みを主張されている以上、俺に抵抗する権利はないのだ。
(絶対に嘘だと思うけど男の俺にはわかんないからなぁ……結構血も出させちゃったし……やっぱり下手だったかなぁ……)
内心落ち込みながら、とにかく直美の身を気遣って献身的に動くが……結構きつい。
何せ昨日あれだけ体力を使っていながら、直美のお話に付き合い殆ど寝ていないのだ。
このままいくと明日の仕事にまで支障が出そうなぐらい疲れてしまいそうだ。
(直美も数時間しか寝てないはずなのに……やっぱり若い子は違うなぁ……)
それでも直美がずっと幸せそうに笑っていてくれるから、それだけで何もかもどうでもよくなってしまう。
「口移しがいいなぁ~、直美姫は口移しを所望じゃっ!!」
「……咥えられるやつだけなら……流石に白米は勘弁してくれ」
「わーい、おじさん愛してるぅっ!!」
「俺も愛してるよ直美……」
(愛してるし……嬉しそうだから言えないけど……やっぱり辛いわコレ……)
思わずため息を漏らしそうになって、そんなところ見られたらどうなるかわからないから何とか飲み込んだ。
そしてキュウリやカリカリに焼いたベーコンなどを唇で挟んで直美に差し出した。
「あーん……むぐ……ちゅぅ……ぺろぺろ……」
食材を食べるふりをして、大げさに口を開き俺の唇周りを堪能する直美。
くすぐったいし、何より昨日のキスを思い出す……年甲斐もなく朝から興奮してしまいそうだ。
「……俺の唇は食べ物じゃないぞ、噛むのも舐めるのも駄目」
「えぇ~、きのぉ直美のことをペロリしたおじさんにそんなこと言う権利あるのぉ~?」
「権利じゃなくて忠告だよ……あんまり挑発するとまたペロリするぞ」
「あぁん、直美また食べられちゃう~……今度こそ優しくし・て・ね?」
俺の言葉を聞いても直美はひるむどころか、悪戯っ子のように笑って身体を押し付けてくる。
(ノリノリだなぁ、だけどおじさんは本気なんだぞっと……)
直美を抱きかかえやすいように体勢を変える……ふりをして露出している太ももに手のひらを乗せた。
そしてそのまま、ゆっくりと上のほうへと滑らせていく。
少しくすぐったそうにしてた直美だが、俺の手がパンツに触れるか触れないかまで近づいたところで慌てた様子で口を開いた。
「え、あ、な、にゃぁっ!? お、おじさんす、ストップぅっ!?」
「直美、どうかしたのか?」
「あ……そ、その……え、えと……ほ、本気?」
「俺はいつでも本気で直美を愛してるよ」
「はぅぅっ!?」
顔を真っ赤にしてうつむいた直美に微笑みかけてやる……が、内心は結構ドキドキだった。
もしも直美が制止してくれなければ、自分でもどうしていたかわからない。
止まっていたのか、先に進もうとしたのか……何せ男女交際経験が殆どないのだから加減が分からないのだ。
(だけどまあ……ついにこの手のことで初めて勝てたなぁ)
今まではずっと年下の直美に振り回されていただけに結構嬉しかった。
「まあ、直美が嫌なら止めて……っ!?」
「……んっ!!」
そう思ったのもつかの間、直美は耳まで赤く染めたまま顔を突き出し……強引に俺の唇を奪ってきた。
さらに舌を差し込み、俺の口の中を舐めまわそうとする。
(な、直美ちゃ……っ!?)
何とか直美の顔に焦点を合わせると、俺のことを結構真剣に睨みつけているのがわかった。
どうやら主導権を取り戻そうとしているらしい。
(くぅ……弱気になるな俺っ!! 直美に相応しい男になるんだろっ!!)
訳の分からない意地が湧き上がってくる。
だから俺のほうからも舌を伸ばし、こちらの主導でディープキスを行おうとする。
「むぅ……うぅっ!!」
「んぐぅ……んぅっ!!」
直美もまた主導権を握ろうと舌に力を込めてきて、互いに押し合いが始まった。
(我ながら馬鹿なことしてるなぁ……だけど、なんかすごく……幸せだ……)
こんなくだらない意地の張り合いすら、直美となら楽しめる。
直美も同じ気持ちのようで、時折目じりが緩みそうになっている。
恐らく他所から見れば俺たちは……バカップルにしか見えないだろう。
(でもまあ初彼女……そう、直美が俺の初めての彼女なんだから舞い上がっても仕方ないよな)
俺は自分に言い訳をしながら、いつまでも直美との口づけを堪能し続けるのだった。
「……んぅ……んふふぅ……」
「んんぅっ!? な、直美そこ触るのは反則だぞぉっ!?」
「へっへぇん、おじさんが先にしよぉとしたことだもぉんっ!!」
「ああもぉ、本当に我慢できなくなるでしょっ!?」
「じょぉとぉじゃんっ!! 次は直美がペロリしてやるんだからぁっ!!」




