平日の夜⑮
「……人身事故かぁ」
電車は全く動かない。
ようやく帰れると思ったのに酷いものだ。
(先を越された……はは、何考えてんだか……)
直美に帰るコールするようになって帰り道はかなり精神が安定してきた。
だけどどうしても死にたい欲求は消えてくれない。
何より通勤中と仕事中は辛くて苦しくてたまらない。
(早く……直美ちゃんの笑顔が見たいぃ……)
あの子の笑顔を見れば俺はまだ踏ん張れる。
そして微々たる額だがお金をためて、直美に渡してあげたい。
もうそれ以外に生きている意味など見出せない。
(あ、そうだ……遅くなるって連絡入れないと……)
俺は直美に宛ててメッセージを送ることにした。
『電車止まった、遅くなるよ』
すぐに返事が返ってくる。
『あららぁ~、動いたら教えてねぇ~』
これだけのやり取りで胸がほっこりとする。
本当に直美がいないとやっていける気がしない。
俺はもうひと踏ん張りしようと、動かないドアに身体を預けるのだった。
『ピリリン』
何か画像が送られてきた。
嫌な予感しかしない。
周りの目を確認しながら恐る恐る開いた。
「っ!?」
裸エプロン姿の直美がウインクしていた。
咄嗟に口を押えなければ声が漏れていただろう。
それぐらい衝撃的だった。
『さぁて晩御飯は何を作ってるでしょ~?』
次いでメッセージが届く。
だけど俺の目はどうしても直美の身体に向いてしまう。
(というか……身体で隠れてて見えないんだが……)
何とか料理を見よう……という名目で俺はあちこち拡大して直美を堪能するのだった。
『……駅~、次は……』
(い、いつの間に動き出してっ!? げげぇ、降りる駅通り過ぎてるぅっ!?)




