休日⑨
「おーじさぁん、エッチしよぉ」
「いきなりどうしたの?」
「だってぇ……暇なんだもん」
せっかくの休日に人の部屋で漫画を読んで笑い転げていたと思ったら途端にこれだ。
女心と秋の空とはよく言ったものだ。
「ねぇ~、おじさぁん……いーかげんどぉてぇ捨てちゃおうよぉ~」
「それを捨てるなんてとんでもない」
「そんなぁ、別に修行僧目指してるわけじゃないんでしょぉ……それともやっぱり聖騎士の称号を受け……」
「それだけはやめてっ!! 忘れさせてぇっ!!」
人の黒歴史を気軽に掘り起こそうとする直美。
本当に苦しい思い出なのだからやめてほしい。
「もぉ……じゃー何か面白い遊びないのぉ~?」
「うぅん、人数が居ればゲーム自体はいくらでもあるんだけどねぇ……」
ゴソゴソと部屋を漁りボードゲームやTRPGのルールブック、果てはトランプやウノ、花札まで取り出して見せる。
「おじさんさぁ……友達いないのにどぉして誰かと遊ぶものばっかり持ってるのぉ?」
「昔は居たのぉ……少ないけど居たのぉ……みんな疎遠になっちゃったけど居たのぉ……うぅ……」
「はぁ……じゃぁスピードでもやるぅ?」
「休日に花の女学生がやることじゃないような……別にいいけどさぁ」
トランプを色分けしてお互いにシャッフルし合う。
昔の癖でわざとらしくリフルシャッフルしてみせた。
「おぉ~、なんかプロっぽいっ!!」
「……まあ普通はそういう感想だよねぇ」
「えぇ……何を言ってほしかったのぉ?」
「いやまぁ……とにかく始めようか」
手前に四枚カードを並べ、お互いに顔を見合わせる。
「「いっせいの……せっ!!」」
掛け声と同時に一枚捲って中央に置いて、後は早さの勝負だ。
「5、6、7、8、7、12、11、10、9、8……」
「え、えっと……8って早いぃっ!?」
(最近やってなかったけど、意外と動けるもんだなぁ……)
「6、5、6……直美ちゃん、そこ5だしてめくってみて……」
「え、えっと5で4がでたから出して……」
「3、2、1、13、12……」
「だ、だから早いよぉっ!!」
結局直美が半分も出し切らないうちに勝負はついた。
「おじさんさぁ……どぉしてあっさり勝っちゃうのぉっ!?」
「いや、だってこういうゲームだし……」
「違うでしょぉっ!! ほんとぉは手と手を重ねてさぁ、おじさんみたいな女慣れしてない人は顔を赤らめて逃げようとして私に押し倒されるんでしょっ!?」
「……はい、片付けようねぇ」
どうやら不純な目的にスピードを利用しようとしていたらしい。
止まらなくて良かったと心から思った。
「じゃぁ豚の尻尾やろぉっ!! それかエッチしよぉっ!!」
「……若い娘さんがそんな単語口にしないのぉ」




