有給②
「おじさ~ん、どぉだったぁ!?」
「悪くない……というかすごくいい条件だったよ」
直美に笑顔で頷いて見せる。
誘われた会社で細かい雇用条件の確認をしてきたが俺には過ぎた待遇だと思う。
手取りも増える上に休暇もしっかりあり、残業代も普通に出るという。
(けど、これが普通なんだろうなぁ……ブラックに染まりすぎたかなぁ……)
また社内の雰囲気も悪くない。
何よりトラブル解消のために何度も顔を出していたから結構知り合いもいる。
勿論実際に働いたらどうなるかは分からないが、今のところは何一つ問題が見受けられない。
「そっかぁ……良かったねおじさん……本当によかったねぇ」
「全部直美ちゃんが転職を決意させてくれたから……今まで支えてくれたからだよ……ありがとうね」
「えへへ、大したことしてないってばぁ~……だけどせっかくだしまたお小遣い貰っちゃおうかなぁ」
「それぐらいお安い御用だよ」
「わーいっ!! おじさん大好きーっ!!」
直美が嬉しそうに俺に抱き着いた。
この笑顔を見るために俺は生きているのだ。
(いや……この笑顔を守るために頑張るんだ)
働いてみて上手くやりくりできるようならば、もっと本格的に援助して行こうと思う。
いや、足りなければそれこそ副業をやってみてもいい。
今まで直美が支えてくれた分、今度は俺が支えてあげたい。
「よぉし、じゃあ久しぶりに買い物いこぉ~っ!!」
「そうだね、就職祝い……ってのも変だけど何でも奢ってあげるよ」
「行こう行こう~っ!!」
直美が俺の腕に飛びついていつも通り引っ張ろうとする。
活力がなかった時は直美に引かれるがままに動くことしかできなかった。
だけど今は違う、俺は自分から動いて直美と並んで歩きだした。
「……えへへ」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもなぁい~」
そんな俺を見て、腕を組んで歩いている直美はとても嬉しそうに笑っていた。
俺もいい笑顔を浮かべている直美を見て心が満たされる気持ちになるのだった。
「じゃあどこに行こうか?」
「お洋服屋さんっ!! 美味しいお食事屋さんっ!! 指輪屋さんっ!!」
「……俺の就職祝いだよねぇ……一緒にやれるゲームでも買いに行こうよぉ」
「はい、却下ぁ~……あ、あそこにしよぉっ!!」
「仕方な……だ、だから下着屋さんは駄目だってばぁっ!!」




