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食後の雑談タイム

「……と、まあ俺たちの青春はこんな感じだなぁ」

「あははっ!! ほんとぉにお馬鹿なんだからぁっ!! あれ、おじさんどーしたのぉ?」

「はぁ……はぁ……つ、突っ込み疲れだよ……」


 俺の部屋に戻ってからも、昔話は続いていた。

 亮が過剰に盛ったエピソードを直美が大げさに信じて騒いで……訂正するのにとても体力を持っていかれた。


(ま、まさか亮のボケと直美ちゃんのノリがここまで噛み合うなんて……常識人のおじさんには辛いよ……)


 しかし今回ばかりは亮をそう責めるわけにもいかない。

 俺に関する過去には必ずと言っていいほど幼馴染が絡んでいる。

 その部分を排除して話そうとすれば非常に薄い内容になってしまい、それを直美に気づかれないよう派手に騒いだのだろうから。


「直美は面白かったよぉ、おじさんのこともっと知れて楽しかったしぃ~」

「それは良かった、じゃあお礼と言っては何だけど直美ちゃんの方の話も聞かせてほしいぜ」

「直美のぉ? 学校生活ぅ?」

「そうそう、史郎だって聞きたいだろぉ?」

「……まあ、知りたいねぇ」


 確かに俺は直美の学校での生活を殆ど知らない。

 小さいうちはともかく、直美が一人暮らしを始めてから聞きにくくなってしまったのだ。


(たまに聞こうとしても下ネタに持ってかれちゃうし……成績とかもどうなのか知りたいところだ……)


「おじさんたちみたいに面白い話なんかないよぉ……大抵がっこぉ行ってぇ、みなかぁとみぃるのブラコン話に付き合わされるぐらいだしぃ」

「ぶ、ブラコンですとぉっ!? リアル妹属性持ちがお友達にいらっしゃるんですかぁっ!? ご、ご紹介をば……」

「お前はちょっと黙れ……その二人は前に一緒に遊んでた友達かな、いつどうやって知り合ったの?」

「そーだよぉ、あの馬鹿二人……知り合ったのはおじさんたちと同じで中学校の頃だねぇ、知り合ったきっかけは……これ言っていいのかなぁ?」

「な、何その言い方……なんか不安なんだけど?」


 直美の言い方に少しだけ不信感が募る。

 前に電話で話したところ、悪い子ではなさそうだったが……同時に直美がギャルっぽくなったのも中学生のころだったはずだ。

 当時は幼馴染のトラウマが直撃してろくに考えることもできなかったが、今更ながら悪い友達に影響を受けたせいではないだろうかと思ってしまう。


「いや変な話じゃないんだけどぉ……これ、いちおぉあの二人には秘密にしといてよぉ……」

「ああ、泥船に乗ったつもりで話してくれて構わないさっ!!」

「背中に火をつけてやろうか……この馬鹿はともかく俺は言わないよ」

「ならいいけどぉ……と言ってもそんな大した話じゃなくて単純に好きな男の話で盛り上がったってだけだよぉ」

「す、好きな男って……直美ちゃんもしかして俺のこと話したの?」


 俺の言葉に嬉しそうに頷く直美。 

 まさか学校で言いふらされているとは思わなかった。

 これは結構問題なのではないだろうか……だけど同時に喜んでしまう単純な自分が居た。


(外でも俺のこと好きだって公言してくれてるのか……俺も年齢の問題さえなければなぁ……)


「おおぅ、愛されてんなぁ史郎……だけど年上の男が好きとかいろいろ言われたんじゃないかそれ?」

「まあねぇ、だけど皆川も結構年の離れたお義兄さんが好きだからって意気投合してねぇ……そこに同じく兄貴ラブな美瑠が入ってきて……そんな風に仲良くなったんだぞぉ~」

「ある意味で類は友を呼んだって感じなのかなぁ……」

「ただぁ、直美たちって美少女だからぁそれを聞いた男の子が俺のほうがって口出ししてきて一時は大変だったんだぞぉ~」


 直美の言葉を聞いて前に何度か学校の男子に言い寄られていたことを思いだした。


「うぅん……直美ちゃんさぁ、やっぱりあんまり派手に露出する格好は止めたほうがいいんじゃないかなぁ?」

「そんな気にしてないんだけどなぁ……ひょっとしておじさんはもっと清楚な子のほうが好みだったりするの?」


 純粋なまなざしでまっすぐ俺を見つめて直美は尋ねてくる。


「俺は……直美ちゃんがしている格好なら何でも好みだよ……」

「それは嬉しい答えだけどぉ、そおじゃなくてぇ……とーるおじさぁん、当時のおじさんってどんな子が好きだったのぉ?」

「そりゃあこの俺、嵐野亮というスーパースターだろうなぁ」


 俺も亮もこの話題には触れたくなくて、それとなくごまかそうとする。

 だけど直美は不機嫌そうに頬を膨らませて、食い下がってくる。


「ああんもぉ、そぉじゃなくてぇ……って、そーいえばおじさんて女性恐怖症だったよねぇ……ま、まさかほんとぉに二人はラブラブだったのぉっ!?」

「あり得ないよ……直美ちゃん、それだけはあり得ないからね」

「ほんとぉにぃ……というかぁ、おじさんっていつから女性恐怖症だったのぉ?」

「……俺も史郎もオタクだったからなぁ、今はともかく当時は迫害の視線が強くて……同じ立場の奴は自然と女性恐怖症みたいになったもんだよ」


 直美の鋭い追及を、亮がさりげなく躱してくれる。


「そうだねぇ、今もだけど当時は物凄くオタク趣味は見下されてたからねぇ」

「女子たちときたら俺のことを汚物を見る目で見るんだぜぇ、全く思い出しただけでも……はぁはぁ……くぅぅ……い、怒りが込み上げるぜぇ~」

「どぉみても悦に入ってるようにしか見えないんだけどぉ~……とーるおじさんメンタル強過ぎでしょぉ」

「こいつは強いぞぉ、何せ階段を上っている女子を見かけたらその場にしゃがみ込んで中身を見ようとしたぐらいだからなぁ」

「ち、ちげぇってっ!? あれはお約束かなぁと思ってやってみただけ……な、直美ちゃんそんな目で俺を見ないでぇ……い、いやもっと見てくだせぇっ!!」

「やれやれぇ、これはとーるおじさんに彼女が出来るのはそうとう先の話になりそーですなぁ」


 呆れたようにつぶやいた直美の言葉、どうやら完全に話が逸れたようだ。

 何とかごまかせたようで俺はほっと胸をなでおろした。

 まさか俺の女性恐怖症の原因が、直美にそっくりな幼馴染にあるなどと言えるはずがない。


(もしもこのことを直美ちゃんが知ったら余計な心労を抱え込みかねないからなぁ……)


 俺と直美にとって不幸の原点であり、また関係が始まったきっかけでもある幼馴染。

 霧島の話は確実に直美を落ち込ませることになるだろう。

 そんなことはごめんだ、俺は直美にはずっと笑っていてほしい……涙を流させないと決めたのだから。


「まじでっ!? いつかは出来るのっ!? よぉし、俺早速コールドスリープの実験素体に立候補してくるわぁっ!!」

「どんだけ未来まで待つ気だよ……」

「ほんとぉにとーるおじさんって前向きだよねぇ……直美そぉいうところは嫌いじゃないよぉ」


 どんどん斜め上の方向に話をもっていってくれる亮に呆れながらも、俺は内心感謝するのだった。


「おおう、嬉しいこと言ってくれるねぇ……まあ話を戻すけど直美ちゃんのお友達はどんな子なんだい?」

「みなかぁは何と言うか天真爛漫だけどどこか腹黒い子でぇ、みぃるは下手な男より格好良くて王子様って呼ばれているけど内心は亮おじさんより変態な女の子だよぉ」

「と、亮より変態って……や、ヤバすぎるでしょそれぇっ!?」

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃまぁ「君のお母さんの仕打ちが原因で君の好きな人は失語症級の症状と女性恐怖症になったんだよ」とか言えませんよねぇ… 直美ちゃんは自分を捨てて男と消えた最低の母親であるという認識はありそう…
[一言] 中身変態なブラコンの友達。属性多すぎ。 それとなく、ぐらいには幼馴染(=母親)とおぢさんの関係を考えてみたりすることはないのかなあ。 あえて抜かしていることに違和感を感じたりとか。
[一言] 昔の写真出て来たら、やべーなw
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