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霧島直美

「……やっぱりかぁ」


 友人を送り終えて戻ってきたところ、何故か家の明かりがすべて消えていた。

 間違いなく直美の仕業だ。

 恐らく何かを企んでいてどこかに隠れているのだろう。


(俺たちの……というか亮の無駄に派手な話を聞いて何か思いついたんだろうなぁ……)


 困った子だと思いながらも、どこかワクワクしながら俺は家の中を探索していく。

 まずは一階からだ、お風呂からトイレに果ては階段下の収納庫まで探していく。

 しかしどこにもいない、どうやら二階にいるようだ。


(本命は俺の部屋かなぁ……だけど露骨すぎるかな?)


 そう思いながらもまっすぐ俺の部屋へと向かい、ドアを開く。

 

「あれ? ここじゃないの……っ!?」


 誰もいない部屋、だけど何か違和感があった。

 床の上に見慣れない物が落ちているのだ。

 少し近づいて……その正体に気付き衝撃が走る。


(こ、これ……中学時代の卒業アルバムっ!?)


 開かれているそのページには当然のように中学生時代の俺が写っている。

 写真の中で俺は隣に立つ直美にそっくりな少女……霧島亜紀と手をつないで笑っていた。

 高校時代の卒業アルバムは貰ったその場で処分してあったが、こっちのことは存在自体忘れていた。


(な、なんでこれがこんなところに……あぁっ!?)


 ようやく俺は出かける前に直美が見せた笑顔の正体に気づいた。

 あれは前に俺の部屋を漁って遊んでいたときに見せた顔だったのだ。

 恐らく俺たちの話を聞いてもっと昔のことを知りたくなった直美はこれを探し出して……見てしまったのだろう。


「直美ちゃんっ!?」


 反射的に部屋を飛び出し、急いで家の中を駆け巡る。

 だけど直美を見つけることはできなかった。

 

(な、なんで居ないんだ……ま、まさかっ!?)


 慌てて玄関に戻り靴の数を確認する。

 予想通り、ちょうど一足だけ直美の靴が無くなっていた。


(家を飛び出すほどショックを受けるなんて……もっと早く知り合いだって話しておけばよかった、俺の馬鹿野郎っ!!)


 一刻も早く直美に会いたくて、俺は携帯で電話をかけながら外へと飛び出した。

 止まないコール音を耳に左右を見回しつつ、直美の行きそうな場所を考える。

 そして……すぐに気づいた。


(霧島家っ!!)


 この街で直美は余り良く思われていない、そんな彼女が逃げ込める場所は俺の部屋か……自室ぐらいしかなかった。

 既に電気を止めてある霧島家に明かりはついていなかったが、それでも俺は祈るような気持ちで霧島家の玄関ドアに飛びついた。

 果たして鍵は開きっぱなしになっていた、確実に誰かが出入りした証拠だ。


(お願いだからここに居てくれっ!!)


 家の中に入り、すれ違いにならないよう玄関に鍵をかけつつ薄暗い家の中を探索する。

 まず一階を見て回り、誰もいないと分かるとすぐに二階に上がりこちらも片っ端からドアを開けて中を調べていく。

 本命の直美の部屋は一番奥にある、だから結果として最後にドアを開き……絶句した。


「な、直美……ちゃん?」

「…………どぉ、おじさん……これ似合ってる?」


 夜の帳が下りる中、窓から差し込める月明かりに照らされて仄かに浮かび上がる直美。

 だけど俺にはその子が本当に直美なのか分からない。

 理性はそうだと告げている、だって声も見た目も何もかも直美に……そしてあいつにそっくりだった。


「そ、の……制………服、どう……し、たの?」

「あの女が残していったの、私の身体にぴったりだよこれ……あはは、どこまでも私ってあいつにそっくりなんだぁ……」


 幼馴染が高校で着用していた制服に身を包んだ直美、月明かりで細かい表情が見えないこともあって……これ以上なく幼馴染に重なって見えてしまう。

 目の前がぐらつく、克服したつもりだったトラウマが再発する。

 だって目の前に本人が……本人にしか見えない子が……居るのだから。


「ねぇ、おじさん……私を、どう思う?」

「はぁ……うぐぅ……っ」


 吐き気が込み上げる、幼馴染の声に……違う直美の声に返事をすることができない。

 言葉を理解できない、耳を素通りする。

 身体がその声を聞きたくないと拒絶しているようだ。


「あぁ……やっぱりそっちかぁ……おじさん……あいつのせいで……女性恐怖症に……なったんだね?」

「…………っ」

「変だと……思ったんだぁ……あの写真……おじさんとあいつ……くっ付いてて……恐怖症とは……無縁みたいで……」


 身体から力が抜け落ちる、目の前の女を……見たくない。

 顔を落として、ひたすら呼吸を繰り返す。

 

「……っ……ぁ……」

「だけど……他の女の子と……写真ないし……前に……私だけは……特別だって……それはあいつが特別で……私はそっくりだからかなって……だから……試しに……着て……けど……そっちじゃ……ないんだね?」

「……ぅ……っ……」


 嗚咽すら出せない、声の出し方が思い出せない。

 ただひたすらに苦しい。


「ごめんね……おじさん……私……馬鹿だったね……」

『話しかけないで……』

「私……おじさんを癒してるつもりで……傷つけてたんだね……」

『うわぁ、あいつこっち見てるよぉ……気持ち悪ぅ』

「そんなつもり……なかったの……ただ……近くにいたくて……」

『あぁ、なんかキモイ奴がいる……最悪ぅ外出歩かないでほしいなぁ』

『ああん……んぅ……いいよぉ……どっかの奴と遊ぶより……楽しぃ……んぅ……』

『なぁんか物欲しそうに見てるやつがいるぅ~嗤える~』


 あいつの声が脳内に直接響き渡る。

 もう何が何だか分からない、だけど全身から血の気が引いていくのがわかる。

 気持ち悪い……吐き気が止まらない。


「本当に……私……馬鹿だよ……おじさんは……無理して気遣って……平気なふりしてるのも……気づけないで誘惑……すごく……苦しかった……よね……」

「…………っ」

「手を……出せ出せって……トラウマに……そっくりな子に言われたら……辛かったよね……酷いこと言ったよね……私を……助けてくれたのに……おじさんは……おじさんまで……傷つけて……苦しめて……私……関わる人みんな不幸にして……」


 もう目を開けているのも辛くて、俺はゆっくりと瞼を閉じた。

 思考も何もかも放棄して、闇に溶けてしまいたかった。


「やっぱり……私……みんなが言ってた通り……霧島直美は……」

「っ!?」


(な、直美……直美っ!! 直美ちゃんっ!!)


 音が聞こえた、その名前だけは忘れない……絶対に聞き漏らすものか。

 世界で一番大事な……俺の全て……愛する直美。

 ようやく意識が戻ってくる、五感を含む感覚が僅かに蘇る。


「産まれて……こなければ……」


 涙声の直美の言葉を理解する、何を言おうとしているのか悟る。

 止めなければいけないのに、声が出ない……出し方がわからない。


「よ、よかっ……」

「…………ぁああああああっ!!」

「っ!?」


 だから肺が破裂するほどの勢いで空気を吸い込み……喉を潰すつもりで強引に吐き出した。


(それだけは言わせない……絶対に言わせるものかっ!!)


「がはぁっ!? げほぉっ!!」

「お、おじ……さん?」


 喉が痛む、せき込む……だけどそれがどうした。

 

(俺は何をしている……何で直美を泣かせてんだ……)


 不甲斐ない自分に怒りを覚える。

 俺が直美を守るのではなかったのか……傷つけて苦しめてどうするのだ。


(トラウマがなんだ……直美ちゃんは直美ちゃんだろっ!!)


 自分に言い聞かせる、だけど心臓の鼓動は鳴りやまない。

 二度とあんな目にあいたくないと、心と身体が勝手に警戒しているのだろう。


(ふざけるな……俺は自分より直美ちゃんのほうが大事なんだよっ!! 少し黙ってろっ!!)


 もう論理的な思考などできない、だけど心が邪魔しているのはわかる。

 だから拳を振り上げて、思いっきり心臓をぶん殴った。


「ぐぅっ!?」

「お、おじさぁんっ!! 駄目ぇっ!!」


 物凄く痛い、文字通り心臓が止まりそうな衝撃に目の前がチカチカする……さっきとは別の意味で血の気が引くのがわかる。

 だけどお陰で口から声が漏れた、自然と悲鳴を上げてた。

 これなら……喋れそうだ。


「直美ちゃん……」

「おじさん、無理しないでぇっ!! もう私の為に苦しまなくていいからぁっ!! 我慢しなくていいからぁっ!! ちゃんと目の届かない場所に行くからぁっ!!」

「直美ちゃんっ!?」

「ごめんねおじさんっ!! 私が……私が馬鹿だったからぁ……ごめんねおじさん……ごめんねぇ……」

「直美ちゃんっ!!」

「うぅ……も、もう二度と迷惑かけないからぁ……私……」


 何度も声をかける、だけど直美は俺に縋りついて泣くばかりだ。

 俺の言葉は届かない……それだけ直美も傷ついているのだ。

 さっきまでの俺と同じだ。


(ならそれ以上の衝撃で……上書きするしか……)


「直美ちゃ……直美っ!!」

「っ!?」


 初めて直美を呼び捨てにした。

 ずっと大事に思っていて……どこか子ども扱いし続けていたから出来なかったこと。

 目を丸くして俺を見る直美、ようやくこっちを見てくれた。


「聞いてほしいことがあるんだ……」

「も、もぉいいよ……おじさん、私……もうわかったから……」

「お願いだ……直美、一つだけ……どうしても伝えたいことがあるんだ……」

「だ、駄目だよ……もう私に関わっちゃ……おじさんだけは不幸にしたくないのぉ……」


 弱々しくかぶりを振る直美、だけどここで離すわけにはいかない。


(だって俺は……ずっと直美のそばに居たいんだ……離れたくないっ!!)


「お願いだから離してぇ……」

「そのお願いだけは聞けない……他のことなら何でも聞いてあげるけどそれだけは駄目なんだ……」

「ど、どうして……だって私はおじさんを苦しめるだけの……」

「直美……」


 言葉を遮る様に両手で直美の顔を優しく挟み込み、まっすぐ顔を向き合わせる。

 涙でぐしゃぐしゃになった直美の顔は、とても痛々しい。

 これも全て俺が情けなくて不甲斐ない男だから……流さなくていい涙を流させてしまった。


(だけどもう……絶対に泣かせるものかっ!!)


 前にも同じことを誓って破った愚かな俺、だけど今度こそ本当だ。

 良識も常識も理性も道徳も、過去もトラウマも……俺自身のこだわりも何もかも捨て去る。

 だって俺にとって直美が一番大事だから……そんなものに拘って泣かせていては何の意味もない。


「直美、愛してる……俺は君のことを心の底から愛している……」

「う、嘘……だって私あの女に……」

「直美は、俺のこと好きか?」

「す、好きだよぉ……だ、だから私おじさんだけは不幸にしたくないのぉ……」

「じゃあ、ずっと一緒に居てほしい……俺は直美の隣にいたいんだ……直美の笑顔を一番近くで見ていたいんだよ」


 そう言って俺は、気持ちを込めて直美を抱きしめた。

 昔のように優しく……ではなく両手に力を込めてだ。

 

「お、おじさぁん……そんな強く抱きしめないでぇ……」

「本当に好きなんだ、直美を愛してるんだ……保護欲もあるけどそれ以上に一人の女性として愛してるんだ」

「で、でも私……あいつとおんなじ顔してて……絶対おじさんを苦しめちゃうよぉ」

「そんなことない……ううん、直美が居なくなるほうが苦しいんだ……耐えられないほどつらいんだよ」

「け、けどぉ……私はぁ……」


 これだけ言っても直美は納得してくれない。

 当たり前だ、長年にわたってあれだけ情けなく無様をさらし続けてきた俺の言葉に説得力などあるはずがない。

 だから……行動で示そうと思う。


「直美……キスしてもいいかな?」

「だ、駄目ぇ……おじさん無理しないでよぉ……」

「無理どころか、むしろしたいんだ……だから、ごめんね」

「え……お、おじさ……んっ!?」


 一旦腕の力を抜いて直美と向き合い……許可を貰う前に無防備なその唇を強引に奪った。

 直美にせがまれることなく、俺から自発的にするキスはこれが初めてだ。

 唐突なキスに直美は驚きに目を見開き、僅かに抵抗した。


「んん……っ」

「……っ」


 だけど俺はそれを力づくで抑え込んで長く唇を合わせ続けた。

 するとだんだん直美から力が抜けて行って抵抗しなくなった。

 それどころか目を閉じて俺に身体を預け、為すがままになっている。

 

(ようやく落ち着いてくれたみたいだ……けど、これじゃあ今までと変わらない……)


 もう二度と直美を泣かせない、そのためにも直美の全てを受け入れる覚悟があることを示そう。

 だから俺は唇の隙間から舌を忍ばせ、直美の口内に滑り込ませた。


「んぅっ!?」


 再度驚きに目を見開く直美、何せディープキスはだいぶ前に一度したっきりだ。

 予想外過ぎたのか、直美はまた身体をよじって抵抗しようとする。

 けど今度もまた俺は抑え込む……そして直美の口の中を時間をかけて味わう。


「ん……んふぅ」


 甘美な感触と隙間から洩れる吐息が心地よくて俺は夢中になって直美を味わっていた。

 気が付いたら直美も舌を絡ませてきて、俺たちは互いに競うように舐め合った。


「んん……ぅ……ん……ふっ」


 口で殆ど呼吸ができないからか、或いは興奮しているのか……直美は鼻息も荒く顔も真っ赤に火照っていた。

 尤も俺の方も同じだろう、興奮しきっていて胸がバクバク言っていて呼吸が苦しい。

 それでも離れたくなくて、俺たちは時間を忘れてディープキスに熱中した。


「…………はぁぁ……はぁ」

「…………ふぅ……はぁ」


 お陰で離れた時には息が切れてしまっていた。

 二人して言葉もなく呼吸を整える……その間も俺は直美から目を離さない。

 直美もまた、涙が止まった眼で俺をまっすぐ見つめてくる。


「お、おじさぁん……ど、どうしてこ、こんな急に……」

「したくなっちゃったんだ……直美のことが好きすぎて止まれなかった」

「ほ、本当に? だ、だって私あの女に……おじさんを傷つけたあいつにそっくりなんだよ」

「全然違うよ、断言できる……直美は霧島とはまるで違うんだ」


(こんな簡単なことに気づくのにこんなに時間がかかって……俺は本当に駄目な奴だなぁ)


 直美はあいつとは違うと日常の中で何度も感じていた。

 そしてこうして実際に一緒に生活してきて……違いが分からないほうがどうかしている。

 多分俺は無意識のうちに裏切りを恐れて身構えていたのだろう。


(何だかんだで俺の女性恐怖症は直美相手にも影響してたんだろうなぁ……だけど……いやだからこそ俺も今度こそ振り切らないとな)


 トラウマを完全に払しょくするためにも俺はさらに直美のことを知っておきたい……もっと深い関係になりたいと思う。


「け、けどぉ……」

「俺の言葉は信じられない?」

「だ、だっておじさんすぐ無理するし……い、今までだってエッチな事を避けてたし……」


 やはり普段の俺の振る舞いは直美を不安にさせていたようだ。

 ならばここはまた言葉ではなく……身体で示すしかないだろう。


「じゃあ証拠……見せようか?」

「しょ、証拠って……?」


 首をかしげる直美、その顔があんまりにも可愛くて愛おしくて……俺は感情の赴くままに抱きかかえた。

 やはりお姫様抱っこは少し辛い、けど全く苦に感じなかった。


(ある意味で火事場だったからなぁ……もしくはやっぱり愛の力かなぁ……)


「え、ええとぉ……お、おじさんっ!?」 


 腕の中で困惑する直美に笑顔を向けて……この部屋に残っている唯一の家具であるベッドの上に横たえた。

 そして俺は上から覆いかぶさると両手をついて直美の身体を挟み込んで逃げれないようにする。

 先ほどのキスで気持ちは十分高ぶっている、もうトラウマなど入り込む隙間もない。


「今まで俺がヘタレだから不安にさせてごめんね直美……本当はずっとこうしたかったんだ」

「あ、あうぅ……お、おじさぁん……あ、あのな、直美ねぇ……ちょ、ちょっとその……」

「嫌、ってこと?」

「ち、違っ!? そ、その直美顔も髪の毛もぐしゃぐしゃだし……あ、汗もかいてるからシャワー浴びて……こ、この服だとおじさん嫌だろうから着替えも……」

「全然気にならないよそんなこと……嫌じゃないなら、始めよっか?」

「っ!?」


 俺に却下されると直美は緊張した面持ちで、カチコチに身体を強張らせた。

 その様子が可愛くて、俺は笑顔になりながら……どう手を出すべきか考えだした。

 何せ俺にはその手の経験は全くないのだ、だけどまさかここでヘタレるわけにはいかない。


(と、とにかくキスをして……服を脱がせて……それから……)


 手順を考えながら、俺はゆっくりと直美に顔を近づけた。


「お、おじさぁんっ」

「直美、愛して……」

『ピリリリリリリ』


 唐突に鳴り出した携帯電話、無視するが中々鳴りやまない。

 仕方なく身体を起こして相手を確認する。


『嵐野亮』

「ほ、ほらぁ早く出てあげな……っ!?」


 直美の見ている前で俺は携帯電話の電源を落とすと、ベッドの下に投げ捨てた。


「え、あ、あのおじさん?」

「……直美、携帯持ってる?」

「あ、う、うん……一応……」

「電源落しておいて」

「ふぇぇええっ!?」


 俺の言葉に直美は心底驚いた様子を見せた。

 だけど俺が頷いて見せると、おずおずと電源を落としてベッドの下に落とした。

 これでもう余計な邪魔が入ることはない、俺は再度直美の上に覆いかぶさった。


「ありがとう直美……」

「お、おじさん……ほ、本当にする気なんだね……後悔、しない?」

「ああ、俺はしないよ」


 本当に後悔はない、歳の差だとか共依存で不健全な関係だとか……どうでもいい。

 そんなものに拘って直美を泣かせていては意味がない。

 仮にこれが間違ってる関係だろうが、それで直美が笑って……幸せになれるというならそれでいい。


(もしも他所から突っ込まれても……いや突っ込まれないぐらい俺が良い男になればいいだけだっ!!)


 歳の差だとか何だとかが馬鹿らしくなるぐらい、直美に釣り合えるだけ立派な人間に俺がなればいい。

 誰も俺たちの関係を不健全などと言えなくなるぐらい、俺が頑張ればいいだけの話だ。

 

「直美は……後悔しないかい?」

「うん……だってずっと、こうなりたかったから……」

「分かったよ直美……愛してる」

「直美も……おじさん……ううん、史郎さんのこと……愛してます」


 お互いに見つめ合って、どちらからともなく口づけを交わした。

 そして俺たちは……一つになった。


「お、おじさぁん……もどかしいよぉ」


 直美は可愛らしく悶えた。


「んぅ……い、痛ぁいっ!? こ、こんなに痛いなんてぇ……うぅ……」


 早速約束を破り、少し泣かせてしまった。


「まだジンジンするぅ……おじさんの馬鹿ぁ」


 不機嫌そうに怒ってしまった。


「…………えへへ、おじさん大好き」


 だけど最後には、とても幸せそうに笑ってくれた。


(こんな簡単に笑顔にできたのに……何度も泣かせて……俺は馬鹿だなぁ)


 今度こそ守り抜こう、そして一緒に幸せになろう。

 俺は嬉しそうに微笑む直美を腕の中に抱きかかえて、優しく頭を撫でてあげるのだった。




「……おじさぁん」

「ど、どうした直美?」

「……痛くて眠れなぁい」

「……下手くそでごめんなさい」

「もぉそぉじゃなくてぇ……眠くなるまで……お話しよ?」

「……うん、いくらでも付き合うよ」

「わーいっ!! おじさん大好きぃーっ!!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ごめんなさい。涙が出てきました。良かった、良かったあああ !!
[良い点] やっと男を見せたか!!
[良い点]  一読者として安堵というか、とても感慨深いです。  おじさんも直美ちゃんも、本当に良かった。 [気になる点]  幼馴染みとの再会が果たしてどうなるのか、ですね。  もし仮に彼女がおじさん…
感想一覧
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