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史郎と霧島母娘⑩

「お風呂出たよぉ~、ほらぁ洗い立てで良い匂いのするじょしこぉせぇだぞぉ~っ!!」

「はいは……ま、またバスタオルだけ巻いて出てくるぅ……ちゃんと着替えなさいってばぁ……」


 霧島家の居間にあるテレビとその周辺機器を弄っていた俺の元へ、パタパタと足音を立てながら戻ってきた直美が声を掛けてきた。

 だから返事をしつつ振り返ったところで、直美の過激な格好が目に飛び込んできた。

 しかし結構な頻度でやられているだけに、流石の俺も慣れていてドキッとする以前にちょっと呆れてしまう。


「だって暑いんだもぉん……それに史郎おじさんになら見られてもへーきだし、何も問題なぁしっ!!」

「あのねぇ……そろそろお年頃なんだから直美ちゃんも恥じらいとか覚えてほしいんだけどぉ……」

「むむぅ……それはひょっとして恥ずかしがる姿の方が味があってこぉふんしちゃうとかそーいうことぉ?」


 そんな俺の言葉を聞いても直美は何か勘違いしているようで、小首を傾げながら変なことを尋ね返してくる。


「そーいうことじゃないんだけどぉ……はぁ……」

「直美ぃ、史郎に少しでも早く会いたいのは分かるけど、そんな恰好でしかも髪の毛も乾かさないで出て行かないの……」


 そこへ後から会話に入ってきた亜紀だが、こちらはしっかりと寝間着に着替えており髪の毛も手入れされた状態であった。


「お洋服は少し涼んでから着るのぉ……それに髪の毛はおかーさんがやってくれるんでしょ?」

「もぉ、いい加減に自分でやり方覚えなさいってばぁ……全く困った子なんだからぁ……」


 直美の甘える様な口調に対して亜紀は少し困ったように呟く。

 しかし言葉とは裏腹に、この場に来た時点で亜紀の手にはドライヤーとヘアブラシが握られていた。

 恐らくは直美に言われるまでも無く最初からやってあげる気だったのだろう。


「よろしくねぇ~、優しく優しくだよ?」

「はいはい、わかってますよ……ふふ……」

「……はは」


 そして亜紀は当たり前のように自分の前に座った直美の髪を手慣れた手つきで優しく乾かしていく。

 この光景も既に見慣れてしまっている俺は呆れる……こともなく、二人のやり取りに懐かしさを覚えるのだった。

 同時に亜紀も思うところが有るのか、直美の言葉に返事をしつつ俺の方を見つめて来て……目が合うなりお互いに笑い声を漏らしてしまった。


(懐かしいなぁ……俺達が子供の頃、同じようなやり取りを良くしてたっけなぁ……)


 色々と面倒くさがりだった当時の亜紀は、良くこうしてバスタオル一枚巻いた状態で俺の元へやってきて今の直美と同じ様に髪の毛を乾かすよう頼んできていたものだ。

 その様子が目の前の二人と重なって見えて、何やら妙におかしくて……同時に何だかあの頃に戻ったような気がするのか、物凄く胸が温かくなるのだった。


「むぅぅ……また二人でアイコンタクトしちゃってぇ……どぉして急に笑い声出すのぉ……」

「いや、何というか……やっぱり二人は母娘なんだなぁと思ってね……」

「あはは……似なくていいところばっかり似ちゃってる気がするなぁ……でもあの頃の私よりはずっとしっかりしてる良い子だけど……」

「うぅん、でも亜紀は高校生になる頃には流石に一人でやる様になってたよなぁ……直美ちゃんは今幾つですかぁ?」

「れ、レディに歳を尋ねちゃ駄目なんだからぁっ!! もぉ……けどそっかぁ、おかーさんもこんな風に史郎おじさんに甘えてたんだぁ……へぇぇ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう経験を繰り返すと、だんだん二人が一人に見えて来たりしちゃいそう。
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