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史郎と亮とオタク少女な直美ちゃん㊷

「へぇ……そんなことがねぇ……」


 亮は信じられないと言わんばかりの顔で呟きながら、入れ違うように霧島と直美が出て行った玄関の方を眺め続けていた。

 昼下がりに俺の家へと遊びに来た亮は、俺が送った二人が並んで映っている写真が気になっていたようで開口一番に尋ねて来たのだ。


「ああ……直美も霧島もお互いに良い意味で意識あってるよ……これも亮が連れてきてくれたおかげだよ……」

「いや俺は別に……だけど、あの霧島がなぁ……」

「亮は直接見てないから信じられないのも無理ないけどなぁ……何なら今晩は家で飯食ってけよ、そうすれば嫌でもわかるから」

「そうだなぁ……うぅん、明日も忙しいんだが……まあ直美ちゃんとか霧島に聞きたいこともあるし、夕食だけなら……」


 俺の説明を受けてもどこか納得が行っていない様子だが、実際のところを見れば亮もすぐに分かってくれるだろう。

 そう思って食事に誘ってみたのだが、亮は意外な事を口にしながら頷いて見せた。


(聞きたいこと……それも直美ちゃんだけじゃなくてあんまり好意的に思っていない霧島にまで……一体何なんだ?)


「……あの二人に聞きたいことって?」

「あー……いや、大した話じゃないし……皆が揃ってる夕食の時に話すから……」


 何やら妙に気になって尋ねてみるが、亮はどこか恥ずかしそうに笑いながら言葉を濁すのだった。


(うぅん……怪しい……怪しいけど表情からして悪い内容じゃないだろうし、夕食には話してくれるっていうしな……無理して聞き出すこともないか……)


 俺もあえてそれ以上追求しようとはせずに、別の話題でも振ろうかと思ったところで玄関が勢いよく開かれる音が聞こえてくる。


「おっまたせぇえ~っ!! たっくさぁああん持ってきたよぉおおおっ!!」

「どれど……おおっ!?」


 そして直美が自分の部屋にあった大量のボードゲームを可能な限り抱えた状態で、俺たちの傍までやってきて床に並べ始めた。

 今日は直美のお友達二人が遊べないためにネット環境に繋ぐ必要がないこともあって、たまにはこういうアナログなゲームをやろうという話になったのだ。


(双六からTRPGまで持ってきちゃってまぁ……カードを使ったゲームもこんなに持っていたとは……)


「何やる何やるぅ? 直美何でもできちゃうから史郎おじさんと亮おじさんのやりたい奴付き合ってあげちゃうよぉ~っ!!」

「ほほぉ……それじゃあマンチキンと恐れ崇められた亮様の実力を見せてやろうじゃないかぁ~」

「お前のは和マンチだけどな……ゲームマスターとして俺がどれだけ敵の強さを調整するのに苦労したことか……」

「何が調整だぁっ!? 俺が最強魔法キャラ作ったら次のキャンペーンで完全魔法無効の敵キャラホイホイ出しやがってっ!!」

「仕方ねぇだろっ!! お前が確実に当たる魔法の補正値を詰み過ぎるせいでダイスを振る意味が無くなっちまったんだからよぉっ!!」


 かつての苦い記憶を元に叫び合う俺たちを、直美は呆れたように肩をすくめて見せた。


「やれやれ……ダメダメなGMですなぁ……というかそのいーかただと、他にも一緒にボードゲームした人いたのぉ?」

「な、何そのダメ人間を見る目は……あ、当たり前でしょぉ……俺達だって学生時代は他にも友達は居たのぉ……」

「そうそう、良く皆で史郎の家に集まって遊んだもんだぜ……あいつら今どうしてるかねぇ……」

「ふぅん……しろぉおじさんととぉるおじさんに他のお友達がねぇ……」


 直美は信じられないと言わんばかりに疑惑の眼差しを向けて来るが、確かに亮の言うことは事実であった。

 ただ俺が霧島に振られて不貞腐れていた時期に誰も彼も疎遠になってしまって……今ではもう亮しか残っていない。


(あの時の俺は本当に酷かったもんなぁ……良くここまで立ち直れたもんだよ……)


 これもそれもずっと離れずに傍で支えてくれていた亮のおかげだ……俺には過ぎた親友だった。

 

(いつかはしっかりと恩返しをしてやりたいところだけどなぁ……)


 もしもいつか亮が助けを求めるような時があれば、俺は全力で手を貸してやりたいと心の底から思うのだった。


「……まあそれはそれとして、何をして遊ぶか決めて……」

「あー……じゃ、じゃあその一つだけ聞いてもいい?」


 そこで恥ずかしそうに視線を反らしながら直美が遠慮がちに呟いた。


「あ、ああ……別に一つと言わず何でも聞いてくれていいけど……」

「そ、そう……じゃあさ……その……い、一緒に遊んだ相手にさ……え、えっとあいつ……う、ううんやっぱり何でもないっ!! さぁさぁ、選んで選んでぇっ!!」

「……」


 しかし結局直美はごまかすように笑うと、慌てた様子で手近にあるボードゲームをこちらに差し出すのだった。

 それでも何となく直美が言いたいことが分かっていた俺達は顔を見合わせ……苦笑しながらその中の一つを広げ始めるのだった。


「……じゃあ定番だけど久しぶりにルーレットも回したいし、双六でもやろうか?」

「ああ、確かにボードゲームの中じゃこれもよくやったよなぁ……霧島でも理解できるからってあいつが来た時には大体これが定番だったもんなぁ……」

「あっ……ふ、ふぅん……そ、そうなんだぁ……まあ別にどぉでも良いんだけどねぇ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] あれは誰でもできるものねえ。 お互いの認識を少しずつ深めて、かあ。
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