史郎と霧島母娘㉑
「おじちゃぁんおばちゃぁあああんっ!! ひっさしぶりぃいいっ!!」
「あらあら、直美は相変わらず元気ねぇ~」
「うんうん、久しぶりだねぇ直美……ああ、こんなに立派に育って……良い子にしてたかい?」
家に帰り着くなり勢いよく飛び出してきた直美を、俺の両親は微笑ましそうに見つめていた。
そんな二人に対して直美もまた嬉しそうに笑いながら、自慢げに胸を張って見せる。
「えへへ~、とーぜんじゃんっ!! 直美はすっごく良い子だよぉ~っ!! おばちゃん達がお泊りするお部屋もねぇ、ちゃんとおそーじしておいたんだからぁっ!!」
「わざわざ掃除しておいてくれたのかいっ!? それはありがとうね~」
「おお、本当に良い子だなぁ直美は……よぉし、そんな良い子にはお小遣いを上げようねぇ~」
「わぁいっ!! ありがとーおじちゃんおばちゃんっ!! 直美二人ともだぁいすきぃっ!!」
直美の言葉を聞いてうちの両親はより一層顔を緩ませたかと思うと、その頭を撫でてやりながらお小遣いまで上げようとする。
(お、俺達に直美を甘やかすのがどうとか言ってたくせに自分達も甘々じゃないかぁ……というか直美ちゃん、良くもまぁそんな堂々と良い子だって主張できるよなぁ……)
前はともかく最近の直美は亜紀に家事の殆どを丸投げどころか、朝の目覚ましを含めた自分のお世話まで任せっきりだ。
両親の寝泊まりするお部屋の掃除にしても亜紀に言われてしぶしぶと……むしろ俺に助けを求めるぐらいギリギリまで怠けていたではないか。
それなのに自分は良い子なのだと堂々と主張する直美を俺と亜紀は少し呆れたように見つめてしまう。
「良い子、ねぇ……」
「直美ぃ、ママは正直に言ったほうが良いと思うなぁ……」
「何よぉ、悪い子なのは二人でコソコソお出かけしてるおかーさんと史郎おじさんのほうでしょぉ~……直美におそぉじ押し付けといて内緒でおじちゃん達御迎えに行っちゃってさぁ~……酷いよぉ、グスン……っ」
「ちょっ!?」
そんな俺達の視線に気づいた直美はわざとらしく泣き真似しながら、俺の母親の胸に飛びつくのだった。
「酷いよねぇおばちゃぁん……二人ともすぐ直美を仲間外れにするんだよぉ~……くすんくすん……」
「あらら、可愛そうな直美……よしよし……二人ともそれは本当なのかしらぁ?」
「い、いや思いっきり嘘だからねっ!! 仲間外れどころか俺達の生活、直美ちゃんが中心だからねっ!!」
「そ、そうですよっ!! 私も史郎も直美のことを第一に考えて……な、直美ぃおばさまたちに変なこと言っちゃだめでしょぉっ!?」
「変な事じゃないもぉ~ん……おじちゃんおばちゃん、ちゃんと直美の事をもっと甘やか……優しくしなさいって言ってやってぇ~」




