日曜日
「はぁ……上手く行くといいなぁ……」
転職する覚悟を決めて早速履歴書を何通か郵送したが、どうにも落ち着かない。
(出来るだけ早く新しい仕事を決めて直美ちゃんに安心させてあげたいところだ……色々と出費もあるし……)
頭の中で生活費と……直美の祖母の入院費を考える。
今のところは俺の両親が残したお金を当てることで何とかなっているが、入院が長引けばどうなることか。
その前にきちんとお金を稼げるようにならなければいけない。
(直美ちゃんにこれ以上苦しんでほしくない……)
育児放棄され、幼いうちからお金に悩まされていた直美。
何とか祖父に生活費を振り込ませるようにはしたが、それも高校までで打ち切ると断言されている。
それまでに俺が何とかしてあげたい。
(いや、してあげたいじゃない……しなきゃ駄目なんだっ!!)
ずっと俺を支えてくれた直美を見捨てるような真似だけはできない。
どんなことをしてでも養ってあげないといけない。
(それで直美ちゃんが笑っててくれるなら……それだけで俺は幸せだからな……)
俺は直美の笑顔が見たくなって、急いで帰宅することにした。
自宅に辿り着き、ドアを開けると奥からエプロンを付けた直美が姿を現した
「ただいま」
「おっかえりーっ!! 履歴書出せたぁ?」
「とりあえず近場で通えそうなところに出してみたよ……上手く行けばいいけど……」
「おじさんならダイジョブジョブ、きっとすぐに見つかるってっ!!」
「そうだねぇ……」
笑いながら自信満々に言う直美を見てると俺もそんな気がしてくるから不思議だ。
「それよりお昼ご飯にしよぉ~……直美特性オリジナル独創的究極のアレンジレシピ飯だよぉ」
「不安でしかないんだけど……レシピってのはアレンジするものじゃないと思うよ?」
「い~の、直美の手にかかれば料理もゲームもエッチもちょちょいのちょいなんだからぁ~」
(少なくともゲームはそこまでじゃないと思うけど……)
尤もこんなことを言ったら確実に機嫌を損ねるので言えるはずもない。
仕方なく抵抗をあきらめて、直美に引かれるまま食卓の椅子に腰を下ろした。
「はぁ~い、レストランナオナオ……オナオナにようこそ~」
「何で言い直したの……」
「だからい~のぉっ!! おじさん細かい突っ込み禁止ぃっ!! 突っ込むときは腰を……」
「いいから……それより何を作ってくれたの?」
直美のノリに付き合いきれず先を促した。
「じゃっじゃ~ん、このメニューの中から好きなものを選んでねぇ~」
「本格的だなぁ……どれどれ……」
直美が差し出したA4サイズの紙に記されたメニューを確認する。
『直美の愛がこもった目玉焼き……1万円』
『直美の愛の液がこもったカップ麺……1万円』
『直美の愛がこもったマヨかけご飯……1万円』
『直美の愛の液がこもったお茶漬け……1万円』
(直美ちゃんの愛は高いなぁ……)
眩暈がしてきそうだ。
「メニュー決まったぁ?」
「とにかくカップ麺とお茶漬けは衛生管理法に違反してると思いま~す」
「だいじょ~ぶぃ、直美の愛は無敵だよっ!!」
「無敵すぎる……おじさんお金ないから水ください」
「はぁい、直美の愛がこもったお水一丁っ!!」
「込めないでよぉ……うぅ、水一杯で破産だぁ……」
俺は涙を流しながら直美が汲んできた水を飲み干すのだった。
「ああ、おいしぃ……真面目にご飯食べようよ……」
「はいはい、ちょ~ど三分経ったころだしカップ麺もってくるねぇ~」
「え、あ、あのさぁ……普通のお湯で作った奴だよね?」
「それは食べてみてのお楽しみぃ~っ!!」
「あ、あはは直美ちゃんは冗談が……何かヌルヌルしてるぅううっ!?」




