平日の夜⑭
「……はぁ……ふざけんなよ」
荷物の集荷に立会人が必要だからとまたサービス残業だ。
相手のトラックが遅れたのが原因なのに理不尽すぎる。
(本当に、いい加減辞めたいよ……)
疲れる身体を引きずる様に会社から出て、マナーモードにしてあった携帯を取り出す。
「っ!?」
履歴欄にずらりと直美の名前が並んでいる。
『ピリリリリ……』
見ている間にも早速かかってきた。
慌てて通話ボタンを押して耳に当てる。
『おじさーーーーーーーーんっ!!』
「うおぉっ!?」
『何で出ないの馬鹿ぁっ!! 直美怒ってるんだからねぇっ!!』
凄まじい怒声に耳が痛くなる。
咄嗟に携帯を遠ざけてしまったが、その間も直美の叫び声は続いている
『どーしていつもより遅くなったら連絡しないのーーっ!!』
「ご、ごめんごめんっ!! 仕事中は基本的に電話は……」
『だからってメッセージぐらい送れるでしょーーっ!! 直美がどんだけ心配したと思ってんのーーっ!!』
「あ……心配してくれたんだ……ごめんね……」
どうやら直美を不安にさせてしまったようだ。
(最近ずっと連絡してたから……変なことしたんじゃないかって思ったのか……)
『もぉおっ!! 罰としてまた買い物付き合ってもらうんだからねぇっ!!』
「わ、わかったよ……本当にごめんね直美ちゃん……」
『悪いと思ってるならさっさと帰ってくんのぉーーっ!! 馬鹿ぁっ!!』
罵声と共に電話は切られてしまった。
だけど全く嫌な気持ちではない。
ただ申し訳なかった。
(次からはちゃんと連絡入れよう……)
そう思いながら俺は帰路を走るのだった。
(うわぁ、メッセージも大量に届いてる……)
『おーそーいーっ!?』『なにしてるのぉーー?』
『早くでろぉおおおっ!!』『馬鹿ぁっ!!』
『童貞っ!!』『ほーけいっ!!』『早漏っ!!』
『悔しかったらてぇ出してみろぉーーっ!!』
(……全部消しておこう)




