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休日⑦

「おじさん……予算は?」

「……一万円で何とかなりませんかぁ?」

「もぉ、びんぼーにんっ!!」


 口ぶりとは裏腹に嬉しそうに笑いながら俺の手を引いて歩く直美。

 その視線はあちこちにあるおしゃれな洋服屋を行ったり来たりしている。

 約束通り直美の服を買うためについてきたのはいいが、俺の懐ではろくなものが買えないらしい。


「うーん、中々……上下で一万円は結構大変だよぉ~」

「うぅ……今月は給料日に大出費があったからなぁ……」

「もぉ、過ぎたことを気にしても仕方ないでしょ~」

「まあそうだけどさぁ……」


 しかし休日のショッピングモールは非常に混雑している。

 それも親子連れや恋人同士でお出かけしている人が多くて、どうにも居心地が悪い。

 そんな中を俺みたいなおっさんと一緒に歩いている直美は全く気にした様子がない。


(むしろ嬉しそうに見える……やっぱり人の視線には慣れてるんだろうなぁ……)


 年上だというのに直美のように堂々と振る舞えず情けない限りだ。

 

「おじさーん、今度このお店みていこー」

「うぅ……おしゃれな雰囲気ぃ……入りずらぁい……」

「大ジョーブ、直美が一緒だからへーきへーきぃ」

 

 全く何が平気かわからないがそのまま店内に連れ込まれてしまう。

 そして相変わらず今着ているのとと変わらない、露出度が高い服ばかり選ぶ直美。

 へそ出し肩だしは当たり前、一歩間違えれば下着と見間違えそうなものまで手に取っている。


「うわ、スケスケ……こっちのなんか胸以外隠してないしぃ……」

「なぁにおじさん、そのベアトップ系が好みなのぉ……もぉエッチなんだからぁ~」

「い、いやそうじゃなくてね……って何そのボロボロになった短いジーパンは?」

「デニムのホットパンツぅ? ほら私の脚線美を生かそうと思ったらこれぐらい派手に露出してないとねぇ~」 


 目の前にぶら下げられるが、着る前の時点で面積がすさまじく少ない。

 これを穿いたりしたら脚の付け根まで丸わかりで、お尻のラインもはっきり見えてしまう気がする。


「流石に露出が激しすぎないかなぁ……直美ちゃんそんなの着なくても十分魅力的なんだから……」

「女の子はもっともぉっと魅力的になりたいのぉ~、何より自信があるところを見せつけなきゃ損でしょ~」

 

 言うだけあって確かに直美の身体は素晴らしいと思う。

 だけど俺としては変な男に目を付けられないか心配だ。

 そして……僅かに他の奴に直美の身体を見られるのが悔しい。


(はぁ……独占欲を抱くなよ俺……相手してもらってるだけありがたいんだからな……)


「じゃぁ試着室いこぉ~」

「う、腕を引っ張らないで……ちょ、ちょっと何で中に引き込むのっ!?」

「だってぇ~、直美一人じゃ着替えられないのぉ~……手伝ってぇ~」

「あ、あのねぇ……うぅ、狭いぃ……」


 本当に試着室の中に連れ込まれてしまった。

 狭いのに強引に直美が着替えようとするものだから身体が当たって仕方がない。


「よっと……ほい、おじさん持っててぇ~」

「そんなあっさり脱がないで……あぅ……肩ひもが見えないと思ったらそんなブラを……」

「ストラップレス? そりゃあ肩だししてんだから紐が見えたら恥ずいでしょ、対策してんのぉ」


 全く気にした様子もなくさっさと着替えてしまう直美。

 

「どぉ~、新しいの似合ってるぅ?」

「直美ちゃんが似合わないわけないでしょ……可愛いよ」

「えぇ~可愛いじゃなくて美人とか魅力的とかエッチな気分になっちゃったよぉとか言ってよぉ…………れしいけど……」

「あ、ご、ごめん……」


 どうやら俺の誉め言葉が気に入らなかったようでうつむいてぶつぶつと呟いている。

 

(選択肢間違えたか……難しすぎる……)


「もぉ~こぉなったら絶対におじさんを悩殺しちゃうんだからねぇ~っ!! ほら次の服とってっ!!」

「つ、次って……ああ、し、下は脱がないでぇっ!?」

「早く次の取ってよぉ~、直美が風邪ひいちゃうよぉ~」

「し、下着姿で迫るの反則ぅっ!? じゃ、じゃあこれでっ!!」

「あぁ~ん、上手く着れな~い……おじさん下からショートパンツ持ち上げてぇ~……ううん、ちゃんとしっかり穿ける様に手を……」


 結局、直美が満足するまで振り回されるのだった。


「ああ、楽しかったぁ……よぉし、次の店いっこーっ!!」

「も、もう勘弁して……こ、ここ下着専門店っ!? 本当に勘弁してよぉおおっ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 仕事にも悩まされて、家では金を奪われて… 悲劇的
[一言] 女性用衣服は男性用衣服より安めで揃えられるといっても、1万円だとお洒落な服は結構きついかもですね。
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