史郎と霧島母娘㉖
「待ってたよぉ史郎おじさぁんっ!!」
「な、直美ちゃん……まだ起きてたの?」
自分の部屋に戻ったところで、すかさず窓の向こうから満面の笑みを浮かべた直美が話しかけて来る。
俺の両親に早く眠るよう言われていたから、二人に対して良い子だと主張している直美は今日ぐらいは大人しく眠っていると思っていた。
だからこうしていつも通りに話しかけられて少し驚いてしまう。
「あったりまえじゃぁんっ!! 直美は史郎おじさんが大好きなんだからっ!! こぉしてお話できるチャンスを無駄にしたりしないのだっ!!」
それでも直美がストレートで好意を伝えてくると嬉しさが勝ってしまい自然と顔が緩んでしまう。
(本当に無邪気で可愛いなぁ直美ちゃんは……これは俺の両親を始め皆、甘やかしたくもなるよなぁ……)
直美が幸せそうな笑顔を向けてくれているのを見ると、それだけで俺もまた何でも言うことを聞いてあげたくなる。
「そっかぁ……ありがとう、俺も直美ちゃんが大好きだからそう言ってくれると嬉しいよ……じゃあ今日もちょっとだけ付き合って……」
「わぁいっ!! さっすが史郎おじさんっ!! じゃあ直美まだ遊び足りないから一緒にゲームしよぉっ!!」
「えっ!? お、お話じゃないのっ!?」
「お話はいつもしてるでしょぉ~っ!! それより直美まだ眠くないから眠くなるんで遊んでよぉ~?」
しかし俺が頷いた途端、直美は急に主張を変えてお話ではなくお遊びに巻き込もうとしてくる。
(な、直美ちゃぁん……俺のことが好きだからお話したいって言ってくれたのは何だったのぉ……うぅ……喜んで損したぁ……)
尤も一人用のゲームだって直美は持っているのだから、俺と一緒に何かをしたいというのは本心なのだろう。
そう思うとやっぱり俺は直美のお願いを断ることはできなかった。
「うぅ……し、仕方ない……だけど少しだけだよ? もしお寝坊したらお袋たちに叱られちゃうだろうし……」
「だいじょーぶぃっ!! その時は一緒に遊んでた史郎おじさんが連帯責任者としておじちゃん達に謝れば……」
「直美、我儘もいい加減にしておきなさいよ?」
「あ、亜紀ぃ……」
更に直美は次の日に起きれなかった時の責任まで押し付けようとしてきたが、そのタイミングで部屋に入ってきた亜紀に窘められてしまうのだった。
「ごめんね史郎、また直美が我儘言って……だけどそんなに甘やかす史郎も史郎だよ? おば様たちに夜更かししないよう言われてるのに遊びに付き合おうとするなんて流石に甘すぎだよ……それこそおじ様たちに知られたら注意されちゃうよ?」
「うぅ……面目ない……おっしゃる通りですぅ……」
「もぉ、おかーさんったらいっつも良いところでお邪魔虫なんだからぁ……」




