史郎と亮とオタク少女な直美ちゃん73
「それで教習所の方はどうなんだ?」
「今日のところは申込だけで終わったよ、本番は今度の入校式が終わってからだって……」
「なぁんか学校みたぁい……もっと面白そーなとこだと思ったのになぁ……」
風呂から上がり夜も更け始めたところで、もはや恒例となってしまったかのように俺達は三人並んで布団に横になった。
もちろん真ん中は直美であり、楽しそうに笑いながら……布団の中で俺の手を握っている。
(反対の手がどうなってるかはわからないけど……亜紀も幸せそうに笑っているし、きっと……)
「そりゃあ車の学校みたいなところだからねぇ……」
「むむぅ……直美おべんきょぉきらぁい……やっぱり通うのやめよぉかなぁ……」
「ふふ、その気持ちわかるなぁ……私もお勉強大っ嫌いだったから……だけど色々と経験すると逆にお勉強しなきゃって思えてくるから不思議なものよ……」
「そうなんだよなぁ……成長するにつれて勉強の必要性が分かってきて……だけどその時には教わる場も相手も居なくて苦労するんだよなぁ……」
学校と聞いて反射的に嫌がる様子を見せた直美だが、俺達はむしろ羨ましさすら感じてしまう。
(俺も昔は学校とかあんま好きじゃなかったんだけどなぁ……ううん、それだけ俺達が年を取ったと思うべきか直美ちゃんを若いなぁと思うべきか……)
「変なのぉ……直美はずぅっとお勉強嫌いなままでいそぉだけどなぁ……」
「あはは……大丈夫、いつか直美ちゃんにもわかる日が来るから……」
「そんなことないもぉん、大体直美はわかんないことがあったら史郎おじさんに聞けば問題ないからお勉強なんかしなくてもいいのだぁ~」
そう言って直美が一層強く俺の手を握ってきて……発言内容的には咎めなければいけない所だが、ついつい頷いてあげたくなってしまう。
「ふふ……いいのかしら? この話って確かお車の運転に関することだったはずだけど、なお……貴方は史郎に教わるつもりなの?」
「はにゃぁっ!? そ、それは……あぅぅ……」
「な、直美ちゃんっ!?」
しかしそこで亜紀がわざとらしい口調で呟くと、途端に直美は悲鳴じみた声を上げて俺から離れてしまう。
「史郎だって苦手な事とかはあるんから、やっぱり自分で学ぼうとするのは大切なのよ……私が先に通ってどんな風にすればいいかコツを教えてあげれるよう頑張るから……貴方も、ね?」
「うぅぅ……はぁい、直美もやっぱり教習所かようぅ……ちゃんとおべんきょぉして直美に教えてよおか…………さん」
「そ、そんなに俺の運転を駄目扱いしなくてもぉ……うぅ……?」
俺から離れて亜紀に密着する直美……また少し二人の距離が狭まった気がしてそれ自体は嬉しいと思う。
だけどそれ以上に二人の態度があんまりすぎて俺は涙が流れそうになってしまうのだった。
(はぁあ……こんな扱いされるぐらいなら、もう二度と運転なんかするもんかぁ……だけど直美ちゃん、あと少しでお母さんって呼びそうな雰囲気になって来てるような……このまま何ごともなく進めばきっと近いうちに二人の仲は解決するんじゃないか?)
もう少しでこのルートは終了です。




